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君のままに美しく  作者: そら
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第63話  ソウの楽しみ

俺は時間差で透子のいる居酒屋に行くため、駅から少し離れたゲームセンターなどのあるコインパーキングに車を止めさせた。


「おい、行くぞ!」


そう言ってコロと最近名のついたこいつの足を蹴飛ばす。


こいつはあいかわらず無表情に俺のあとをついてくる。


今回こいつの片割れには留守番をさせる。


一応こいつの見た目はたっぱのある極上の外人女だ。


居酒屋にいくにはちょうどいいカップルの出来上がりだ。


まあ、居酒屋にいくにしては俺達の雰囲気が場違い感もぬぐえないが、これ以上着るもののランクは落とせねえしな、俺的には許せねえ。


しかし、透子は面白い、あれだけ過保護に大事に愛されてるのに、それを歯牙にもかけないし、それを当たり前として貪欲に呑みこみ続ける。


かといって、それに慣れ溺れ、バカな女に成り果てる事も、ましてやあの規格外達といて潰れる事もねえ。


青井さんはじめ高津さん達が抱えた闇まで綺麗に呑みこんで、そのままの透子として変わらずに傍にいる。


ただ変わらずにそこにいて、魂に寄り添う存在なんて、どんだけ規格外なんだか。


それも度外れに狂った男達のその狂いまで呑みこんで平気でいる。


どっちが化けもんだっつーの。


チッ、あまり余計な事は考えねえほうがいいな、くわばらくわばら、だぜ。


透子はまだ16?17か?そんなもんだ。


この先を思いやり背筋が震える。


今回ほど自分のおつむを褒めてやりたい気分はないな。


伊達に天才と呼ばれたわけじゃない自分の、まあ、人としては終わってるかもしんねーが、人間自体を冷めた只の種としか認識していない自分だからこそ、透子に狂わないでいられるんだろう。


