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君のままに美しく  作者: そら
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第40話

ガンちゃんと一緒

新入生歓迎会は、大体の骨組みも決まり来週の木曜日に予定通りできそうだ。


ユキちゃんちに行って両親に会った事は、誰も触れも、揶揄もせず、皆完璧スルーしている。


何、なんなの?大人の余裕ってのを見せられてるわけ?


他の時には、根掘り葉掘り何でも、どんな事でも何があったか知りたがるくせしてさ。


やっぱり、絶対怪しいよね・・・これは一度はっきり聞かなきゃ、だな。


私は夜のお仕事組の準備が整うのを待って、自分の用意も準備万端なのを確認した。


今夜ガンちゃんとお出かけするのに、思いっきり白いレースのこれでもかっていうパステルグリーンを基調としたふりふりワンピにしてやった、しかもスカートの下はばっちりパニエよ。


どうよ、これ、嫌がらせにも程があるでしょ。


本当は、すごいシックな大人っぽいのレイちゃんが用意してたんだけど、ガンちゃんと一緒の日にこの恰好でいくって絶対ないと思うわけ。


仮装大会なみに私的には恥ずかしいけど、恥と嫌がらせを天秤にかけて、嫌がらせをとる女だから私。


このワンピ誰が買っておいたのかは、後で聞いてきっちりいじめてやる事も忘れない。


さて、後は出かけるだけだ。


私はそこで初めて聞いた。


「ねえ、うちの家関係はだ~れも触っちゃいないよね?特に姉たちは。」


私が唐突に聞いたのに、まるで当たり前のように保護者ズはあっさり答えた。


「ありゃあ、俺達が手を出す事じゃねえなぁ。」


「忌々しいにも程がありますが、彼らだけは透子の領分です。」


うん、知ってるならいい、「だけっ!」ていうのは引っかかるけど、えっ他は?なんて聞かない、聞かない、私空気読める子だから、やぶ蛇って言葉も知ってるから。


よし!それじゃあ、今夜はガンちゃんとお出かけだ。





・・・うん、このワンピ買った犯人即効わかったよ。


ガンちゃんとこの本部事務所の一見すると只のビジネスビルにしか見えないそこで、入ってすぐにソウの父親である若頭の香川さんが代表で出迎えてくれた。


その挨拶の後に開口一番に、


「組長が透子さんにお買い求めになったこの服を着て下さり、まして男ばかりのむさくるしい事務所にこうしてお出でいただけるなんて、組長以下我々幹部一同、感に堪えません。我々も一緒について共にお選びするのに、助言させて頂いた甲斐がございました。」


もう一人の補佐も、


「さすが組長です、おかわいらしい透子さんに、とても似合ってらっしゃいます。」


あなた達、ガンちゃん筆頭にこの乙女系ファッション専門店に大挙して押しかけて、あーでもない、こーでもないやったわけ?


「・・・・・・・・・・・。」





事務所の中は、ただのエリートサラリーマンや普通の人に見える人間もいるが、半数以上ヤのつく人だよねぇ~、と一般ピープルがみてもすぐわかる強面な人ばかり。


まして、こうして本部に詰められるのは、分派の組を持っている人や幹部の皆さま、そしてその護衛の方々しかいない。


あれっ?その恰好と独特の異質な空気で持って、一発で黒幡の人だとわかる人間もちらほらいる。


何でここにいるんだ?


まあいい、気にしちゃだめ、この系統の人間は理屈じゃない、普通じゃない、常識じゃない、まともに考えちゃいけないのよ透子!スルーよ、スルー。


それにしても、私とガンちゃんを見るこのなま暖かい事務所の雰囲気は何とかならないのか、と思う。


それに、なんで各々のテーブルに派手な生花がドーンとこれみよがしに置いてあるの?


派手派手な金色が入った花瓶に、これまた派手派手しいというか、最早毒々しくさえ感じる花々、目が花を見てチカチカするって初めての体験だ。


ちゃんと見ないようにしよう、自分の為に。


ほら、視野をぼーっと広げるのよ、透子、焦点を合わせたら待ってるのは毒々しい花!気を付けて!


視野を広げたせいで目の端に入る、事務所の窓についてるボリュームたっぷりのレースのカーテンは同じようにみないようにしなきゃ。


ついてるタッセル、ぬいぐるみのクマ?見ない、みない、見ちゃダメ、何かが失われる気がするもの。


挨拶もそこそこに、急いでチカチカから逃れる為に、ガンちゃん専用の個室に入れば、ガンちゃんのマホガ二ーのどっしりとした机を背にして、こちらから見て表面に飾られた高津組の紋と、本部紋、飾り刀が見えた。


本来なら、その筋らしい重厚な雰囲気をかもしだすはずが、そこにも何故か結婚式場でみるような生花の飾りが施されていた。


サテンとシフォンの大きなリボン、綺麗だね、飾りの日本刀についていなければ、ね。


そして、驚くことなかれ、壁紙は可愛いいクリームイエローの地に、上部には真っ白ふわふわな雲が描かれ、可愛い花束を持ったテディベアが赤いリボンをつけたメスのテディベアのほっぺにチュウをしてる図柄のものだった。


・・・これはすんごいジョークとして笑うべきなんだろうか?笑うとこだよね?間違いなく今すぐに。


けれどなんでクマ?


あまりの突拍子もない部屋の様子に、私が目を点にしてると、ガンちゃんが、


「透子、どうだ気に入ったか?うん、どうだ?」


と得意げに甘い声を出し聞いてくる。


隣にいる香川さん以下、補佐の皆さんも、「どうだ!」と言わんばかりに期待に満ちた眼差しで私を見ている。


えっ、これってどっきりジョークじゃないの?まじなわけ?それこそビックリだ。


続けてガンちゃんが、


「陽二の野郎が、俺が内装をこの日の為に変えようとしてるの知って、いい業者だと紹介されたんだがな、あいつときたらここの壁紙を勝手にムーミンで注文してやがった!それも特注で!念のため用心して業者に聞いといて良かったぜ!アブねえとこだった。」


香川さんが続けて言う。


「さすが組長です、油断なさらない、相手があの青井さんでも。本当に感心いたしました。」


「だろうな!俺はあんなカバもどきの何処がいいんだか疑うぜ!な、透子。」


と、鼻を得意げにならすガンちゃん。


私は学校の元カメリア館に眠る、ガンちゃんから贈られた、あの熊のはく製を思い出した。


で、あんたはクマなのね、と。


思いっきりこの部屋に引きながら、頭の中で了解です、とリフレインする私。


ここってまがりなりにも名前の通った暴力団の本部事務所だよね。


・・・・バカだ・・・。


ニコニコ、ニコニコそんな笑顔の溢れる中、ガンちゃんの事務所訪問は終わった、遠い目になる私を残して。







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