第76話 久しぶりの女子会
夏季休暇も残り半分を切って、まるで計ったかのように、委員長から連絡が入った。
結構黒ユリメンバーズもちらほら帰国している事だし、会いたい、と。
理由は、学園祭についてでも何でも用意すると、さすがに付き合いが長い分、開き直ってる。
私はケラケラ笑いながら了解の返事をした。
私の笑い声に驚いた委員長が「何があったの?」と聞いてくる。
委員長にでさえこれじゃあ、おととい中国から一足先に帰国したレイちゃんにもバレバレだったかな、とちらっと思った。
レイちゃんはまだ何も言ってこないけど、自分では意識して普段通りを心掛けたけど、無理だったかな、ちょっと心配になる。
私は朝いってらっしゃいと送り出したレイちゃんを思い浮かべた。
別段、変わってないように見えるけどなぁ、人外だしなぁ。
まあ、今さらだけど。
どこか突然開き直った自分に気が付いた。
逃げられないの知ってるからね、うちの保護者ズが本気を出したら。
久しぶりに、かわいいメンバーズと気分転換に遊ぶのもいいかも。
あの海の奥底の部屋には当分いかないつもりでいる。
それを思うとギリギリと重いしこりが、自分の体に積み重なっていくけど。
守る術を考えつかない内はいけない。
心は今も囚われ続けている、あの昏い海底に。
私はガンちゃんとテイちゃんに、「委員長達と遊んでくる~。」と気持ちよく眠るる彼らを嫌がらせのように叩き起こしてやった。
ふざけてうなりながら私にからんできたガンちゃんに、頭をぐしゃぐしゃにされて、いつものように頬にキスされた時、何故か急に泣きたくなった。
寝起きの鈍さ倍増のガンちゃんで助かった。
私はガンちゃんの腰に手を回し、「夕飯もいらな~い。」と、ごまかすように笑った。
ガンちゃんは、おい、といぶかしげに声をかけてきたけど、忙しいのぉ~と言ってごまかして家をあわてて出た。
今日の護衛はヨウちゃんとこの人たち。
本当にできる人たちなので、離れていても問題なし。
委員長達と出かけたりするときは目立たないようについてきてくれる。
待ち合わせのカフェは貸切りにしてあった。
さすが委員長、そつがない、というか最初から断るなんて選択肢なかったのね。
総勢10名ほどで貸し切るなんて、おバカだけど。
もう一度言わせてもらうけど、相変わらずおバカのとこ健在ね。
ゆっくりと3時間ほどランチを楽しみながら、お互い報告ともつかぬ報告を語り合ったり、誰それが婚約が決まりそうだとかの噂話を聞きながら、最後のデザートまでキャッキャッと楽しんだ。
店を出て、買い物に行く時、それぞれ車に分乗したんだけど、私は委員長と一緒の車で、その委員長が、
「とても透子様、綺麗に、ううん、元々綺麗なんですけど、何かとても雰囲気が私でもくらくらきちゃうくらいで。何か、もう自分でも何ていったらいいか混乱してるんですけど、うっとり、そう一緒にいても同性の私でもうっとりしますわ。」
そうわけのわからない事を内緒話をするように言い出した。
私はそれを聞いて笑いながら、男はもう手一杯だから、女の子は若干名空いてるよ、と委員長の耳元でからかってやった。
たちまち真っ赤な顔をした委員長を眺めながら、私はまたあの海の奥底の部屋を思い出した。
人魚姫は無事だろうか?
悪い魔女の私が守らなくても、あの海の王様や沢山の臣下がいるあの場所で、何がおころうというのか、私はそっと窓の外を眺めながら、自分はこんなに厄介な人間だったろうか?と一人ため息をついた。