第22話
私の初の女子会は、恩田徳子さんという黒ユリ会では委員長の補佐をしている子の母親が経営しているというレストランで行われた。
気楽なコース料理で、和洋まぜたものだった。
なかなか予約が取れないらしいが、鴨肉のフォアグラのせと、特大はまぐりの塩焼きが特に気に入ったので、ユキちゃんに早速帰ったら報告て、いつか作ってもらおう。
広い店内は6組ほどしか入店できない作りになっていて、全て予約制で本当にゆったりと2時間ほどの食事を楽しめた。
デザートのケーキを、それも数々のおいしそうなそれを、サービスです、と持ってきてくれたので、遠慮なく別腹を発動して2個目のそれを、おいしい紅茶で頂きながら、これからの予定をどうするか話し合っている。
まだ20時近く、夜はこれからよ。
う~ん、久しぶりの夜遊びにワクワク感満載。
ふふ、だ~れが21時に帰るかっていうの、全然外に出なかった反動か、私はオールする気満々よ。
みんなお腹いっぱい食べすぎて、これは少し動かなきゃって事になった。
そこで、梁間さんが、そう言えば黒ユリの子たちが最近はまってるスポットがあるといいだした。
何やら怪しげなのがいいと、皆で誘い会っては、そこでちょい悪気分を味わっているらしい、と。
クラブだと聞いているが、そこは踊れるらしいしどうだろう、行ってみないかと興味津々で話してきた。
ほほう、ちょい悪とな。
黒ユリ上層部としてはどのような場所か知るべきだ、との黒い笑顔のもっともらしい意見の元、委員長が早速誰かに電話して場所を聞き出していた。
早速タクシーを呼んでもらい、総勢12名でその「アーバン」なるクラブに遊びに行く事になった。
おっとメール、メール、忘れるとこだった。
「今から委員長達と食べ過ぎたので、食後の体を少し動かしにアーバンという所にいきます。」
うん、間違いじゃないよね、送信っと。
都心の繁華街にあるそのクラブ・アーバンは、見た目は普通のクラブで入口にいる黒服の人もまあまあそれなりな感じだった。
店内に入ると、もう一つのガラスのしゃれたドアがあり、それとなく中が見えるようになっている。
あちゃあ、一目で黒ユリの子がどこにいるのかわかるわかる。
着ているものから持っている物、その雰囲気が少しどころか浮いている。
このクラブで遊ぶには、この子たちじゃあ店としていい迷惑じゃないのお。
まっ、でもこうして通ってるって事は、お金を落とせばいいってスタンスなのかしら?。
店内の他の人間をチラッとそれとなく見てみると、キョーちゃんに近い匂いのする男の人や女の人が沢山いた。
私が最後にガラスのドアを開けて入ると、その両側に委員長達がすかさず綺麗に並んで待っていた。
そして、フロアーの中央に近い所にいた20人くらいの黒ユリの子たちが私達に気づいて慌ててこちらに向かってくる。
何、何、何!まさかよねえ、お願い、謝るから、ホント謝るからそれだけはカンベンしてよ~。
私の心からの叫びはむなしく潰え、例によって子猫ちゃん達が場にそぐわぬ上品なしぐさで、優雅に膝を折り、軽く頭をさげながら、挨拶をしてきた。
「ごきげんよう、黒ユリ様。」と。
・・・終わった、ふっ、たった店内に入って数歩で終わった・・・。
いいともさ、こうなったら笑われてなるものか!と、ギッと気合いを入れて何事かとこちらをみる店内を見渡す。
私は空気が読めない、読めない子、心の中で涙を流しながら、そうよ、マリー・アントワネットの「お菓子を食べればいいのに。」に匹敵するような空気を読めない子になるのよ、いや、もうなるしかない!
私は、優雅に「ごきげんよう。」と答え、皆が私を嬉しそうに案内するフロアを女王然として横切った、もちろん心で泣きながら。
オールはなしだな、21時すぎには、ちゃんと迎えに連絡して、大人しく乗って家に帰ろう、そう思った。