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君のままに美しく  作者: そら
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第37話

レイちゃんと一緒

まったく、私のそこらにある紙で作ったくじ引きは却下され、我が保護者ズはマリオカートで熱い順番決めをした。


いやぁ、マリオカートってもっとほのぼの遊ぶゲームだと思ってたよ、私は。


何と言うか、ひどく熱かった、というかひどく物騒な雰囲気の時間だった。


結局、一番になったのはレイちゃん、次にテイちゃん、ユキちゃん、ガンちゃん、ヨウちゃん、そしてビリッケはキョーちゃん。


キョーちゃん、真っ白になっていたな、ガンちゃんにお前の転がしは誰より上だが、まあ、あそこの罠に綺麗に次々はまるなんざぁ、誰にも真似できねえよ、と馬鹿にされてるんだか褒められてるんだかわからない言葉でで、肩をポンポンされていた。


リアルな走りでは誰にも負けねえ、って叫んでたけど。


それで今日は学校を1日サボって、新歓も終わったばかりで私的にちょっと余裕もあるから、1日レイちゃんと一緒の日になった。


筆頭秘書の前島さんが、レイちゃんと私の赤ちゃんの代理母さんの所にずっとついているんで、今は筆頭補佐の「やっほ」の榊さんが家に迎えにきている。


私が例によって「やっほ♡」と言って挨拶すると、毎度毎度律儀にこめかみをピクピクさせてくれる。


本当にからかいがいがあるよね、この人。


「おはようございます。透子様。本日は1日よろしくお願いいたします。」


そう言って目では「邪魔スンナ」そう訴えてくる。


うん、私ってば超エリートの癖に、実際レイちゃんもこうして身近に置くくらいだから出来る奴なんだろうけど、このからかいがいあるこの人好きなんだよ。


いまどき、どこのオボコ息子だよっ!って感じ、ほら私の周り黒い人多いから、こうも素直な反応返されちゃ、いじめがいあるのよね、まったくの直球でブレの持つ余裕を知らないんだよね、大人のくせに。


よく言うじゃない?頭のいいのと賢さは違うって、ほんとそんな感じ、でも嫌いじゃないのよ私。


「よろしくお願いします、今日はお邪魔させていただきますね。」


私は、それはそれはにっこりとほほ笑んでやった、目にからかいを乗せて。


ほら、そうやってピクピクする、本当に私相手だと榊さん面白いよなぁ。


今日1日榊さんで遊び倒すのってありだよね。


はいはい、レイちゃん、そんな顔しないの、私はレイちゃんの腕に自分の腕をからませて、榊さんへの私の反応にふてくされるレイちゃんに甘えた。


今日1日我儘ほうだいやってやろうと、そんな意気込みで車に乗った。


みんなの「つまんなかったら早く帰ってこい!」の大合唱の見送りを受けて。




本社の超高層ビルは、全部レイちゃんの企業グループが入っているそうで、中層階から上が本社になるという。


レイちゃんと一緒に車を降りて、恋人つなぎで役員専用エレベーターに乗ったんだけど、受付嬢はじめロビーにいた大勢の人達の視線が痛いこと、痛いこと。


思わず鼻で笑っちゃったよ。


一番上の総裁室は総裁用のいかにもの机と椅子があり、総裁秘書チーム10数人が少し離れた所にいる大きな1つの部署になっていた。


お客様と面談するのは別の専用の部屋があるらしい。


先代と違い無駄な総裁室を一つの部署としたという。


ついて早々、レイちゃんは秘書さん一同の挨拶を受け、彼らはレイちゃんと手をつなぐ私に1階と同じような反応を返してきた。


私はレイちゃんにそのまま総裁用の椅子に一緒に座らさせられて、本日の予定なるものを榊さんから必然的に聞かされた。


うげっ、いろんな人と会う予定びっちりじゃん。


今日は出張がないと言うので、一緒にいるのに、私にどうしろと・・・。


榊さんが午前の予定に続いて午後の予定を言い始めた時、私はすかさず携帯を手にして電話していた。


「ヨウちゃん、いますぐ迎えに来て、つまんないから。」と。


その瞬間ピシリと固まる榊さん。


レイちゃんは、すぐさま私から携帯を取りあげて、


「迎えにくる必要はありませんよ。」と私を見つめながら話している。


「なんで~、私つまらないの嫌いなの、今日の私は誰かと会いたい気分じゃないし、何で私がレイちゃんといるせいで、誰かに会わなくちゃいけないの、ましてお留守番を私にさせる気なわけ?絶対いや!」


「あ~そうだ、オリエンーテーリングのいいアイディア浮かんだわ、学園に行かなきゃ。私学校行くね。」


私がそう言って立ち上がろうとしたら、レイちゃんがすかさず私をぎゅっとして動けないようにして、榊さんに指示を出した。


今日の予定は全てキャンセルしろと。


固まったままの榊さんはレイちゃんに抱っこされてる私を、それはそれはじとっと見て、その後、背後に控える自分の部下達に今日の予定の全キャンセルを急ぎ相手方に連絡するよう告げた。


