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君のままに美しく  作者: そら
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第2章 第28話 西垣高校②

はい、すいません。

完結はしますが、ゆっくりとですね、本当にゆっくりと更新していきます。

石は投げないでくださいね。

読むのは好きなんですが・・・、時間がなくても何故か寝ないでも読むんですが。

ほ、ほら石は投げないで下さい。

 私は優雅に微笑んで、その濡れた椅子をもう一度見た。


 そうして、その教室で、かたずを飲んでこちらを意識しているくせに知らんぷりをしている愚かな生徒達を見る。


 私は少し眉をあげ肩も少し持ち上げるアクションをおこすと、何事もなかったかのようにそのまま入ったばかりの教室に背をむけ

 そのまま教室を出ようとした。


 そこに担任であろう若い男の教師が丁度はいってきて、教室を出ようとする私に不信な表情をし、次に教室を見渡し何がおきたかをすぐさま把握した。


 担任らしいまだ若い男は私が出ようとするのを慌てて声をかけてくる。


「あ、ちょっと待て、すぐ片付けさせるから。」


 そう言ってため息をつきつつ教室を見渡した。


「お前ら、誰がやったか知らないが悪戯もほどほどにしろ!ほら、紹介をするから。本当に何やってんだ。わざわざ来てくれた交換生に。もう少し考えろ」


 そう言いながら私の方を見て、


「いやあ、悪いな、うちのクラスの奴ら悪気はないんだ。あ~、なんだ、今すぐ拭かせるから、ちょっと待ってくれ、本当に悪いな」


 そう言いながら近くの生徒の名前を読んで拭くようにと声をかけ、


「本当に高校生にもなって困った奴らだけど悪い奴らじゃないんだ」と言いすぐに私に席に着くようにと言った。


 それにクスクス、クスクスと複数の女子生徒の笑う声がかぶる。


 私はまずこの若い担任に言い聞かせるように、この私には珍しく穏やかに話しかけた、穏やかに。



「その必要はありませんわ。私は帰りますもの」



 それを聞いて若い担任がなんでだ?という顔をしながら、



「いやあ、本当にこいつらには悪気はないんだ。すまないな。来てそうそう嫌な気分になっただろうけど、ちょっとな、軽い悪戯だと思って許してやってくれないか?」



「あ~、お前らわざわざ来てくれた交換生に、こんな悪戯しちゃダメだろーが、ちゃんと謝れ~」



 そう言って爽やかに笑いながら私にすまんな、と軽く頭を下げてきた。



 やはり私には「爽やかくん」という呪いがかかっているのだろうか?



 脳裏に浮かぶのは姉の彼氏だという、名前も顔も忘れてしまったが、ニカッと笑う白い歯の馬鹿な男。



 私はもう一度若い担任の男教師に向けてきちんとわかるように静かに言った。



「ええ、私はここに交換生代表としてまいりました。それをお忘れでなくて安心しましたわ」



「ここの経営者である西垣氏は先見の明があり、早いうちから我が校へ姉妹校のオファーがなされておりましたの。加えて私が代表を務めている黒ユリ会にもとても協力的でしたものですから、私が姉妹校の許可を学園長に出しました。」



 私が許可を出したと言うと、そんな馬鹿な事があるかという顔をする教師。



 私はふっと笑って、教室の人間ごと教師を冷えた視線で射すくめた。



 この視線は委員長いわく「もはや人外にしか見えませんわ。10代の女子としてはさすがにお考えになられた方がよいと思います」



 そんな事を真顔で言われた私は納得などできないけど万が一にも、うん、ちょっとよ、ちょっとだけその可能性も考えて、その日家に帰ったら目の前にいたガンちゃんに私のお気に入りのひそやかな微笑みを試してみた。



 それを間近で見たガンちゃんが、



「流石だな、ほれぼれすんぜ。舐められちゃあしまいだからな、透子。目で殺すのは大事だぜ」



 そう言って気持ち悪いくらいデレッとしてうんうんうなずいて私を見つめてきた。



 ・・・もちろん即効でこの私のひそやかな微笑みは封印した。



 それを出させるとは、恐るべしと褒めるべきかしら?