おう、天才バンザイだとも。


絶対あのカリスマたちのレベルに達してない、そんな理由じゃないはずだ、そんなはずない。


大事だからな、ここ、俺のアイデンティティに関わることだから。


そんな事をつらつら思いながら、駐車場の出口の脇に差し掛かったところで、声をかけられた。


俺と同じくらいの若い奴らと、もう少し若い奴らが8人くらいたむろってて、その中の座り込んでいる奴が立ち上がりながら、俺に声をかけてきたらしい。


「よお、兄さん。いい女連れてるじゃねえか。」


チラッと駐車場の方に顔をやり、


「それに運転手つきの外車かよ、なあ兄さん、仲良くしようぜ!」


そう言ってにやにや笑うこいつらに、俺の方こそ笑いたくなった。


俺が見るにこいつらバックに絶対の自信を持っているか、それともただの女連れのお坊ちゃんならと甘く見たか。


何せ残念な俺の今日のかっこうは、居酒屋でひと暴れするにも一応透子の知り合いな訳で、それなりの、けれどいきすぎない程度の金のかかったまともな装いだからだ。


うん、どこぞのボンボンにみえるかもしんない、俺ってみてくれはいいからな。


本業の方のいつもの俺の恰好ならこいつら近寄りもしなかっただろうがな、ヤバくて。


透子あんがとよ、早速こりゃあお遊びの時間のはじまりだ。


俺はいいとこの坊ちゃんらしく眉をひそめて見せて、


「何だ、君たちは!失礼だろう!」


と言ってやった。


どうよ、これ。


自分でも腹抱えて笑いそうになった。


君たち・・・とか、おいおい、だぜ。


こいつらは━勿論鼻で笑いやがった。


まあ、俺もこんなセリフはく奴がいたら、同じように笑っただろう。


俺は自分の言ったセリフに笑いをこらえるのに必死で、それをどう勘違いしたのか、こいつらは更に図にのってきた。


「まったく羨ましいなぁ、いい服きていい車、それにいい女、ちっーとは俺達にも分けてくれよ。なぁ。」


そう言いながらあっという間に囲んでくる。


そうして囲いこみながら奥の暗がりの方へと誘導していく。


ほお。慣れたもんだな。


俺が大人しくついていくものだから、誘導された奥につくとその中の一人が調子に乗って俺のスーツの内ポケットを探りだす。


俺の名刺入れを見つけたその男が、リーダーと思しき男の手にそれを渡す、ついでとばかりに財布もだ。


今日は透子の知り合いに途中から乱入するつもりで、表の名刺、聖桜学園理事長という肩書きのを持ってきていた。


奴らの一人が、


「俺、これ知ってるぜ。」


と得意そうに言う。


「超金持ちお嬢様校だぜ、山校の女がうちの親の年収が月の授業料にちけえなんざ、ふざけてやがるって騒いでやがった。」


それを聞いた奴らの目の色が変わったのがわかった。


そりゃそうだ、俺だってこんな金づるいたら舌舐めずりする。


教育者=表で騒がれてはまずい=特上のカモ、だ。


そこからは定番のオンパレード、脅すは脅すは。


ただ、俺に言わせれば甘すぎて全然だがな。


それからどこぞに電話をかけて、・・・ビンゴ!だ。


遊べそうな予感に俺こそ大喜びだ。


女を盾にとって、俺の車にまで案内させ、これまた静かな印象の運転手のコロを脅して、乗れるだけ自分たちも乗り込み本格的に脅す場所まで移動。


まあ、定番だな。


俺は触られたらシロが男だとばれちまうんで、わざと怯えた風にシロをみせ、守るように自分の腕に囲い込む。


肝心のシロをこいつらに見せたらアウトだからな。


こんな目を、こんな冷えた目をした女がいるかってーの、感情のない顔も。


男達の目は後が楽しみだと言って、下卑た笑みをみせているが、それには同感だ、俺も同じだ、楽しみでしょうがない。


しかしなんで俺がこいつを抱きかかえにゃならん。


むかつくから後で制裁だな、あ~、透子にはわからねえようにやらねえと。


こいつらに名前までつけてかわいがる透子の気持ちが俺にはわからねえ。


こいつらは本物の化け物だ、人間じゃねえ、しっかりと誰が主人か時々力で教えてやらねえと、こっちがアブねえ。


そういえば、こいつらの後釜も鍛えちゃいるが、なかなか育たねえで、途中で壊れちまう。


まったく、投資した分ぐらい返してから死ねや。


こいつらみてえな地獄の底も底で生まれ、その中で育たなきゃあ、こういう化け物が作れねえというのなら・・・、仕方ない、この俺が人工的にその地獄を作るしかないよな。


俺はいきなりひらめいたその考えに機嫌が良くなった。


やっぱり人間遊ばなきゃ、いい考えも浮かばない、って良い例だな。


俺はすぐさま今紛争地域で、なおかつある程度の治安ができつつある、国や地域を幾つか思い浮かべた。


人工的な地獄を作るはずのその場所を素早くシュミレートする。


やっとこさ、新しい仕事だぜ。


俺には子守りは無理だ、第一透子に子守りがいるかってーの、全くあの人たち透子に関してはダメだな。


早速、高津さんに進言して、黒幡の方にも話しを青井さんから持っていってもらおう。


いやあ、黒幡とのつながり、世界中の闇に生きる人間が喉から手が出るほどのそれを持ってる幸運を、俺はしみじみ考えた。


うん、前言撤回、透子さまさまだ、な。


今日の帰りは、何か透子の好きな差し入れでも買って帰るか。


・・・いや、やめておこう、あの人たち、透子に関しては大人げなくなるからな、キジも鳴かずばうたれまい、だ。


俺がいろいろ考えているうちに、ちゃらい倉庫群に車はついた。


倉庫の中に怯えた様子を作り入る。


俺だけだが・・・コロ・シロと名前がついたこいつらはシラ~としてるんで俺だけが頑張ってるわけだ、いろいろと。


やっぱこいつらまとめて、ち~っとばかし制裁だな、決まりだ。


そして、そんな俺達に声がかかった。


「こんな所まできてもらって悪いが、少し話しをしよーや。なあ学園長さんよぉ。」


そう言ってこちらを見る壮年の男にもその連れたちの男にも見覚えがないし、俺の頭に入ってる自称ヤクザ年鑑にも記憶がない顔だ。


・・・・あまりの雑魚ぶりにがっかりだ。


まあ、いい。


場末のやくざにも上がいるはずだし、そしてまたその上があるはずだ。


傍系だろうがどうだろうが、どっかで大きいとこにカスリぐらいするだろう。


たとえ名刺一枚でも大きいとこの持っていてくれよ、頼むぞ、おい、相手になりもしねえ。


からんできたのはそっちから。


なあ、覚悟はいいか、俺のいちゃもんはスゲーぜ、これぞプロって奴をみせてやるよ。


まあ、お前達が知ることはないがな。


せいぜい汚く泣き喚き消えていけ、お前達からのつながる線はどんな欠片だろうと、きちんと繋げて綺麗に潰していってやる。


今まで暇こいてた分、せいぜい楽しませてくれよ。


俺がとりつくろうのをやめ本来の表情を見せて獰猛に笑うと、相手の男達の顔色がどんどん悪くなっていく。


おいおい、失礼な、それでもお前達やくざの端くれか?


いろいろなくすのはこれからだぜ、ついでに命もだがな、何度も言うがこれからだ。


俺は犬ころどもの足を蹴って人間どもを襲わせた。


たった二人にざまあねえ。


さて、直の上の組織を教えてもらえば、もう用もない。


俺の合図で表情もかえず、悲鳴を上げる男どもを素手で殺しつくすこいつらは、顔色一つ変わることなく最後の一人まで綺麗に殺しつくすこいつらは、どこをどう見てもペットなんて甘いもんじゃないだろが。


けれどあの透子の事だ、目の前でこれらを見ても、困った子達だとあきれるだけで、服が汚れたじゃないかと着替えの心配をするだけだろうと俺にはわかった。


透子はあれで16か7だぜ、修羅場をくぐって経験したならそれなりにわかる対応も、蝶よ花よとカリスマたちに溺愛されて、それだ。


俺が透子を怖がるのもわかるってもんだろ。


俺はこいつらの上の組織に、どういちゃもんをつけようか楽しく考えていて、透子が一人でタクシーに乗って帰ったのも、例の居酒屋の事もすっかりきっぱり忘れていた。




気分よく家に帰ると高津さん自らの呼び出しで、ちょうどいい、俺の人工地獄計画の相談を早速しようと、いそいそと事務所に出かけた俺は、透子を一人で帰した、とのきつい叱責と、背中にやきごてをあてられるという軽い制裁を受け、それの痕がちょうど逆さ十字に似ているので、ちょうどいいとばかりに、それに彫りを加えてちゃんと逆さ十字に見えるようにした。


何せ人工の地獄を作り出そうというこの俺だ、ちょうどいい目印だろ?


その俺の犬っころどもへの軽~い制裁は追って図るべし。


地獄の紋章をきちんとその体に刻んでやったさ。


俺の制裁はきちんと細かいことが自慢だ。







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