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君のままに美しく  作者: そら
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第38話

テイちゃんと一緒

今日はテイちゃんとおでかけの日。


ふふっ、夜の世界にゴー!よ。


キラキラしたお姉さんやお兄さんを、日本でもトップと自他とも認める最高の店に、テイちゃん自慢のその店に連れてってもらうの。


実のところ、このお出かけだけはちょっと楽しみ、好奇心いっぱい。


私はこの日の為にレイちゃんが、レイちゃんそれぞれのお出かけの日用に、とても綺麗なデザインのワンピ作ってくれたの、いつもドレス作ってくれるデザイナーの方が、作ってくれてんだけど、綺麗なシルエットの上品な、それでいてカワイイワンピは絶賛私のお気に入りなの。


今夜のお出かけも、テイちゃんとお出かけ用の最高級のシルクの生地に、全体に大きな刺繍、鳳凰が上品に同じ色で入ってるんだけど、ところどころボヘミアンガラスが装飾でついていて、凄い贅沢で綺麗な乳白色の膝下までのなの。


これが歩くたび優雅で、家出る前にみんなに見て、見て!ってクルクル回り大騒ぎしちゃった。


で、テイちゃんが最高の場所で最高の男と女を揃えて、日本一だと豪語する会員制のクラブ、料金も最高級なそこに連れてきてくれたんだけど、実際どんだけのものなんだろうと、ワクワクしていたのよ、私的には。


テイちゃんに抱っこされながら、ここ大事、抱っこなの・・・。


それでもね、それさえも目の前のごちそうに比べたらと、大人しくされるがままにいた私に、この仕打ちはないよねえ、切れてもいい?


「貸切」なの。


そう、今夜は私の貸切になってた。


キラキラしい最高のプロの綺麗な方たちと、それに見合うセレブなお客様たちの高度な駆け引き目の前で見たかったのに、肩すかしでえ~って感じ、やってらんないよね。


1日一緒プログラムで唯一楽しみだったんだよ、マジない!


今夜はこのビルの№2以下の店、6店舗が営業中で、ここだけ貸切中。


綺麗なお姉さん、お兄さんはどこ?と聞いたら、


「お前には俺がいればいいだろ。俺が相手だ。」だって。


即効却下、私、超わがまま+切れモード発動!


テイちゃんは一つため息をついて、私を抱っこしたまま№2の店に席を用意しろって、そばに控えてるボーイさんに言った。


やった、やったよ、透子!


「ホントに透子はわがままだなぁ。」って言いながら、テイちゃんは私の髪を撫でる。


うちの保護者ズの好物は私のわがままなんだ、それ知ってるから、ここぞって時使うんだ、これって生きる基本だよね、弱いとこつくのは。


私はそのままテイちゃんいわく、№2の店に移動した、・・・抱かれたままだけど。


ここの店内は女の人しか置いてないけど、素敵なフォーマルドレスや華やかな着物を着たお姉さんが沢山いて、テーブルごとの間隔も広く取られていて、背の高い観葉植物がそこかしこに置かれていて、その合間にもお花や置物で飾られ個室とかわらないくらいにお互いのテーブルがあいてて、煌びやかなシャンデリアも間接照明も綺麗で、思わずテイちゃんのほっぺにチュウして、私はにこにこだった。


これよ、これ!


ボーイさんがすぐそばに控えていて、綺麗なこの店のママさんと数人の美女が私のテーブルの向かい側についてくれて、かいがいしく私の世話をやいてくれる。


私が機嫌がいいので、自然テイちゃんもご機嫌。


ママさんもしっとりとした大人の女って感じで、他の美人さんたちも、押しつけがましくなく控えている。


これぞプロ!プロ最高!と私が堪能していると、テイちゃんがこうしてひととこに落ち着いている事が少ないらしく、来ている客たちの中で目端のきく何人かが、さりげなく挨拶にきはじめた。


ほら、機嫌いいから、私もどうぞどうぞって感じでいたの、大人しくテイちゃんの隣に座って、それはそれはおいしいバナナジュースを飲みながら。


その男が来るまでは。


その男は40くらいの人で、私のセンサーにピコピコ反応したの、ガンちゃん臭のするヤのつく方面の人だって。


高級スーツを着こなすその男は、一見エリート然として、その後ろに控える人たちも、そうは見えないけど、バカロンやガンちゃんと同じだ、気をつけろ、と私のセンサーは警告する。


はぁ、何で花の女子高生がそんなセンサー身に着けてんの、と自分でも思うけどね。


私はさりげなく下を向いて、顔を合わせることなく、無邪気にジュースを口にしながら、この人も1、2分で終わりになりますように、と、「早く行け~」と頭の中で祈りを込めていた。


うん、私がたま~に祈っても、それがかなわないのは何でだろう?初詣いったよねぇ。


そうか、私の周りがどちらかと言えば、いや、100パーセント地獄の住人決定の人ばかりだからか?


