第26話
正式に黒ユリ会がカメリアメンバーズにそのままシフトされ、元々学園祭はうちら黒ユリ会にまかされていたから、できる子の委員長達にそれはまかせて、私は黒ユリ館の私室で暇さえあればのんびり過ごしている。
カメリアメンバーズになったから、どんなもんかとカメリア専用の部屋のぞいたけど、豪華なだけで全然癒しのない空間で、結局そこは私専用の物置として活用することになり、ホラ例のいらん品々を運ばせてもらった。
あそこ人の気配ないうえ熊のはく製とか置いちゃったから、絶対に学園の都市伝説となるの目に見えてるよね。
私のせい?知らないわ。
今日も今日とてお気に入りの私室でのんびり好きな小説読んでいると、シロがおつかいできた。
シロは東洋系でも中東の血が入っているらしい黒髪、黒目の鋭い容貌で、なおかつガタイもいいのも相まって、学園生から「大鷹の君」と呼ばれている、笑っちゃうよね。
まあ、ここ若い男少ないから、はっきりいって、ワアワア騒ぐいいおもちゃになってる。
ちゃんと皆自分の家やもろもろの現実を知っているから、ファンタジーとしてソウやシロにワアワア言って遊んでる、ね、かしこいでしょ。
シロは黒ユリの私のこの部屋にくると、何故かいつも天井の一角をみる、なんでだろ?
お願い、毎度毎度、止めてって感じよ。
私、貞子関係苦手なんだよね、今度塩盛っといた方がいいのか聞いてみよう。
シロは天井をいつものようにじっとみて、それから最近私がはまっているヨーグルトを私におもむろに渡す。
「シロありがと。」
そう言うと、私に頭を差出しナデナデを催促するため、身長180超え、体重も100キロは超えている、いかにも鍛えてます!な体を一生懸命にかがめてくる。
私がよしよしと撫でてやると、それはそれは嬉しそうに、またソウの元に帰っていく。
この間一言もしゃべらんけど・・・。
私シロの声聞いた事ないんだよね、ほら、相方コロだからコミュニケーションの仕方はアウンの呼吸のみ?
そのシロはもうじきロシアに状況を見に行く為一度学園を離れる、ソウの命令で。
またまたしばらく会えなくなるので、毎日学園内でもこうしてロシアに行くごほうびにここにくる。
私はシロがロシアで何をしてくるのかは関心はないけど、ソウがこうして、おかーさんに甘えさせる事許す事で察するに、どうせロクでもないことだとはわかる。
今回のロシアプロジェクトが、ガンちゃんの組織のトップの方の覚えが良いらしく、ガンちゃんが組織の3人の理事の一人に格上げになるらしいと聞いた。
面白くないのは、ワクを追い出される人間で、九州統括部長、まったくヤのつく人の組織の名称じゃないよねぇ、これ。
その九州統括部長のなんとかという人の組が、ロシア組織にちょっかいをかける動きがあるらしい。
そんでソウの父親である若頭直轄の組の人間と、シロがロシアに行く事になったんだよね。
今度ガンちゃんに言ってみよう。
おどろおどろしい名前の組ばかりだから、身内でもこうして争うんだよ、〇〇系〇〇組って。
ほらサクラ組とかスミレ組とかにしたら、なんか喧嘩しずらくない?早くトップになって改名してって言ってみよう。
学園は10月に入ると学園祭に向けて午後の授業はなくなり、来週の3連休にある学園祭のムード一色にそまっている。
各学年で合同で行われる催しは喫茶コーナーが2つに、体験コーナーが2つ、展示コーナーが1つと決まっていて、それぞれ内容は自由だけれど、殆どが業者が入って準備するので、学園祭とはあなどれぬ本格的なものばかりだ、このブルジョワどもめが。
私達1学年は例のレストランを経営しているお母さんプロデュースの元、イタリアンカフェと飲茶カフェをやることになっている。
ヒラヒラレースの踝丈のドレスのイタリアンカフェとチャイナ服も豪華な飲茶カフェのメイドさんが登場するんだよ、ふふっ、マジ本物のお嬢たちだよ、みんな萌えるがいいよ!
私は学年の催しに参加せずに、学内生用の初日と翌日の家族専用日のそれぞれ一度の見回りと、最終日の一般公開日の午前、昼、午後の計3回の見回りがある。
やってらんないよね、猿回しの猿じゃないんだから、それを聞いて私が文句を言う前に、にっこり黒く笑う委員長の顔を見て、私が綺麗に両手を上げ白旗をあげたのはしょうがないよね。
だって、カメリアとしての書類仕事も、代表印をつくまでだけにして持ってくる委員長に私が逆らえるわけ絶対ないもんね。
学園長でもあるソウは昨夜、例の如く上にきて、
「舐められねえよォーにしねぇとなあ!」
と恐ろしい言葉と共に、来賓リストに〇と☓をつけていた。
かわいいワンコ達がムーミンを見て、フローレンの花冠にうっとりしているというのに、なんで飼い主がこのバカなんだろ。
うん、よしよし、今度花冠作ってあげようねぇと思った私に、ヨウちゃんがこちらをすかさず見た。
何でわかるかなあ、OK、OK、ヨウちゃんのもちゃんと作るよ、そう目で答えた。
このソウの舐められてたまるか発言に、珍しく今夜はうちにいたガンちゃんが、
「あたりめぇだ!てめえもいつかキョー同様俺の補佐につくんだ、舐められるような真似しやがったら承知しねえぞ!」
とハッパをかける。
そのあとさんざん2人で盛り上がっていたのはいいけど、只のお金持ち学園の学園祭だよ、そこんとこわかってんの?
ちなみにうちの保護者ズは学園祭立ち入り禁止だ、これだけは頑張って阻止した私はえらいと思う。
まあ、代わりにいろいろおねだりをかなえる事になったけど、目の前の惨事は回避した事には違わないもの、私は私を褒めてやったよ。
ちなみにソウが☓をつけている来賓は、新学園長の挨拶周りにきた中で気に食わなかった奴で「地獄を見せてやるリスト」だそうだ。
あのさぁ、あきらかに☓多いよね、それ。
そんな不穏な空気醸し出し何やら具体的に話し出した2人と、ムーミンをみて蕩けてる3人。
私は相も変わらずの時間を過ごしていた。
私はシロが帰ってすぐ、カメリア代表として学園祭期間中に私が相手をしなければいけないという委員長が持ってきた来賓の接待リストと、そのタイムスケジュールの説明を受けながら、やっぱソウにできれば学園祭前に地獄をはじめてもらうのはありだろうかと本気で考えていた。