第2章 第17話 そういうこと
何故か、あのまま勢いをそがれた感じで、それぞれの膝の上に、ちみっこいのを乗せて保護者ズとバカロンは会談中。
私は、贅沢なお風呂、最早プールに近かったが、それがあるというので、そのお風呂に入りに出てきた。
本当にうそみたいに素敵なお風呂だ。
私専用に、バカロンが作ってくれたらしい。
いろんなバージョンがあるらしい、各地の館それぞれに。
ふうん、これだけでもきて良かったかもね。
ゆっくりと大きなドーム型の天井には、世界各地の美しい風景が見渡す限り、ヒーリングの音楽と共に映し出されていた。
手を伸ばせばホンモノのような大自然の風景が、時間と共に色をかえ景色をかえ映し出されていく。
大きなお風呂には、ゆっくりと寝れるような作りの不思議な感触のベッドのようなものが作られており、私はそこに横になってドームのような天井を見つめる。
他にも座れる形のものや、高圧力の水流が出てくる場所もある。
偽物でも最高のものがそこにはあった。
あそこの育児室では、あきれた事に、それぞれの父親バージョンのも1日に数度上映?されるらしい。
私は絶対みたかないわよ、そんなの。
自分のだけで、お腹いっぱいだもの。
何度思い返しても、ありえない。
けれど、どんなに怒りをぶつけても、バカロンには意味がない、そんなことは知っている。
私は気持ちが、どんどん冷めていった。
ばかみたい、ばかみたい、とつぶやいていた。
何がバカなのかは意識していなかったが、なぜかここに一人だ、そう心から思った。
ちみっこいのは確かにちゃんと人として存在してる。
その父親たちも、母親も確かにいる、私達だ。
けれど、膜1枚隔てたものを見るように、あのスクリーンを見るような感覚から抜け出せない。
少し、少しだけナーバスになっているのだろうか?
突然、現実にいる子供達の存在に触れて。
ちょっとだけ悪いとは思うけど、う~ん、やっぱり私はあの子たちに何の感情もないみたい。
うん、理解した。
私には、関係ない、そういう事だ。
ただ、お互いの目論見にのっとってできた子供達。
私はやっと思い切りお風呂で遊びはじめた。
お風呂の底は、綺麗な蒼色のタイルが敷き詰められていた。
偽物の景色はもう厭きた、いらない。
私は揺れる透明なお湯を通して、じっと綺麗な蒼に見入る。
ユラユラ揺れる目の前の蒼。
あぁ、何てきれいなんだろう。
私の意識は、あの海の底の部屋に戻っていた。
おんなじ、おんなじ蒼。
クスクス笑いながらいつまでもいつまでも見ていた。
やがて、懐かしい気配にうっとりと溺れていく。
私の海の王様も人魚姫も、いつまでもいつまでも私を離さないらしい。
そう思うと、そのお互いの執着に嬉しくて更に笑い声をあげた。
決して私以外はいらないと、海の藻屑に消えたけど、それは海に溶けただけ、消えたわけじゃない。
長風呂に心配した世話役の女性が様子を見に来たため、私と海の王様の短い逢瀬は終わりを告げた。
けれど、心がゆったりとした私は、何が嫌だったのか、ふいに理解した。
あの時、私は保護者ズに言ったはず、私が一番じゃなきゃ嫌だ、と。
みんな覚えているのかな、あの時お腹の赤ちゃんを始末しようとした事を。
私をつなぐもの、そう言ったけど、本当にそうかな。
私はどんどん冷めていく。
お風呂上りの体も、心も。