第41話 ヨウちゃんと一緒
今回からサブタイトルつけようかと。
この間のガンちゃんとこで、いろいろ打撃をくらった私は、まず仮装大会みたいな服を買ってくれたお礼?に、委員長達に頼んで、可愛いクマグッズをいろいろ集めてもらった。
一昨日ガンちゃんとこに夜出かけて、昨日学校で委員長達に頼んだのに、今日の帰りまでには、それはそれは可愛らしいクマグッズが黒ユリ様の私へと献上された。
金曜日の今日はヨウちゃんと一緒の日。
来週木曜日に授業をつぶして行われる新入生歓迎会の前に、仕事場訪問を終わらせたい私は、放課後は家でゆっくりヨウちゃんといつも通りに過ごす。
黒幡日本支部長に復活したらしいけど、ヨウちゃんは今まで通り家にいる。
必要な時は電話、ヨウちゃんいわく、自宅勤務らしい。
それなのに、それはそれは凄い大金が、兄であるバカロンから振り込まれてくる。
私とヨウちゃんは、二人でニタァと笑い{バカだろ}{バカだね}と心の中で会話する。
黒幡は日本でこれといって活動をしていない。
ただし、黒幡支配下の中国系企業や飲食店にチャチャを入れなければ、だけど。
横浜の中華街に夜中行ってみるといい、不審な人間や車が足を踏み入れたら、日本語のわからない方々が、武器を片手にワラワラ取り囲んでくれるから。
持ちつ持たれつという日本の美徳はこちら方面にもいかんなく発揮されて、ヨウちゃんたら面倒だから、どうやらガンちゃんとこと連携したらしく、仕事丸投げしてる。
勿論ガンちゃんとこにもバカロンから大金が振り込まれている。
ソウに言わせれば、バカロンは自分の知る人間の中では史上最悪な狂人だと、彼を知る人間は誰でもそう言うはずだと顔を青くして私に説明してくれる。
私達に対する態度が異常なんだと、だから絶対頼むから俺や犬に会わせようとするなと本気でお願いされた。
えっ、私?本気であればあるほど裏切りたい女だよ、次回来日したらこの家連れてくるよ、勿論ね。
それで話は変わるけど、今日の放課後はヨウちゃんと一緒に過ごすから、今日は他のみんなには18時以降出払っておくようお願いしてる。
レイちゃんなんかはいつも日付けが変わる頃しか帰らないから、関係ないけど夜組みには、いつもより早くお出かけしてもらっている。
23時過ぎたらいつでも帰ってね、のカワイイ言葉と共に。
家に帰るとヨウちゃんがいつものように出迎えてくれた。
「18時6分。」
帰宅時間を告げたヨウちゃんに私は目を合わせ、またまたお互いニタァと笑いあう。
さあ、ゴーだ!
私は急いでジャージに着替え、うん、わざわざ学校の体操服持って帰ったよ、今夜の為に。
迎えにきてくれたヨウちゃんとこの、いかにもな3人が両手に一杯のかわいいクマグッズを何度かに分けて置いて行ってくれたのを確認して、またしてもヨウちゃんと二人で目を合わせ、それらを抱えてガンちゃんの部屋にゴー!をした。
2時間もしないうちに黒でシンプルかつゴージャスに統一されていたガンちゃんの部屋は、小学校までの女の子が喜びそうなメルヘンチックなクマグッズに占領された、それをやった女の子であるはずの私でさえドン引きの、それはそれは「おとぎの国」に変身していた。
カーテンのクマがプリントされたピンクのそれには、ところどころパステルカラーのボンボンをヨウちゃんが器用に縫い付け、ベッドもテディベアのセットに早変わり。
ヨウちゃん、完璧です!私はグッズを飾り付けて、ぐらいしか思わなかったのに。
