第64話 暇を持て余す人々
今日は夏季休暇前の最後の登校日。
黒ユリメンバー達は殆ど海外脱出らしい。
最近私の怒りの沸点がどこらへんか学習してきた彼女達は、遊びに誘う事は問題ないと思っているらしく、口々に私を一緒に連れて行こうと一生懸命誘ってくる。
やれマカオだ香港だ、プラハにはちょっと触手が動いたが、かまびすしい事半端ない。
ま、可愛いから許すけど。
けれどね、委員長がしらっ~と持ってきた「第一回黒ユリ会臨時総会」なるものを、なぜフランスなんぞで開く?
意味不明、却下!
私を恨みがましく見つめる執行部の面々に、文句の一つや二つ言ってやろうと思って顔を見れば、遊んで、と顔にかいてある。
確かに最近平穏過ぎて私の女王様モードも他校交流会以来発動していない。
そうか、とでも思って私が遊んでやるなんて甘いよ。
あなた達も暇なのね。
けれど私的にいろいろ大変なんだ、今は。
私は彼女たちのお願いをことごとく却下し学院を出た。
別棟にある理事棟をちらっと眺めながら迎えの車に乗る。
ソウは私が居酒屋にいる時、どこぞのチンピラにケンカをうられたらしいけど、きちっとその場でやっつけちゃったにも関わらず、暇だからって理由でやっつけたそこを傘下にしていたという理由で1つの団体をわずか二日でつぶした。
凄いよね、数百人程度じゃ相手にならないのね。
そしてね、その団体の会長が心酔していた、という理由でそこそこ大きな黒竜会という組織にただ今喧嘩を売っている最中。
なんというか、相手にしてみたらいい迷惑よね。
その黒竜会というのは戦前からある昔かたぎの残るテキヤを主にする団体らしいの。
ほら、お祭りやなんかの出店してるあの人達の元締めみたいなの、黒竜会って。
私はあの独特の雰囲気が大好き。
それにガンちゃんが私に教えてくれながら黒竜会はいいと珍しく褒めていた。
・・・・・けれどソウを止める気はないらしい、黙認。
そこのとこがよくわかんないよね、あそこの世界。
まったくソウときたら、あの日帰って早々ガンちゃんにひどく怒られた癖にさ、私を一人にしたって。
それなのにはた目で見てもわかるくらいにルンルンだったのは、遊び相手見つけたからなのね。
だ~れも止めないんだもの、ソウってば結構やることえげつないから、それに私ってば、お祭りの夜店大好きだし、これって私の出番だよね。
いつもコロとシロけとばすソウにちょっと頭に来てたしね、人が楽しそうなのって嫌だし、私けっこう暇なのにさ。
邪魔するしかないよね、これは。
ソウ私と遊ぼう。
私はこれからの予定に口元が笑うのを意識して引き締めた。