神の加護もとからけっばしてるわな~、納得したかも。


そして案の定、その男は私に挨拶をしてきた。


「お噂はかねがね、黒ユリ、というより、もっとカワイイ花の名前の方があってるように思いますね。だから私は別の名で呼ばせてもらってもいいかな?」と。


私が目をつと上げると同時に、テイちゃんがすぐさま立ち上がり、その男と一触即発状態になる。


それに何気に控えていた、それぞれの部下達も加わり、ピリピリと雰囲気が痛いくらいだ。


はぁ、めんど・・・。


私は座ったまま、ジュースの最後の一口をしっかりと飲み、テイちゃんのスーツの裾を引いて「抱っこ。」と甘えた。


ついでに、その男に、


「あなたは誰かは知らないけど、私を知ってるみたいね。」


「それで、私に許可なく話しかけるって事は・・・壊れたいのね。自虐が好きならお望みのままにしてあげる。相手はよりどりみどりだけど、あなたの望みの相手は誰かしら?」


私は携帯を手に取り男を見る。


それを見て後ろの部下が声をかけた。


男はニンマリと初めてその本性をあらわし、そう怒るな、そう言って勝手にテーブル越しに私の前に座る。


テイちゃんがあきれたように溜息をつき、私をなだめるように肩を抱いてきた。


綺麗なママたちをその時点でテイちゃんがどかしたので、私がふてくされると、テイちゃんは私を更にその腕に抱え、私にごめんな、そう言って、それからその男に話しかける。


「お前、本当にやられてぇーなら何もいわねぇ。ふざける相手間違えるなよ、おい!」


そう言って男を見て、ガンちゃんとこの組織の理事の一人で関西に本拠を持つ本間組組長本間義久だと私に紹介した。


私は勿論知らんぷりした、綺麗なお姉さんカムバックよ。


その本間さんが噂は噂以上ってわけか、と言ってたけどこれまた無視よ、無視。


その変わり、しぶい側近らしき人が、丁寧に謝ってきた、いつまでも悪戯好きなもので申し訳ありません、だって。


いたずら好きじゃなくて、ただのバカよ、バカ。


けれど、その側近の高須さんが、いかにもごつい体を縮めて眉を下げて謝ってくる様子が、なぜか私にヒットした。


ああ、そうか、私が幼稚園の時に飼ってた犬のコロにそっくりなんだとそう気づき、私が気にしないで下さいと手の平返したようにご機嫌になったのは、そして待ち受けにするんで写メとらせてて下さいって言ったのはしょうがない事だと思う。


私には癒しが足りないから、貴重な癒しはゲットして逃がすもんか。


うちで飼う生き物の名前は全てコロとシロしかない。


その後機嫌が急降下したテイちゃんを余所に、ちゃんと私の望みを気がついた高須さんの指示で、写メを取らせてもらい、なおかつ沢山の綺麗どころが入れ替わり立ち代わり私のテーブルに来てくれて、私は凄いご機嫌になった。


それに反してテイちゃんは、おどろおどろしくなったけど。


テイちゃんが昔ワルだった時の兄貴分だったという本間さんと、絶対コロの生まれ変わりだと言う私に、コロが生きていた時には、こいつもいたぞ!目を覚ませっ!て怒ってるけど、私はべーっと舌を出して相手にしてやらなかった。


家にいるコロとシロ、それにコロ2号、ふふっ、私の癒しだ~、とニコニコ笑う私に、テイちゃんは、


「ちくしょー!俺はみんなに責められるじゃんか、俺のせいかぁ~!」と騒いでいたけど、無視だ無視。


それを同じように確信犯で乱入してきた癖にニコニコしてる本間さんがいた。


私と目が会ったので、私は決まりのセリフを言ってやった。


「お主もワルよのう。」



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