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君のままに美しく  作者: そら
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第27話

私のまったり計画はどこにいったの?という怒涛の、マジで半端なかった忙しい学園祭は、2つほど女王様モードを発動したものの、おおむね大成功に終わった。

 

最終日の一般公開日に発動したそれらは、姉妹校の生徒会だという勘違い女に対してと、この学園の同窓会役員というおっさんに対してだったが、もちろんウィナーはこの私だ。


見世物パンダにはなったけどね、ええ、「おっかねえ」とどこぞから聞こえた声は・・・なかったことにしよう。


学園祭最終日に、全ての片付け、まあこれも殆ど業者がやるんだけど、それを終わるのを待って夜18時から今回初めてお疲れ様パーティーをホールで行った。


ぶっちゃけて、はちゃめちゃで、何でもありなそれは楽しいものになった。


うん、何ていうか学年の垣根が取り払われた感じだった、基本ノリがいいのね。


はじめは参加している3年生が浮いていた感じで、2年はもともとあっさりしていたから、すぐに1年といい感じになったんだけど、それをみかねた3年生とうちの1年の有志が、急に舞台に上がってコントをはじめたの。


うちの学園のブラックジョーク連発の、それも私はどんな鬼ババ?って感じの奴、実名いろいろポンポン出て、初めは引いていた皆だけど、はたからみたらそんな感じかもって気が付いて、そしたら、そのうちクスクスから大爆笑になって。


そんなもんなのよ、うちらまだまだ子供だもん、それからは無礼講もいいとこで、うん、はじめてこの学園好きかもって思ったの。


2時間半くらいで解散になって、それぞれが迎えの車に乗って帰ったり、それに便乗してそのまま遊びに行くという人もいたけど、翌日から学園祭の代休に入るのもあり、私もテンションあがったまんま沢山の人と抱き合ってバイバイした。


まあ、そんな楽しい気分もガンちゃんからの迎えの車に乗って30分くらいで消えちゃったけどね。


何でかって?


そりゃあ現在、絶賛逃亡中だから、パーティードレスのままで、私。


今夜の「黒ユリ祭」のために、レイちゃんが作ってくれたドレス、凄い優雅で濃紺のロングドレスなんだけど首の一番上まで繊細なレースで覆われて手首のとこもなんだけど、それが自分でも驚くくらい似会ってて、グフフって感じで帰りもご機嫌でいたんだけど、これ逃げるのには適してないのね、まさか裾を持って駆けるなんてレイちゃんも思ってもみなかっただろうけどさ。


学校から車で帰ってる途中、大通りが大渋滞で、どうやら事故処理中らしくってね、それで迂回路に入ったんだけど、片側工事のとこにまた出くわして、ついてないことに、そこで前方の車が故障したらしく、うんともすんとも動かなくなって、私の乗る車も自然立ち往生してしまったの。


私は別にぼんやりしていたからいいんだけど、さすが初めての学園祭で大忙しだったからね、急いで帰る必要もなかったから。


それでぼーっとして、うつらうつらしてたら、助手席にいた迎えの近藤さんが緊迫した声で私に座る位置を中央に移動してくれと言ってきたの。


何事かと思ったら、車に近づく人達が見えてきて、その人たちが車の傍までくると、車のタイヤに何かしてるみたいな音が聞こえてきた。


変だと思って私もすぐ携帯でガンちゃんに連絡したんだけど、電波がなくてつながらなかった。


近藤さんも、おかしい、携帯がつながらない!と運転手さんに話しかけていた。


近藤さんは、


「透子様、大丈夫です、この車は特殊車両ですから、ご心配いりません。」


そう言って冷静に運転手さんに車の状態を確認させ、前が進めないなら後ろへ車をぶつけて退路を確保しようとしたんだけど、結局車がスムーズに動かず思うようにいかなかった。


さっき何かタイヤにされたのが関係してるみたい。


車に備え付けてある非常用無線を使い近藤さんが連絡していると、窓ガラスをガンガン叩く音が聞こえてきた。


これって、結構怖いもんよ、音って想像力をかきたてるんだってわかったわ。


窓ガラスはスモークで外からは見えないんだけど、フロントガラスからは見えるから、そこからこちらを見る人が、顔の半分近く帽子を深くかぶっていて、その影でどんな人かはわからないんだけど、シロなみに鍛えられたがっちりした体形の男の人が私を見て獰猛に笑ったのが何故かわかった。


近藤さんが大丈夫です、と私を落ち着かせるよう何か話しかけてきたけど、私はちゃんと聞いちゃいなかった。


だって私を見て確かに獰猛に笑ったんだもん、私狙いかもしれないってわかったから。


私はフロントガラス越しに私を見て笑った男に、震える姿なんて見せたくなくて、震える手をぎゅっと握りしめ、毅然と顔を上げ、私のできる最上の笑顔で微笑んで、そして冷たく睨み据えてやった。


驚いたような気配で私を見る男に向かって、私は決して目はそらさなかった。


近藤さんが非常用無線が発信されましたし、窓ガラスも割れる心配はありませんから、そうゆっくりと私が怖がらないように説明してくれた。


さっき聞いてなかったのわかったんだ、ありがとう。


ところが驚いたことに、襲撃してきた奴らは、ここで工事をしていた人間とグルだったようで、工事用のブルドーザーを2台、私の乗った車に向けてきて下から車ををすくい上げようとした。


徐々に上がりゆく気配に、彼らが下から持ち上げて車を落とす気だとわかる。


いやいや、私、スプラッタ関係も貞子関係以上に苦手ですから、やめてよねぇ。


近藤さんが声に緊張を乗せてすぐさま私に声をかける。


「透子様、私が声をかけたら思い切り私のいる側のドアを開けてお逃げ下さい。すぐ助けがまいりますから。ご安心下さい。」


私はうなづくのはやめて、わかった合図に助手席側に不自然にならぬよう転がる感じで移動した。


「さあ!大丈夫です。今です、行って!」


その合図に思い切りドアを開け、ドアの周囲にいた男をよろけさせ、身一つで綺麗に飛び出し毎日の朝練で鍛えた護身術で無防備に近づこうとする男どもを一人、二人とかわし、バスケで鍛えた自慢の脚力を舐めんなよ、と思い切り駆け出した。


横目で見ると近藤さん達が私が逃げる方を背にして戦っているのがチラっと見えた。


私はドレスの裾をたくしあげ、小柄な私に有利であろう路地裏を探して駆け出した。


あの頃、あの放浪の時間で培った路地裏の津々浦々を踏破したおのれのカンを信じて、迷いなく路地裏に私は無事駆け込んだ。


不思議に恐怖は感じなかった。



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