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君のままに美しく  作者: そら
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第55話  他校交流会終了②

「誰のお兄様?」


私はもう一度静かに尋ねた。


委員長達は、今度は綺麗に私の背後につき、もう口は出さず控えるのみだ、さすがわかってる。


おじいさまに、と言った子は、私が反応を返したので思わず無意識に後ろに一歩下がってしまい、それに気づくと、今度は怒りのまま私をにらみつけた。


どうやら新しく香蘭に入学した子みたいね。


でもね、虎の威をかる、いやかりまくる私が言うのも何だけど、自分以外にこれやられると、ひどくむかつくんですけど。


ましてうちのメンバーの誰かに対して言ってくれちゃったみたいだけど、私のものに手を出されるのもイヤなのよ、ここらへんでそれをアピールしとくのも大事よね。


わがまま?いいじゃない、わかっててするワガママは「覚悟」とでも呼んで欲しいものだわ。


その子は、うちの新1年の庶務の藤堂さんを見て、自分のおじいさまが会長をしている財団法人の名をあげ、藤堂さんの兄が事務局にいる事を教えてくれた。


藤堂さんとはそこの関係のパーティーで顔なじみらしい。


それで、おじいさま、ね。


勿論、こんな淡々と説明されたわけでなく、怒りのあまり喚き散らしたのをまとめたんだけどね。


私はお話しはそれだけかしら?と言って冷たく、ガンちゃんが「おっかねぇなぁ。」と喜ぶその表情を浮かべながら、ピッと携帯を鳴らした。


出たのはレイちゃん、レイちゃんにそのままその団体の名と会長名を告げ、ついでにバカ香蘭の1年の名も告げて切った。


怪訝そうな顔をする子をまず無視して、最初に話しかけてきた香蘭会計に声をかけた。


「先崎さんの人生っておっしゃってましたけど、あなたもその仲間入りって、本当に素晴らしい友情ですわね。」


怪訝な顔をしながら、相変わらずきつく見つめる彼女に微笑みながら話し続ける。


「お父様は政界を引退なされるわ。財務省のお兄様もお父上の後継はなくってよ。ああ、お父様政界スキャンダルで引退なさるから、あなたこんな所にいてよろしいのかしら?テレビとかマスコミとかもうじき動くはずよ。私ならさっさと帰るわね。」


レイちゃんに最初打ったメールの返信には、しばらくしてそういう事柄が返ってきていた。


農水大臣の子の携帯がなり、何を言ってるのかと、バカじゃないかと私を見ていた彼女が携帯で話すたび、みるみる顔が青ざめていく。


「嘘、うそでしょ。えっ、私何にも、何にもしてないわ。電話を代われ?誰に?何、何よ、お父様、何をお怒りなの!わけがわからないわ。」


こちらにも携帯ごしに何やら大きな声が漏れ聞こえる。


そして、続けて、1年の子の携帯がなった。


何かわからないけど尋常じゃない事がおこっているのは皆わかっている。


例の会計の子は父親に怒鳴られながら、混乱のうちに、私の言った言葉を思い起こし大きく目を見開き私を見ながら、唇を震わせ父親の電話を聞いている。


香蘭1年の子に私は言った、電話を出たらいかがかしらと。


そして、同じく電話に出た子はみるみる血の気を失っていく。


倒産、失職、そんな小さな声が聞こえてくる。


早っ、まだレイちゃんに連絡してから20分くらい?うん、レイちゃんてば鬼畜仕事させたらガンちゃんよりえげつないとこあるからね。


それに最近ちょっと機嫌悪かったからなぁ、いい八つ当たりだね、それと私が久しぶりに頼ったのも嬉しかったのかな?


「いい仕事してますねぇ」だよ。テレビの人同様、うさんくさいけど、ん?笑顔とか?。


レイちゃんの機嫌悪い理由、それはね、私が実家に関わろうとしてるせいだと思う、過保護でしょ?私が傷つかないか心配してるの、杞憂よね。


杞憂といえば、この言葉の元になった人、本当に空が落ちてこないか悩み苦しんだなんて、なんてカワイイ人なんだろう、空が落ちるって信じた人生計り知れないよね、そう思わない?一緒に空みたかったな。


それにしても、お願いした私が言うのもなんだが、香蘭の1年倒れそうだわ・・・あっ、倒れた。


輪をかけて香蘭大騒ぎ、みっともないったらありゃしない。


姉妹校止める方法ないかしら?ま、この分じゃ向こうから言いだしてきそうだけど、うちらに怯えて。


委員長があ~あって感じで私を見る、知~らないっと、穏便にここを出ようとした私の足を止めた方が悪いよねぇ、ことわざにもあるじゃない?


「キジも鳴かずば、うたれまい」って。


悪いけどちょうどいい見せしめになってもらうわ、黒ユリ会には手も口も出しちゃダメってね。


私、姉のとこに乱入して遊ぶ気満々だから、ホント満々なの。


だからね、黒ユリ関係は静かな状態でいてもらわないと、おちおち遊んでいられないと思うわけ。


私が体育館を出ようときびすを返すと、小さな涙声が聞こえた、「お願い、電話に出て」と。


私は無視してそのまま歩き出す。


何故かモーゼの十戒のように、綺麗に人が割れていく。


・・・いつかのデジャブだわ、失礼ね、これ、花も恥じらう乙女に対する態度じゃないわ、どこの化け物かっていうの。


背後には号泣する二つの声、どう?人の人生をってもう一度言いにきてみる根性あるかしら?





その後行われた合同会議という顔合わせには、香蘭の面々はいなかった。


ピリピリした雰囲気の中各校紹介が行われ、我が聖桜学園は委員長に質疑応答をしてもらった。


あからさまにほっとした各校の面々に微笑みながら冷たく視線をやると、誰一人目を合わせるものはいなかった。


「勝った!」・・・あれ?何か間違ってる?


こうして黒ユリ会初の学外公式行事は幕を引いた。


あまたの噂話だけを残して。












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