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君のままに美しく  作者: そら
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第58話  乱入②

復活しました。

ふっ、インフルからはじまり、感染症オンパレード。

2度と思い出したくない黒歴史です。

こちらを睨みつけるガンちゃんに、ひらひらと手を振る。


ん?君ら何を心配してるのかな?


私はにっこり心から微笑み、一人一人みつめた。


テイちゃんは頭に手をやりガシガシかいて、一つため息をついて私をみる。


失礼な!何でため息?・・・そのあと私の傍までくると、私を両手でしっかりと抱き締めて、私の耳元で優しく腰にくるような声でしっとりと囁く。


「遅くなるな。」と。


・・・あのさ、テイちゃん、たったそれだけ言うのに、その半端ない色気いりませんけど、これっぽっちも全然いりませんから!


それよりさ、ガンちゃんの機嫌直す方法教えてよね、ほんと意味ない事得意だよね、テイちゃん。


ガンちゃん今日は手ごわいなぁ、この分じゃ外出できそうにないかも・・・。


こういう時頼りになるのに、全然知らんぷりするヨウちゃんをチラっと怨みを込めて見ながら、私はガンちゃんの傍にいって、腰に手を回し、抱きついた。


その無駄にでかい体をつんつんつつき、その頭を私の近くまで下げさせる。


そして、テイちゃんの二番煎じみたいで嫌だけど、本当に嫌なんだけど、私はその耳元にひっそりと囁いた。


「もう逃げたくないの」と。


人一倍仕事柄絶対という言葉を信じない心配性のガンちゃんに、私は思いを込めて、ガンちゃんの胸に耳をあてながら、その心臓の音を聞きながら、ほぅっとため息を一つついて、ガンちゃんを見つめる。


ぎゅっとガンちゃんが抱きしめてくるのを、私も抱きしめ帰す。


私はもう大丈夫だよ、って思いを込めて。



ガンちゃんの大きな手が私の頭を何度も撫でる。


そしてそれはやがて頬を優しくそっとさすり、口元をさすりながら、私の唇にたどり着く。


私の唇を幾度も撫でるその無骨な指を、私は口を開けて、ちろっと舐めながら、ガンちゃんを見る。


ガンちゃんは能面のような表情をしながら、その実、目の奥に昏い熱い何かをひそめて私を瞬きもせず見ていた。


私はもう一度その指をちろっと舐め、綺麗に微笑んだ。


そこにテイちゃんの、


「おい、おい、ごね得かぁ、透子ぉ、俺のも舐めろ!」


との、身もふたもない低レベルの声掛けに一気に今までの雰囲気が霧散した。


私はそれはそれは冷たい目でテイちゃんを見て、ガンちゃんとヨウちゃんに物騒に睨まれるテイちゃんに、ざまあみろ、怒られるがいいよ、と思いながら、そのまま出かけるべく玄関に向かった。


ソウも当然のように私に続き、それにコロとシロも続いていく。


ソウはヨウちゃんとガンちゃんには丁寧に頭を下げ、テイちゃんには、鼻で笑って答えた。


テイちゃんが何やらぶつくさ文句を言っているが、私は綺麗に無視して玄関を出た。


その目的の場所にある居酒屋まで、私もソウも車中で何か話すでもなく沈黙のまま向かった。


レイちゃん達には、しっかりとメールを送り、うん、これ大事だよ。


後で地獄みるからね、カタギの人間馬鹿にしちゃあいけないと、何度私が思ったことか。


キョーちゃんはカタギ?なのか?・・・あとでヨウちゃんにでも聞いてみよう。


いつも夜組みとひとくくりにしてたけど、あいまいだよね。


そしてメールを送りやることのなくなった私は、あいついでくる返信や着信はスルーの方向で、過ぎ去る景色を眺めながらマザーグースの詩の続きを頭に思い浮かべていた。



誰が死ぬのをみたのクックロビン  私とハエが言いました。


私がこの目で死ぬのを見ました。


誰がその血を受けたのか?   私と魚が言いました。


小さなお皿で私が受けた。


誰が死装束を作るのさ?    私とかぶと虫が言いました。


針と糸とで私が作る。


誰がお墓を掘るのだろう?




・・・・・・私よね。




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