第2章 第20話 ほんとにもう
風邪の微熱もおさまりつつあるのに、歯痛があ!
もう月曜日から・・・。
私の辞書に歯医者はない!
頼むから~歯医者にいかないで済みますように。
というわけで、痛いのになぜか更新している私です。
な~んてカワイイの。
私は嬉しそうに私を見るコロとシロのそばに駆け寄ると、
「大丈夫ぅ~?いじめられたぁ~?」
そう言って大人しく「待て」をして撫でられるのを待つ、男のくせに北欧やロシアあたり出身の美女にしかみえないコロと、同じように迫力ある一般人にはとうてい見えない美丈夫のシロを思うさま抱きしめた。
何気にそんな甘々モードの私にすり寄ろうとするソウはもちろん、この私の乙女キックをコロたちに向かう途中でお見舞いしてあげた。
それで現在ソウの背中の上に私の右足があり、コロとシロに「良い子、良い子」をして撫でてあげながら、ソウの背中をぐりぐりしている状態だ。
ソウはそんな私を恨みがましく下から見上げ、ぶつぶつ文句を言っている。
「こいつらは俺のガードなのに」とか、「いつもなんか扱いが違うんだよな」だの、ぶつぶつ。
当たり前よ、まあ行方がわからなくなったといっても、ソウの事だから、したたかに俺様で生きているに違いないと聞いた時思ってたけど、まさかバカロンの所にいるとは思わなかったわマジで。
私はコロとシロを思うぞんぶん甘やかしてその可愛さを堪能すると、さて、と後ろを振り向いた。
真っ先にヨウちゃんを見てみる。
ヨウちゃんが首を振るのを見て、バカロンの唯一生き残った弟で日本支部をまかされているヨウちゃんでさえ、この事は知らなかったとわかる。
ソウの事なんて関心なかったからさ、今まで聞きもしなかった。
いけないな、ソウはともかくコロとシロは私のペットだもの、それを忘れるなんて、ごめんね2人とも。
ヨウちゃんがこれを知ってたならコロとシロだけは私が忘れていても何とかしてくれたはずだもんね。
そんな事はわかってるよ、大好きだよとヨウちゃんに微笑みかける。
後ろを振り向くついでに、思い切りかかとに力を入れてソウの上で回転したものだから、ソウから「グぇっ」っていう変な声が聞こえた。
で、私は自分の配下の人間を勝手にされて、どんどん危険な雰囲気になっていくガンちゃんを次に見た。
もしそれを言葉に変えるなら、超高度の蒼い炎みたいな雰囲気のガンちゃん。
冷えているようで超危険な熱さ。
うん、ガンちゃんてば、いつもその本気モードなら本当にかっこいいのに。
何でだろう?どうしてガンちゃんとこの人間ってガンちゃんはじめソウもそうだけど、普段おバカぶりしか目にしないんだろう?
遠い目になりつつ見てみると怒るガンちゃんを視線でおさえているのはヨウちゃん、さすがです。
私は再びソウを足でぐりぐりしながらバカロンを見て「いつから?」と聞いた。
バカロンは「最初からだ、どうだ、面白いだろ?」と私に私たちに普通に笑った。
この部屋は豪華な作りだし、設備も整っている。
コロとシロの足首にある長い鎖は金とプラチナでできている豪奢なもの、鎖の一つ一つに埋め込まれていつのはルビー。
けれどそれは本来の役目をなさずバカにしているようにユルユルのもので、現にシロもコロも私の視線に嬉しそうにそれを抜いて私に渡そうとする。
あぁん、何てイイコなの、待っててね、もうちょっと。
私の笑顔にブンブン頭を上下にふるコロとシロ、はぁ~癒される。
反対に私の右足の下でだらしなく伸びているソウをにらむ。
「怒るなよ~、そんな顔してっと年取ってから残念な事になるぜ」
そう言って、体重を感じさせない動きで、私の右足の拘束を上手に潜り抜けヒョイと立ち上がる。
まったく、もう少し逆らわないで反省してなさいよ、これで充分だと?むかつくったらない。
今まで忘れていてなんだけど、ここにとらわれているってわかっただけでむかつくの。
「まぁまあ、いろいろとあったわけだよ、俺もさぁ。ボスもあんときゃ俺の監督不行届きア~ンド報告もしなかった事に激怒してたしさぁ、どうすんべ、と思ったわけ」
そういってガンちゃんに嬉しそうにぺこりと頭を下げる。
あっ、ガンちゃんキレそう。
「だけどさ一番のさぁ~、考えなしはどう考えても俺じゃなくね?どう考えて違うよなぁ」
「まったく俺のいろいろ考えてた計画が台無しになったんですけどぉ~、誰かさんのせいでぇ!」
「ロシアから始まりこの世界中に散らばる国とも呼べなくなった紛争地帯の全てを裏からを支配して、うちの組でもうけを丸っと頂こうとしたのに」
「この俺様の完璧な計画、題して「「ボスいっぱい褒めて褒めて!」」大作戦どうしてくれんのよ」
やっぱりソウだ・・・・。
わかりづらいけど、ソウのガンちゃんへの忠誠は本物だ、天童と呼ばれた子供の頃からだと聞いている。
そうして着実にソウは組織の中でやりとげていった、より以上の成果を残してガンちゃんの為に、それはホントのこと。
そんな中、私の子守りでロシアから呼ばれても、ボス直々だからと私には文句を言いながらもはしゃいでいた、ガンちゃんからの仕事だといって。
本当に天才と呼んでもいいはずなのに、普通の事がまるきしわからないソウ。
女も子供もいくらでも平気で潰していく、けれどうちの屋敷のへんてつもない雑草の一部を凄い!といって大事にする、その草を誤って踏んでしまった組の人間を即殺すくらいに。
その違いがわからない。
ソウのいつも通りさに、ガンちゃんがへにょんとしてきた。
ガンちゃんの怒りも悪びれないソウを見て長続きしないようで思わずため息をついている。
しょうがないよ、ガンちゃん、ソウを地縛霊だと思うしかないよ。
ガンちゃん限定の、だけど。
私の憐れむ視線を受けて、何やらガンちゃんは嬉しそうな顔をする。
だ・か・ら・何で憐れむ視線に喜ぶのさ。
さっきのかっこいいガンちゃんカムバックだ!
ソウはバカロンに拘束されている形をとってるけど、この様子じゃそれも計算しての事だろう。
バカロンはバカロンで、この物騒な頭を持つソウをここでつないでどうする気なのか。
本当に化かし合いはこのまま私の知らない所でやっていて欲しかったよ。
ドンマイだよ。
バカロンには本当に困る。
この男の「生きる」は「遊ぶ」と同義語みたいだ。
巻き込まれつつあるのをひしひしと感じる。
まぁいつまでもうちの保護者ズを甘く見ない方がいいよ。
育てられた私の得意技が百倍返し上等!なんだからね。
私が痛い子のソウにしょうがないか、とソウの愚痴をガンちゃんじゃないけど諦めの境地で耳を流して聞いていたら、ソウのその言葉がはっきり聞こえた。
「だから、やっぱ悪いのはお嬢でいいんじゃね?そもそも浮気するのがいけないんじゃね?」と。
え?え?私ですか?