第72話 変化
案の定、日付が変わってから帰った私に、うちの保護者ズのお小言やら泣きが入って1週間ほどは外出禁止令が出た。
私はその間に課題やらレポートやらをきっちりと終わらせ、謹慎?期間が晴れて開けた今朝、そういえばここ数日コロとシロの姿をみていないのに気づいた。
「ねえ、コロとシロは?」
朝食をとりながら、せっせと私の朝食を運ぶユキちゃんに聞いた。
レイちゃんは出張で昨日から中国に行ってて半月は帰ってこない。
ヨウちゃんも何故か一緒に付いていって、ちょっと中国で仕事をしてくると言っていた。
どうせろくでもない事だから私は詳しく話しを聞きもしなかったけど。
キョーちゃんは、何やら面倒がおきたらしく昨夜電話がかかり、いつもより早く迎えがきて出て行ったきり帰ってきてない。
ガンちゃんとテイちゃんは朝方帰ってきて、それもお酒を二人で飲んできたらしく珍しく出来上がっていたから、当分起きそうにない。
全く2人して体がでかいくせに、私のベッドに乱入してきて、「透子、透子ぉ~」と酒臭い息でからんでくるのは、マジやめてほしい。
結局、2人して私のベッドに寝てる。
私は早朝におこされた腹いせにエアコンを切ってやろうかと思ったんだけど、あの二人の汗にまみれたベッドや部屋にこもる匂いを想像した所で、それをあきらめた。
うん、人間冷静に、だよね、危ないとこだった、自分を自分で褒めてやりたい。
だから、私はユキちゃん特製ジュースのおかわりを頼みながら、唯一私の傍にいるユキちゃんに、そういえばここ何日かコロとシロを見ていないんだけど、と聞いたんだ。
そして、コロとシロが日本にいないと知った。
馬鹿ソウの新しい仕事先の海外に行ったと。
ソウ!ソウ!ソウ!私言ったよね。
「チィちゃんを守って」と、コロとシロに。
・・・・・言ったよね。
わかってる、コロとシロを置いて新しい仕事先、それも海外になんていけないって。
ロシアと違って、すぐに帰れない、って事も理解した。
危険がある場所に護衛は必要だと頭ではわかっても、心が認めない、認めたくない。
ソウ・・・、あんたってやっぱり嫌い。
自分以外壊すものとしか認識しないあんたから、いつかコロとシロを取り返してやる。
私ってば、なんてボケてたんだろう。
ぼやぼやしてるうちに大事なものが手の平から抜けていっちゃった。
コロとシロを手に入れる事は簡単だったのに、平和ボケしててミスした。
私は珍しく落ち込んで、朝食後もぼんやりしてた。
ユキちゃんはいそいそと例の病院に出かけて行った。
私は知らないふりしてるけど、みんな保護者ズはそれぞれ生まれてくる赤ちゃんの準備をきっちりとしている。
黒ユリメンバーズの殆どは海外バカンス真っ最中だし、私と言えばこの間、自分がパスポート持ってないの初めて認識したばかり。
ただ今申請中なの。
これもうちの保護者の意見が真っ二つで、何とか反対組にお願いして申請したばかり。
何だろう?何か理由もなく自分が不安定なのがわかる。
こんな時はチィちゃんに会いたいな。
黒竜会に電話して遊ばせてもらおう、この1週間外出してないし勉強まみれだったから、情緒不安定なんだ。
そうだ、善は急げ!っていうじゃない。
私は携帯を手にしてアドレスを探した。
その時、携帯がなった。
もう一つの放置して忘れていた携帯、お姉ちゃんの彼氏専用だった奴。
ソファーの隅に放り出されたままの携帯を意識もせずに手に取り出た。
「ああ、良かった。すぐに病院これる?しっかり聞いてくれる?お父さん危篤なんだ。」
父が危篤と聞いて私が思ったのは、そうかレイちゃんの携帯が連絡先だったもんな、って事と、どうやらこの純朴王子はまだ姉の碧とつきあってるんんだ、っていうことの2つだった。




