第78話 覚悟
病院にキョーちゃんを迎えに行って、その足で高級料亭に車に分乗して向かった。
出がけのあの緊張は何だったのかというくらい拍子抜けした。
この料亭はガンちゃんとレイちゃんの御用達の店の一つ。
私も何度も連れてきてもらっている。
はじめ心の底で、少し身構えていた私も、どんどん食事が進むにつれて、普段通りの皆の様子に緊張も自然と緩んできた。
ヨウちゃんのおみやげ話しに、それぞれ合いの手をうったり、チャチャをいれたりして2時間ほど久しぶりの全員集合の食事会を楽しんだ。
料亭を出る時、久しぶりに皆で料亭の庭を散策しようとなって、庭口においてある専用の履物に取り替えて、ゆっくり池を中心に散策した。
学校の話しや、今日の昼の買い物の話しをしながら、庭を歩いていく。
皆が歩くのがゆっくりなので、私は振り返りながら、皆に話しを続けていた。
皆も嬉しそうに相好を崩して私の話しを聞いてくれる。
久しぶりの穏やかな時間。
ゆったりと優しくここだけがまるで違うように時間が流れていく。
くすくすと私は笑いながら、そのまま皆の方を向いて背中を表面にして歩きながら、「遅いよ。」と声をかけた時、私は誰かにぶつかってしまった。
私達以外この庭に人間がいるとは思わなかった私は驚いた。
ピ~ンと場が緊張する。
見れば皆の視線が冷たい硬質のものに変わっていく。
けれど私はぶつかったであろう背中の人物の方を向くことができなかった。
その背中でぶつかった相手もまた動かない。
そしてまた、私の視線の先にいる私の保護者ズも立ち止まったまま動かない。
私は今あの懐かしい愛おしい海の底のあの匂いを体全体感じていた。
背後にいるのが私の海の王様だと気配でわかってしまった。
何故、なぜここにいるの?
海の底からあがった海の王様は、陸では無力なはず。
ああ、私の人魚姫はどこにいるの?陸は危険がいっぱいだわ。
私もまた振り返ることもできず、かといって動くこともできず硬直していた。
なんて事だろう、油断しちゃダメだったのに。
私は初めて私の視線の先にいる保護者ズを睨みつけていた。
いつも私を守り慈しんでくれる彼らに初めて敵意を向けた。
そんな私を保護者ズは傷ついたように見ていた。