第14話 現状
ちょっと短いです。
何やかんやと私とヨウちゃん以外忙しい男どもを横目に、まあ夏休み最後に設定されている1週間の休暇に向けてみんな頑張ってるからなんだけど、寥先生が中国に帰ったかわりにきた劉先生も一度帰国というので、私はお稽古事以外は日がな1日エステ三昧になりもうヌベーっとお前はカタツムリかってくらいな状態だった。
私、必要がない限り全然外に出ない生活がオッケーみたいで何故か皆それを喜んでいる。
ゴロゴロしてると、それぞれ何これ?的な濃いちょっかいをかけてくるのがうざいけど。
まあ例のファーストキスは鎖をかけて重石もつけて深い深い奥底に沈めてあるというか忘れたつもり。
それが何故かセカンドを練習と称してテイちゃんにされた時から、最早当たり前に皆キスをしてくるからキスすることに驚いてる訳じゃないけど、ゴロゴロ状態の上からかぶさって甘い顔と声で、どこの新婚さんかって事してくるのは、ちょっとねえ、いただけない。
「貞操の危機を感じる!」
と今朝の食事の席で皆をびしっと糾弾してみたが綺麗にスルーされた。
彼氏もいないのに何かいろいろと慣れるなんて、ないない、ないから。
だってそうでしょう?
私の理想の交際相手は誠実で私以外は絶対見ない人で、お互いが初めての相手がいいと本気で夢見ているのに、キスとか、ほら・・・いろいろに慣れてるのなんか、絶対違う気がするもの。
そう私が言えばテイちゃんがニヤリと笑い、だから仕事明けの大人組のエロさ半端ないんだってば、それでゆったりとけだるそうに私の傍まできて椅子ごと背中から抱きしめて、そして耳元で優しく囁くのは反則だと思うんだよね。
「なあ、透子、俺達はお前以外見ないのは知ってんだろ、俺達が相手で何が不足だ?俺達はお前に夢中なんだよ、お前だけだ」そして耳にもキスを何度もする。
それをみながらユキちゃんがエプロンを外していってきますの挨拶がわりにキスをしてくる、そして言った。
「透子、はじめて同志じゃ性の深淵を極めるどころか、下手したらスプラッタで全然よくないんだ。統計でもはっきりしてる。昔はともかく、今の俺達ほど透子一途のカワイイ男はいないだろ?何の不足もないよな」
そうにっこり笑って私の頬をその外科手術で神の手と言われる繊細な指でツツっと撫で上げる。
何なの、これ。見回すとヨウちゃんを筆頭に雲行きが怪しくなりそうな気配なので、空気を読める子の私は両手を上げて素早くギブアップした。
私、深淵なるもの苦手宣言してもいいかな?いらないしありえない。
そりゃあ、キスとか体中にされるキスとか・・・慣れたけど、深淵は絶対いらない。
私の初恋は悲惨なものだったけど、だからこそ夢見るセカンドラブは私の目標なのに。
この私の身内のせいでもしや難しいのではと、はたと今気が付いた。
えっと、夢見る王子様=誠実な純情ボーイね。
その王子様に敵対してくるのが、暴力団のトップ+水商売の神様+経済界のトップ+大病院の後継者+やんちゃの王様、それに全てを牛耳る保護者だ。
うん・・・、未来の私の純情ボーイにはちょっと無理かもしれない、というか無理だわ、これ。
どーすんの透子!まだみぬ王子様の為にも、何とかせねば、私にセカンドラブは来ないの決定だ。
けれどこの私に打てる手がないはずはない!と従順に手を上にあげながら「皆に逆らいませんよ~」とアピールしつつも心の中ではあれこれ未来の夢の王子様の為に方法はないかと考える透子だった。