第83話 対峙
無謀にも、あと2つ連載はじめてしまって、何はともあれ終盤です。
そこの離れの庭にある水琴窟は、綺麗な澄んだ高音で、私の耳を楽しませてくれた。
実際その部屋の空気は人外どもの放つ空気でひどく息苦しいのだから、私が水琴窟の音色を楽しんだっていいわよね。
私が他人事のように外の庭を眺めていると、ガンちゃんの今まで聞いたことのないような声がした。
「透子!その男からはなれてこっちに来い。」
私は無視して藤堂さんのひざにもたれたまま上座にいる面々に目をやる。
キョーちゃんは、ひどく顔色悪いし、テイちゃんは、まばたきもせず藤堂さんをにらみつけているし、ガンちゃんはこれだ。
レイちゃんはめったに感情をあらわさないその瞳に、あらわないらだちを映している。
そして、ヨウちゃんは、表情など抜け落ちた見知らぬ人のようだった。
いいもの、いいんだもの。
私は何も変わらないものが欲しい。
人の感情ならなおさらの事。
変わるものなら、いらない。
チィちゃは、あのチィちゃんは変わらないで共にいてくれる。
半分正気で半分壊れてるチィちゃん。
私もどこか壊れてるから一緒だね。
みんなみ~んないらない。
ねえ、そうでしょ。
私が藤堂さんを見上げると、表面の男達と対峙している、ひどく怖い激しいその気配を和らげ、わたしを見て、優しく微笑む。
私はまた水琴窟の音色を耳で追いながら、あがる罵声や恫喝の声、藤堂さんの私の手を決して放さないと皆に向かってあげる声を聞きながら、うっとりとした。
チィちゃんを迎えにやったという、ヨウちゃんの声が耳に入る。
私は愛しいチィちゃんがくるのを、嬉しくてクスクス笑った。
この部屋の空気に場違いな笑い声をあげる私に、またしてもガンちゃんが、こちらに来い!と言ってきた。
私は嫌!と答えた。