第54話 他校交流会終了①
一度用意された会議室に戻って、軽く珈琲を飲んでから、体育館に向かう。
全校集会で本日の交流会各校の紹介があるから。
紹介されたって、どこぞで会う予定もないのだから、無意味だと思うけど、毎回通例で行われているみたいだ。
まあ、「郷に入れば郷に従え」だからしょうがないけど、もしうちの学園が当番校なら絶対やらないことの一つよね、これ。
もう既に全校生徒が体育館に並んでいる中、教職員とは反対側の壁に設けられている、各校の名前が書かれている椅子にむかう。
どうやら私達が最後らしい。
生徒たちの好奇心あふれる視線を委員長たちは、バッサバッサと綺麗に無視して優雅に歩いていく。
私をその簡易椅子まで誘導すると、おもむろに例の動作を一斉に揃えて、私が座るのを待つ。
私が鷹揚に座ると自分たちもこれぞお嬢の座り方、っていう見本の如くそれぞれが美しい所作で椅子にすわる。
ガヤガヤとした体育館の雰囲気も、定刻になれば自然落ち着く。
さすが、ここは進学校だけあり、そこの所は見事な切り替えだった。
つまらない学校長の挨拶、当番校の生徒会長の挨拶、招かれた交流会校側の代表として同じ公立進学校である上森高校の生徒会長の爽やか君が挨拶して、やっと学校紹介に入った。
そのまま上森高校が紹介され、私立の弘和、古桐と壇上で紹介される、こちらは皆男子の生徒会長だった。
去年の学園祭で私と一悶着あった姉妹校の香蘭学園が続き、最後に私の所の聖桜学園が紹介された。
代表が一言言わねばならないので、「ごきげんよう、皆さま。本日は楽しませていただきます。」と無難に終わらせたのだが、生徒たちからどよめきがおきたのには驚いた。
え?何?何で?そのどよめきについて、どちらの方向でのどよめきか、良い方か悪い方なのか聞いてみたいと思った。
壇上をおりて、その後副校長の挨拶で締めくくられたんだけど、終わって椅子から立ち上がろうとした時、急に前に立ち、話しかけられた。
香蘭の生徒会の人間だった。
委員長がすかさず私の前に出てそれを遮る。
他の子たちも臨戦態勢に入った。
委員長が彼女たちに、そして私に話しかけた少女に、優雅に微笑みながら、
「ごきげんよう、皆さま。学園祭ぶりですわね。」
と上品に微笑みかけ挨拶した、目は笑ってないけど。
「前に学習なさらなかったのかしら?我が黒ユリ様に取り次ぎもなしに話しかける不調法はやめて下さらないこと?何度言ったら理解して下さるのかしら?」
ためいきをわざとらしくして困ったように彼女達を見る。
他の子たちも、半端ないオーラをあふれさせ、同じように私を守るようにして立っている。
まったく、ツーと言えばカーの、この反応たまらないよね。
香蘭の子は、
「何度もこちらから正式に面会の要請はしております。それを無視なさっていらっしゃるのは聖桜の方ではなくって!」
そう委員長をにらむ。
委員長はそれはそれは見事な笑顔でそれをばっさり切り捨てた。
「我が聖桜黒ユリ会は皆さまもご承知でしょうけど、国内外いろいろなオファーで、とても忙しくしておりますの。何故香蘭を優先しなければいけませんの?意味ない事はしない、っていうのも組織を動かす上では基本中の基本でしょう?それからお話ししなければならないなんて、我が黒ユリ会がお相手をするのは無理な話しですわね。」
「意味ないですって!うちの副会長だった先崎さんの事が意味がないっておっしゃるの!一人の人間の人生が意味がないですって!信じられない!」
そう言って熱血女子が大きな声を出す。
お嬢様ズVSお嬢様ズの戦い勃発に、体育館の中は好奇心の塊。
何せこの後はお昼とお昼休み。
教職員もほとんどの生徒もまだ残っているのに・・・なぜに見世物パンダにならんといけないんだろう。
香蘭の女子もまさかこうヒートアップするとは自分でも思ってなかったんだろう。
ちょいと話をしたいという約束を取り付けたかっただけみたいだから。
でもね、アポイント1つを取るにも、あなた方お嬢様方にとっては覚えるべき大切な事の一つよね。
それをこんな公衆の面前で、軽くとろうとした愚かさを知るべきだわね。
どうも香蘭とはとことん合わないみたいねぇ、私は呑気にそう思いながら、例のリサーチ会社の子の差し出す携帯情報を見る。
豊中悦子、豊中農水大臣の一人娘、現在高3で会計職ね。
上に二人の兄がいて、長男は財務省に入省3年目、二男は都市銀行に今年入行、ね。
ふ~ん、あの学園祭で喧嘩吹っかけてきた女とは母方の従姉妹同志で幼馴染、ですか。
了解しました、えーとメール、メール。
レイちゃんにメール発信、よし、完了。
私はにこやかに微笑んで体育館をでるべく歩き出した、香蘭を無視して、面倒だから。
それに気づいた子猫ちゃんズが私に続き、委員長ももはや相手にせず踵を返して私のあとに続こうとする。
無視する私に頭に血ののぼった香蘭側は、口々にこちらを非難する。
1人の口から、「おじい様に頼んで、あなたのお兄様なんて仕事ができないようにしてやるからっ!」
と言うのが聞こえた。
私は立ち止まって静かに問いかけた、「誰のお兄様?」と。