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君のままに美しく  作者: そら
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第12話 初勝利

 試験も終わると、連日黒ユリ館につめる日が多くなった。


 私の望んでいた自由登校、そのまま夏休み入るぞ!プランは、対カメリア戦勃発によって消えていった。


 いや、井上委員長達は、私が無理にここにいる必要はないと言ってくれてるんだけど、何せ彼女たちの燃え具合が半端ない。


 苦節十年!なめんなよ!!的な世界なのだ。


 さすがの私も最初の火をつけた責任あるものねえ、下にいく元気はないけど代表室くらいには、と、こうして登校している。


 この黒ユリ館1階はテスト終了日にはどこの選挙本部だっていう状況に急ピッチで整えられていった。


 2学年、3学年の各自の名前やら親の職業、家族構成まで書かれた大判の紙がそのクラス毎に張り出され、そこにいろいろな情報を皆で調べ書き足していっている。


 リコールの鍵になる2年生に関しては、より詳しい情報をとみなそれぞれのコネを駆使し特に細心な注意を払って集めていた。


 親の会社が東洋リサーチという子が持ってくるそれは、大変事細かに集められたものでその情報を主に黒ユリ会側に取り込もうと、大量に用意された携帯を片手に皆どこの勧誘員かというくらい、はじめは電話を、というか留守電を通して2年に接触をはかっている。