ベッドの枕元に鎮座するテディベアの大きなぬいぐるみは、足の裏にナンバーの印刻された限定品らしいけど、それ一つだけ見れば確かに愛らしいのだけど、大きなものでドレッサーからティッシュケースまで可愛らしいクマグッズに占領されたその部屋は最早視界の暴力でしかなく、私とヨウちゃんは早々に終わり次第自分たちでやったとはいえ、辟易とリビングに引き揚げた。
夕食をパスタとサラダで簡単にとり、お風呂に入ってヨウちゃんのエステを受ける。
いつも通りだけど、リビングに戻って今日は二人で早めにゆっくりムーミンを見ながら、ヨウちゃんに甘えて膝枕。
優しく髪をすいてくれるヨウちゃんの手に頭をこすり付ける。
ヨウちゃんと二人じっと見つめあいながら、たまの二人だけの時間を堪能する。
けれど欲張りな私はそろそろヨウちゃんだけじゃ足らなくなってきた。
ヨウちゃんもそれを知ってるから、私のおでこにキスしながら、
「そろそろユキが帰ってくる、コロとシロはほら、部屋の外にいて呼ばれるの待ってるよ。」
そう優しく私に囁く。
私が笑ってヨウちゃんの頬に手を添えて、
「コロ、シロ。」
と一言呼べば嬉しそうに犬たちが入ってきて、テレビの前に大人しく座り、ムーミンを最初から見たいと目で訴えてくる。
ヨウちゃんはその願いをかなえてやりながら、また優しく私の頬を撫でる。
お互い頬を撫でながら、残りの時間をゆったりと過ごした。
いつもより早く帰ってきたみんなと、ユキちゃん特製ハーブティーを飲んで、いろいろな話をしたり聞いたりしているうちに、日付も大幅に超えた時間、私は自分の部屋に戻った。
しばらくすると私の部屋をバーンと開ける音がした。
ガンちゃんは、ドアの外の方を指さし、
「ありゃあ、何だ、何の嫌がらせだ、透子!俺が何をした!」
と、珍しく動揺している。
続けて勢いよくキョーちゃんが入ってきた。
「透子ぉ!おめえ、今日何していやがった、ありゃあナンだ!何のつもりだ!あ!」
と、私を見て叫ぶので、キョーちゃんに答えて言った。
「うん、おまけ?」
実は余ってしまったファンシーなクマグッズ、私ってば自分で見るのもいっぱいいっぱいだったから、捨てるのも献上してくれたみんなに悪いし、だったらとガンちゃんと同じ系統のキョーちゃんにプレゼントしたわけ。
ガンちゃんの部屋ほどじゃないけど、そこそこな幼児部屋にキョーちゃんの部屋も変身した。
あらっ?違ったっぽい?ワナワナと震えるキョーちゃんの手には、30センチくらいの可愛いウェディングテディベア。
自分で何を持ってるか気づいていなかったらしく、私の視線を感じて、やっと自分の手にあるクマのぬいぐるみに気づき、やけどしたかのように、それを放り投げる。
私はやれやれとばかりにベッドをおりると、ぬいぐるみを拾ってガンちゃんに差し出す。
「ほら、ガンちゃんてば、好きでしょ。」
そう、できるだけ可愛く笑いながら。
それを聞いたキョーちゃんは日頃尊敬してるガンちゃんに向けて、それはそれは物騒な笑みを浮かべて、
「犯人は高津さんすか。」
そう言って、色っぽい仕草で髪をかきあげ、伊達じゃないガンを切る。
そう言ってきたキョーちゃんをチラっとみながら、ガンちゃんは私からぬいぐるみを受け取った。
そしてそして、それは黒い笑みを浮かべて私を見た。
ありゃ、やりすぎた?
「当分俺たちは、あんなとこじゃ寝られやしねぇ、さあ、寝るぞ、透子!」
そう言って大人の男のやばい色気を垂れ流しにして、私を抱き上げベッドに向かう。
キョーちゃんも服は着ない主義らしくポンポン服を脱ぎ棄てついてくる。
明日急いで部屋を戻してもらおう!
ベッドの中で二人に抱かれて眠りながら、何かサワサワとさわってくる男たちと攻防を繰り返しつつ、からかう限度を見極めるのも大事だと学習した私だった。