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君のままに美しく  作者: そら
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第2章  第21話  なんで?

 ソウ・・・。


 今の私を見たらムンクの叫びもかくや!だろうと思う。


 あ、あんたって、確信犯?さっきまで大人しく私の足の下で、ニジニジ踏みにじられていた癖に!


 あんたったら何てこと言ってくれたんだぁ~、しかもここでか!


 私は聞かなかったふり、聞こえなかったふりをした。


 これ以上の対処方法はないから。


 それなのにバカロンが、


 「俺も気になっていたんだ、俺が日本にいたらそんな舐めた真似はさせないんだがな。ちょうどいい聞かせてもらおうか?」


 そう言って笑いかけてきた。


 あんた、その顔の上半分と下半分、どこぞのモンタージュ写真みたいに、全然あってないよ。


 上だけみたら超凶悪ブリザードの目。


 下をみれば上品に微笑むお口。


 


 うちの保護者ズに助けを求めようと見るも、うちの保護者ズは先ほどのバカロンの「俺が日本にいたら」のあたりから、お怒りのようで一瞬にしてこの部屋の空気は真冬のエベレスト並みになってしまった。


 行ったことないけど。




 「楽しい事」につれられて中国までわざわざやってきたのに、中国にきて楽しい事あったかな?そう思い中国にきてからのこの数日を思う。


 私はこの部屋の恐ろしいまでの雰囲気に、バカロンの控えている部下達でさえその顔色をなくしているのに、相変わらずそんな空気をものともせずに嬉しそうに私を見つめているコロとシロに、本当にあんたたちは可愛いねぇ、とワシワシと頭を撫でてあげたくなった。


 しないけど・・・・ここで心の赴くままそれをやっては、何か大変な事態が更におきそうだから。


 私は空気を読める子だもの。


 コロ達をさりげに愛でている私は、そういえばうちの保護者ズ、あの料亭の時以外私の人魚姫と海の王様に関して触れてこなかったな、そう思った。


 ソウは自分の言った事でのこの空気を全然気にしてもいない。


 それどころか楽しそうだ。


 あんた覚えておきなさいね!乙女の恨みは怖いんだからね!


 バカロンが「まあいい」そう言ってその空気を破った。


 いいなら言うな!このおバカ!私が思ったのも当然だよね。


 私にできる最低あんた!の視線を送っときました。





 「まずは飯でも食おう」そう言って私達を案内したのは中庭だった。


 建物の中に太陽の光を浴びる吹き抜けの空間が作られていて、なかなかに広いそこには芝生が植えられていて、驚くことに背の高い木も数本立っていた。


 そこにテーブルと椅子があり、バカロンと保護者ズはそのまま会話もなく冷えた雰囲気のままそこに移動した。


 ところが芝生の上には、あのちみっこ達が世話役のオバサマ方とおもちゃを広げて遊んでいた。


 私はそれには関心がないので、ああいたのか、くらいでしかなかったけど、バカロンと保護者ズの雰囲気がそれを目にして少しは柔らかくなったみたいだ。


 おぉ!私ははじめてちみっこ達の存在に感謝した。


 さぁ、このまま頑張ってくれ、お前達!私を助けるがいいよ!


 私の心からの声に答えるかのように、その場の雰囲気が変わっていく。


 子供達の楽しそうに遊ぶ声が響き、その声に比例して無粋は止めようと大人の得意技「暗黙の了解」が発動され徐々に穏やかな昼食タイムとなった。


 保護者ズが上手に北京ダックをまいてくれ、その皮のおいしいこと、こんなおいしいの初めて!と私が声を出しニコニコ食べていると、バカロンまで作って差し出してくれる始末。


 私もお返しに皆に作ってやり、何か急激に「ほのぼの劇場」が出来上がっていった。


 何とデザートの頃には、「全てなかったこと」風にまでなってきた。


 しめしめ、めんどうが嫌いな私は良かった~、終わった~と安心していた。





 けれどそれを破るように突然の泣き声がその場に響き、そちらを何事かと見ると、ユキちゃんの子がガンちゃんのあの一回り小さな子に砂場の砂をおもちゃのスコップでかけてしまった。


 頭から砂をかぶったガンちゃんの子が泣きだした声だった。


 泣いた為に口にまで砂が入っていく、バカな子だなぁ。


 私はただそう思っただけだったが、ガタンと立ち上がってガンちゃんが泣いている自分の子の元にいく。


 早かった、それはもう。


 ひょいと抱き上げて、信じられないほど優しい手つきでその砂を落としてやるガンちゃん。


 けれど突然ガンちゃんがきて今度は人見知りなのかキョーちゃんの子がわっ~と泣きだす。


 それにキョーちゃんが同じように立ち上がる。


 キョーちゃんが自分の子を抱き上げる時、何とバカロンの子が遊んでいたおもちゃを踏んでしまい壊してしまった。




 もうわかるよね。


 何この連鎖?つられて何で泣く、お前は強いヨウちゃんの子のはず!


 テイちゃんの子はレイちゃんの子のおもちゃを取り上げてこれまたレイちゃんとこのが大泣き。


 そうして・・・・。


 それぞれ泣く自分の子を腕に抱き、にらみあう父親たち。


 その半端ないブリザードぶりは、ここに移動する前よりひどい事になっている。


 レイちゃん、それはたしかにそうだけど言っちゃダメ!


 「まったく、教えなくてもさすがですね、君の子は。遺伝子レベルの図太さですか。大丈夫ですか?2度と痛い目をみないよう、この父がしっかり教えてあげますからね。何、私の子ならば大丈夫すぐやり方を覚えます。」


 それはそれは思わせぶりにテイちゃん父子をチラ見して、我が子に聖母の如く微笑むレイちゃん。


 それにテイちゃんが黙っているわけがなく


 「ふん、お前はよくやったぜ。闘う術をもう知ってるなんざ、さすが俺の子だ。お上品ぶってるどっかの奴の子なんざぁ、これからもいいカモだ、なぁ。」


 この二人以外にも、舌戦があちこちで勃発している。


 何だろう?このカオス。


 なまじ一流と呼ばれる実力の男達、半端ないんですが。


 けれど言い合ってる事は、バカですか?でしかない。





 

 私のさっきの、このちみっこ共への感謝を返してもらおうか!


 何て性悪、何ておバカ、私は心の中でちみっこ共に向かって文句を幾つもつらねていた。




 あれ?なんでかバカロンと保護者ズが睨み合いや言いあいをやめて私を見ている。


 そしてバカロンがニヤッと笑って私に言った。


 「母親に似たんだな」と。


 え?私ってば声に出していた?え?何かまずい事言ったっけ?


 全員の視線がおまけに泣きじゃくる子供つきで私にささっている。


 えへへと愛想笑いをしてみる。


 私の愛想笑いなんて貴重なんだからね!


 けれど、「そういえば、話しがまだだったな」


 バカロンが腕の中の我が子をあやしながら私を見て言った。


 え・・・。


 


 


 

 


 


 


 

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