第33話
開き直った女は強い!ほんと、真理だと思う。
麻痺の針をその道のプロ、暗殺方面のね、に一瞬にして打たれた私の保護者ズは、やっと体が起き上がれる状態まで回復し、これ本当なら3時間くらいは効くらしいけど、わずか1時間もかけずに、こうして起き上がれるまでになっているのはさすがだと思う。
ただし、そのブリザードぶりは、一人ひとり半端ないのに、それが椅子に腰かけじっとこちらを見る目つきは、・・・本当にこれでもかってくらい、いっちゃってた。
私は、みんなが起きてきたと聞いて、みんなが横たえられていた部屋に入りこうして無事なのを確認してやっと安堵のため息をついた。
私の腰に手を回し、甘ったるく私を見る黒幡のトップの肌フェチ男、何かめんどくさいので縮めてロンと呼ぶことにした男の手をパチっとたたき落とし、みんなの元に抱きついていった。
このロンという男は本当に究極のシンプルライフを子供の頃から送っていたらしく、殺すか殺さないか、敵か自分の下にくだるか、それだけで生きてきたらしい。
みんなが目覚めるのを待っている時に聞かされたからね、いらんのにね。
それでもって、驚くことに、我がヨウちゃんの兄上様、敵対してるどころか兄弟よ、兄弟。
私もいらない姉がいたけど、ヨウちゃんもなんだね、わかるよ、ヨウちゃん。
彼らの父は後継者争いを推奨し、10歳になると数多くいた腹違いの兄弟姉妹で力試し、ぶっちゃけ殺しあいをさせられたそうだ、それぞれ側近を与えられて。
そして勝利したのが三番目の男子だったこの男。
生き残ったわずか数人の弟は、自分が実力を認め、なおかつ自分に忠誠を誓ったものだけで、そしてその中でもヨウちゃんは14才の頃からこの兄の右腕として生きてきたと聞いた。
さすが私のヨウちゃん、できる子だ。
私がみんなの元に思い切り飛び込んでいくと、一人一人がぎゅっと力いっぱい抱きしめてくれる。
私は嬉しくて、本当にうれしくて、ハイテンションにみんなにキスの嵐だ。
あの後ロンは約束通り、私の願い、「今まで通り私の大事な彼らと共にいる事。」を認めてくれた。
誰がこの単純なんだか複雑なんだか、まして人間とは思えないこの男の傍にいるかっていうの!
変な所でロマンチストなこの男は、40になるこの年で、まさか初恋をするとは思わなかったと真面目な顔で、蕩ける顔で恥ずかしげもなく言ってくる。
「自分の女の我がままはカワイイもんだな。」
それを本気で言ってるバカだ、人外で暴力方面では天才かも知れないが、まぎれもないバカだ。
いつ、どこで私があんたの女になったか言ってみろ!っていうの。
ふん、あんなもの飲み込んだからって、私がそれに何の価値も認めてなければ、意味がないのよ。
もう一つ出た条件もね。
まあ、私はこの男みたいにおバカじゃないから言わないけどね、・・・怖いし。
みんなが私を震える体で抱きしめる、うん、私も怖かったよ、もう二度とこんなのは嫌だからね。
私は人外のお願いをあと1つきいてやった、それで「私達全員の自由」も保障された。
そのことは、後でみんなには話すし、それも私にとっては意味がない事の一つだから。
ギブ&テイク、好きな言葉なんだ、嘘が入る隙がないもの。
私はこうしてここにいる、それ以上の幸福はない、それでOKよ。
あの詩が好きだ。
「・・・すべて世は事もなし。」
これもまた真理だと思うの。