 中には3年の先輩が自分の婚約者とよろしくやってる、なんていう、いらぬものまで発覚して余計1年生を燃え上がらせていた。


 名前の前に黒い花がついているのは1年についたもの。


 灰色はその色通りに中途半端でいる者たち。


 真っ赤にバッツケされてる者はカメリア会支持。


 今はいかにその灰色を黒くするかと皆で熱く語り合っているところだ。


 金持ちのやり方はカメリアもうちもえげつない。


 親の会社の力関係、取引の有無とその上下関係、それらがはっきりと黒と赤のバッツケの違いになる。


 灰色の者は純粋にその影響を受けぬ者たちだった。


 ただその灰色の多くがカメリアメンバーズの庶務をしている結城古都先輩に対しては一目置いているという状況だった。


 私が入学式で一人だけ意識したあの先輩だ。


 カメリアでも立ち位置が特殊らしく、カメリアメンバーズがほとんど一緒に行動しているのが多いのに対していつも一緒にいるとは限らないらしい。


 また、1年が2年生に接触してわかったのはカメリアメンバーズに2年取り込みの動きが未だ見えない事実だった。


 よほどの学園代表としての意識があるのか、それとも何か策があるのかこれも皆で思案中だ。


 何はともあれ、おとーさんバージョンのヨウちゃんを発動しあの最凶おバカコンビを押えてもらっているので、現在私は気楽に子供の喧嘩を落ち着いてやっていられる。


 ヨウちゃん、万歳だ。


「もうムーミン一緒に見ないからね!」攻撃は確かにきいたな。


 そりゃあ、それぞれの親が後ろに控えているのが事実だとしても命のやりとりよりマシだと思うんだ。


 今の所はうちが優勢だけど、どう灰色が転ぶかだなあ、そう呑気に差し入れのケーキをおいしくいただきながら考えてた所に固い表情で委員長がお客を連れてきた。


 なんと、くだんの結城先輩だった。


 委員長には残ってもらって、さて、敵の本陣にわざわざ来る御用は、と挨拶もなしに話を振る。


 座れ、なんても言ってあげない、この人は敵だもの。


 結城先輩は、今回のリコール騒ぎ以来、3年生の特にカメリアメンバーズ関係の親の所が大変になっている、と私達をみつめた。


 ちらっと委員長をみると、


「確かに私達の親が手助けしてくれているのは事実ですが、カメリア関係全部に影響を与えるほどの事ではありません」


「悔しいですけど、せいぜいの所うちの井上でも数家が限度です。ですから、何がおっしゃりたくて、ここにいらしたかはわかりませんけど答えられるとは思いませんが」


 とそう答えた。


 それに対して、つらつらと結城先輩は話していく。


 まずカメリア代表の柏原家では、トップの交代劇がおき代表の柏原孝子さんの本家一族が失脚、分家の一つによりその地位を追われ更に横領の罪で告訴準備がなされている。


 副代表の相馬順子さんの所は常務取締の長男の不倫認知騒動がおき、それを発端にいろいろな事が明るみに出てそれを外に漏らさぬため上へ下への大騒ぎ状態。


 そう言って、他にも事例を挙げてこれだけ一斉に悪い方に動いていけば、自然、目はこちらに向けるのは当たり前じゃないかしら?とにっこり笑って言う。


 委員長も初耳らしくじっと私を見る、え?なんで。


 私は頭の中で、今回やけに静かだったレイちゃん達を思い浮かべた、うん、了解です、静かな伏線がいた、そういう事ですね。


 まあ、とりあえず帰ってもらおうかな、もう一つケーキ食べたいからね、邪魔だもの。


「何がいいたいのかしら?少なくてもうちで困るような事はその話を聞いても何一つないわね」


「まさか会社やそこに働く人たちを考えろ、とかおっしゃるつもり?私たちに関係ない人が学園を去ろうが路頭に迷おうが知ったことではないわね。おわかりだろうけど?」


「少なくてもあなた方の親は私を調べたはずよ、それに私に突っかかる子猫ちゃんがどうなったかも知らないはずないでしょう?」


「それなのに私がリコールを求めた時に、娘たちに引く事をさせなかったのは愚か以外ないと思うの」


「・・・私、弱肉強食って好きよ。私の足でも舐めてみる?」


 そう挑発して言った私になんと結城先輩はクスクスと笑いはじめた。


「違う違う、悪いね、ちょっと確認したかっただけ」


「うちはね、おかげさまで輸入玩具の卸会社が倒産しそうなの、まあ、時間の問題ね」


「それでお礼を言いにきたの。私に自由をくれてありがとう、って」


 どうやら結城先輩は妾腹の子で、美しく育ちつつあると確認すると、ていのいい会社の駒として生きる事を求められ、それだけの為に引き取られたと言う。


 弟がいるためいいなりになって生きていくしかないのかと諦めて生きてきたのに今回の騒ぎがおきた。


 自分はこの学園を去るが弟と二人あの家ときちんと縁を切り母方の祖母の元に数年ぶりに帰ることができる。


 自分の力で自由に生きることができる感謝を言いに来ただけだと綺麗に笑って帰っていった。


「私も自分と自分の大事なもの以外興味がないんだ、どうなろうと」


 そう笑って颯爽と帰っていった。


 その後どういう事だと委員長に絞られたが、結局、短期決戦は最良の道だしとごまかしつつ黒ユリの勝ちだと下の階に報告にいった。


 ドアを閉める時「靴を舐めましょうか?」と笑いながら私に言うので手でしっしと委員長を追い払ってやった。




 何はともあれ夏休みを待たずにカメリアメンバーズは自主的にその座を降り夏休み明けに新カメリアメンバーズの選定投票が行われる事が決定して、それまで1年生ではあるがしっかりした組織である黒ユリ会が代行を務める事に決まった。


 最初に喧嘩を売ってきた山田先輩の流派は、この件が広く知れ渡ると門人離れが急速に進みこの先一気に経営が傾くことになる。


 また委員長の従姉妹である書記の吾妻女史は同じく転校を余儀なくされた。


 この二人はあの購買での騒ぎの翌日直接井上委員長が従姉妹のクラスにまで赴き、大層な喧嘩を売って最後に委員長が高笑いをしたらしいが、内容を教えてと言っても黒く笑って教えてくれない。


 結局私の望みの自由登校を数日で取り戻し、私は念願の夏休みに突入した。


 ちなみに伏兵のレイちゃんに何をしたのか聞いてみたが、それぞれ得意の分野で人間を幾人かたぶらかしただけ、だそうだ。


 それを聞いてガンちゃんとキョーちゃんが地団太踏んで悔しがったのは言うまでもない。


 二人がこんなに爽やかに見えるなんて・・・だから大人組は、そう思う透子がいた。









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