第62話 乱入⑥
乱入終了
私はおどおど娘と自分に言い聞かせながら馬鹿な姉を笑うのをこらえた。
私はチラとだけ姉を見て立ち尽くす姉にのみわかるようなかすかな侮蔑を姉に与えた。
案の定、姉は激高した。
しかし言葉にはならないみたいで、ワナワナと震えている。
「碧、あんた・・・」
そう声をかけようとした女子の言葉を遮って、私は小さな声で姉に声をかけた。
彼氏の大輔君に促されて・・・うん、彼氏まだ何が何だかって顔してる、ほんとニブっ!姉は腰を下ろした。
それにかぶせるように、
「隣のお兄ちゃんの事はいいの・・・あの時は私はまだ中二だったし、お姉ちゃんがあの人を好きだったのも知らずに、嬉しい、嬉しいって言ってた私が悪いの。」
「お姉ちゃんの方が同じ高校生だったんだもん、ごめんなさい、お姉ちゃんの好きな・・・」
そう言った時姉がそれを遮った。
そりゃそう、私が好き好き言う度に、さすがにその言葉に純朴彼氏が反応するから。
姉はまたまたあせるあまり自分で落ちた穴を、更に掘り進めてくれる。
「あんな男、好きなわけないでしょ!あんたが大事そうにしてるから、ちょっかいかけただけよ。」
「ホント信じられない高校でも生徒会長してて、凄いもててるのに、よりによってまだお子様のあんたが心から好きだって、バカみたい、あほでしょ。」
おっ、今の一言で男子どもを敵にしましたね。
まあ、厭きたし、もう一度言うけど厭きたし、そろそろ退散しよう。
そう、あなたはこれでなくっちゃね、ふふっ、周り中敵にしてるの気付いてる?
バイバイお姉ちゃん。
私はうつむいてごめんなさい、と一言言って静かに席を立った。
「あなたが謝る必要ないじゃん。」
そう口々に言う女子や肯く男子に、頭をふるふると振り、頭を下げて、ここから大事ね!おもわず、っと言った感じで駆け出した。
呼びとめようとする声を無視しながらかけていると、他のテーブルからも同情の眼差しが・・・。
ありゃ、やりすぎた?ま、いいか、私は何にも耳に入りませんよぉ、ってノリで店内を出る時、気が付いたとばかりに立ち止まってレジ横にいる店員さん達に迷惑をかけました、と頭を下げ、万札を何枚か出して支払いをお願いして、おつりは皆さんでわけて下さい、とかよわい声を出して店を出た。
店内を出て、そういえばソウ達はどうしたんだ?とは思ったが私はそのまま駅前でタクシーを拾って家に帰った。
あの後の店内はさぞや面白い事になっているだろう。
私ってちょっとばかり、ちょっとだけ、性格曲がっているかも、とその日思った。
でもね、あんな怯え交じりの弱い目をした碧はいらない、碧はああじゃなくっちゃ。
そして、ソウも念願なトラブルに巻き込まれ、嬉々として更にその種火にもならない騒ぎを大きく燃やしていたのを知るのは次の日だった。