「ここは進学校と聞いておりましたが、私の情報不足でしたのね」



「私が交換生としてこの教室に通うという事は、この高校でも代表とされるクラスと思ってよろしいのよね。何をしたかの認識も思いつかないなんて、レベルというのもしれるというものですわ」



 私のこの担任さえも含めて馬鹿にしたかのようなセリフに声をあげようとした教師を、さらに少しばかりの怒りを上乗せした視線できちっと黙らせた、百年早い!。



「この私に許可なく声をかけないで下さらないかしら?あまりにも愚かすぎて相手にもできないものですから黙って去ろうとしていましたのに」



「まあ、けれど勿論そのまま帰ってもやることは同じでしたけど。ちょうどいいわ、連絡させてもらっていいかしら?」



 そう言って私は我が学園長に交換生としてやる事はないようですのですぐさま学園に帰る旨と、姉妹校の取り消しをすぐ発表するように伝えて電話を切った。



 それにありえないという顔をして「冗談、子供が、嘘だろ、何なんだ」



 という教師に、今度はにっこりと微笑んで言ってやった。



「残念ですけれど、ここの高校に未来はありませんわねえ。我が校の新たな姉妹校として注目されておりましたのよ。それの突然の中止と私の即座の帰校、それだけで理解するものは理解しますもの。利に聡いものは、我が黒ユリ会とそれに付随する力を知っておりますの。私はちゃんと学園で報告いたしますわよ。何があって私が帰る事になったのか」



「軽い悪戯?面白い事をおっしゃるわ。その軽い悪戯で皆さんだけでなく全ての在校生の未来は結構きつくなりましてよ。ここの高校の卒業生も、ここの名すべてに関わるもの全てに迷惑をおかけした実感はあるのかしら?」



 ぽかんとする顔を見て、本当に愚かだとつくづく思った。



「何も思いつかないのでしたら教えて差し上げますわ、一番簡単な所から。まずこの学校からの大学への推薦は難しいものになるでしょうね。各大学も経営というものがあるでしょう?大学卒業生の進路などもとても大切な事の一つよ。でも、ここの高校の卒業生という事が目に止まれば、まず一流どころは二の足を踏みますわ。勝手に先読みして恐いものには触れない、という事ですわね。私が言うのもなんですけど、大人って本当に怖がりですわね。勝手にお化けを作り出してその妄想に怯えるのですもの」



「ああ、それに経営者の西垣氏や従業員の皆様には気の毒ではありますけれど、経営もゆっくり傾きますわね。いずれこの高校さえ消えていきますわ。それと・・・」



 私から次々に伝えられる言葉の数々に次第に青くなっていく彼ら。



 教師が震える声で言ってきた。



「なんでだ?たかが悪戯だ、子供の他愛ない悪戯だろうに何やってんだ。ありえないだろ!」



 それに数人の生徒からの声が、やがて大勢の声が続く。



「あんたおかしいよ」



「俺ら関係ないだろ」



「ちょっとふざけただけじゃん」



 わずらわしい声が次第に大きくあがってきた。



 くだんの教師もウンウンと同調している。



 私はやれやれとばかりにもう一度ふっ、と笑って彼らを見た。



「姉妹校の申し込みの数に対して実際に承認されるそれが僅かなのは理解できるかしら?理由もね」



「それが何故か考えれば答えはでるでしょう?」



「ここは県下トップの進学校とお聞きしたわ。我が学園と繋がるって事は将来と繋がるって事なのよ。だから厳しく選んだつもりだったのだけど、やはり書類仕事はダメよね」



「たかが悪戯?小さい事?少なくとも私は黒ユリ会の代表としてここにあるし先の未来にもいるつもり。誰にも頭は下げないし私を軽んじるなんてさせない。たとえ無知を理由にしても、それが幼い子だとしても許すつもりはないわ」



「私は私をとても大事にしているの。誰にもどのような事であれ侮られるような事は決して許さない。私には沢山の本当に沢山の人間の幸せが託されているから」



 ならば、と私を見る生徒達。



「だから私は虫刺されの一つも許すつもりもなければ、ましてやわざと刺そうとする虫など叩きつぶす、それだけよ」



 虫だと暗に言われ黙りこくる彼らに一瞥もせずこの教室に足を踏み入れた時と同じように優雅に微笑みながら、「ごきげんよう」と最後に言って本当に教室を出た。



  ・・・そこには我が一年メンバーが、うっとりとこちらを立って見ていた。



 そういえば椅子にかかった水を見た瞬間、私ってば手早く撤収メール打ったな。



  何だろう、すぐさま頭を下げる彼女らを見た瞬間負けたと思うのは。



  まあ、しかし昨日の午後にここについて、授業開始初日のホームルームの時間には帰る私って・・・、委員長の笑っているのに笑ってない顔が浮かんでくる。



 ウルウルキラキラこちらを見つめる一年を見ながら、さて誰に迎えにきてもらおうかと考えつつ寮の部屋の片付けはどうしようかとドンヨリする。



 なまじ執事さんの仕事ぶりの見事さが私の心を痛める。



 いや、やってもらって申し訳ないじゃなくて、完璧にしつらえてくれた荷物の数々をどうしろと、だ。



 基本面倒くさがりやの私だもの、自分じゃやる気なんてない。



 何しにここにきたんだろ私?



 何度考えても首をかしげる私がいた。



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