第44話 再会
本日2度目の投稿です。
新入生歓迎会、結局3組以外ゴールにたどり着けなかったあの騒ぎの余韻も薄れ、いい意味で高等部全体が良い雰囲気にまとまったので、透子もこうしてまた堂々とこの黒ユリ館の私室で授業をさぼって、晩春の日差しを満喫している。
カウチに寝転がり本を片手にご機嫌良くいる透子の携帯が鳴った。
見るとレイちゃんからで、こんな中途半端な昼下がりに珍しい、さては「やっほ」の回収の許可やっと出たか、といそいそと電話に出た。
私がレイちゃんに「やっほ」の回収忘れて放置プレイ中だったよ、と言って、回収しなきゃ、とお願いしても、レイちゃんたら、スルーして相手にしてくれなかった。
「そのまま忘れてくれていい。」って。
そんなの無理よねぇ、どんな様子だか見に行くべきよね、楽しそうな事はすぐしなきゃ、これ黒ユリ会裏の会則第一項だから。
私がすぐに電話に出ると、それは全く違う内容だった。
「父が倒れて救急車で昨夜病院に運ばれた。」と言われた。
どうやら私があの家を出る時の緊急連絡先はレイちゃんが請け負ったらしい、そりゃあガンちゃんじゃ電話なんてしたくても出来ないに違いない。
まあ、レイちゃんに連絡する時も怖気づいてはいただだろうけど。
私は携帯を耳にあてたまま晴れ渡った空を見た。
あの日、高揚とした気持ちのまま家に向かった私が見たのと同じような空だった。
まあ、一度うちの保護者ズには、もう私は大丈夫、そう教えてあげなきゃとは思っていたしなぁ、父が倒れたと聞いて私が思った事は、本当にそれだけだった。
私は数年ぶりにこうして家族だった人に会いに行くことになった。