こちらに向かっている方々には、急ぎ専務に連絡して専務との面談に切り替えろ、と。


ふん、私知らないもんねぇ~だ、私のわがままモード甘く見ない方がいいよ。


それから書類仕事に切り替え、それをを次々とするレイちゃんの膝で私は、メールしたりメールしたりメールしたりしてた。


だって、あまりに秘書さん達の、予定のキャンセルに翻弄されてるのみると、ちょっとは大人しくしようと思ったのよ、少しは。


それに大人しくしてないと、レイちゃん仕事しずらいと思ってね、私が別の椅子に腰かけようとしても却下なんだもん、抱きかかえて仕事するなんてその時点で私どんだけ邪魔なんだろ、とは思うけど私のせいじゃないよね?


けどね、私がせっかくそうして気を付かってメール打つたび、レイちゃんのチェックが一つ一つ入るんで、これ意味ないかも。


私がメールの邪魔しないで、って言ったらレイちゃんの変なスイッチ押しちゃったみたいで、いかに私が心配で愛しくてと、ほんと勘弁してってくらい滔々と説明されて、しまいには自分たち以外の邪魔者はさっさと処分すべきでしたね、と本気で言いだした。


はい、ごめんなさい、委員長達へのメール今すぐ止めます、私は空気読める子だから、ちゃんと白旗をあげる時知ってますとも。


そしてキャンセルやその他の仕事の電話や書類をまとめながらも、こちらに時々よこされる秘書さん方の私への視線は徐々に隠そうともせずにきついものになっていった。


そりゃそうだよね、こんなレイちゃん見たことないだろうし、ここ職場だもんね。


理解はするけど、だけどね、こちらを見る秘書さん達の空気の悪さに私は言ってやった。


だって私って基本優しくないし。


「レイちゃん、みんな私を嫌な目でみるんだけど、すごく感じ悪い。」って。


だってホントだもん、女の秘書さんが6人くらいいるんだけど、特にその目がね、いろいろと語ってますよ。


私が言うとレイちゃんはそちらを見て、納得すると即座に、


「ただ今を持って、総裁秘書室は解散する。」


「すぐに追って辞令を出すが、すぐさま退室し企画室でそれを待つように!」


続けて榊さんに明日までに新しい秘書室を立ち上げるよう、命令した。


榊さんは机で電話を取ってたんだけど、すぐさまレイちゃんの所に慌ててきて、どうぞお考え直し下さいと嘆願した。


私はレイちゃんの手を取って、その指をいじりながら知らん顔して遊ぶ。


ほら、何度も言うけど基本私って優しくないから。


榊さんはそんな私をはっきりと睨みつけて、レイちゃんに言う。


「総裁、お考え直し下さい、彼らは我がグループが誇る優秀な人間達です。どうぞどうぞ今一度お考え直しくださいますようお願い申し上げます。このような事で解散などありえません。透子様もどうぞお戯れなさらず、総裁にお取り成し下さい。」と。


それを聞いたレイちゃんの温度が、醸し出す雰囲気が一気に低いものになった。


口々に解散を告げられた部下の秘書さん達も、総裁、総裁!とうるさかったが、その初めて見る空気に皆固まって、総裁室はやがてシーンと静かになった。


「私の妻が嫌がる人間を何故私の傍におかねばならない?何故榊、お前ごときに指図されねばならない?お前には前島のかわりは無理なようだな。前島なら透子がこの部屋に入る前に、既にこの部屋にいるべき人間を取捨選択していただろうに。」


「その対応さえ満足にできず、あまつさえ透子に対して、お戯れだと!このようなことだと!お前は、いや、お前達は何を勘違いしてる?お前たちの代わりなど幾らでもいる。日替わりにできるくらいにはな。この会社はそういう人間ばかりだ。私はそう自負しているし現実にそうだ。違うか?いったい何をうぬぼれているんだ?」


「私が私の命より大事にしている、私の存在の全てを捧げている大事な大事な妻だ。その妻が嫌だという空気を醸し出す愚か者、そんな勘違いどもなど私はいらないし目障りだ。消えてもらおう、すぐに、私の前から、今すぐにだ!」


「出ていけ!私に何度言わせる気だ!お前もだ、榊。」


私は榊さんを見た。


とても真っ青な顔で血の色がなかった。


私は茫然とたたずむ榊さんに「やっほ♡」といつものように手をあげたが、はじめて何の反応もなく、そのままフラフラと総裁室を出て行った。


あんたってばレイちゃんの表の一部しか見せてもらってなかったもんね、バイバイだ。


けど、レイちゃん、妻ってなあに?妻ってさあ、何度も連呼してたよね。


筆頭秘書の前島さんに電話するレイちゃんを見ながら、ま、気にしない方向でいこうかなと私は思った。

















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