第2章 第16話 それ、違くない?
うちの保護者ズと李さんたちは、絶賛ガンつけあってます。
バカ、バカなの?
私の足元のこのちんまいの何とかしてくれる、っていう私の望みなんて、そんなたいそれた事じゃないはず。
それなのに、それなのに・・・。
ああ、もう泣かないで!足元のちんまいのにつられて、私の腕のバカロンの子らしき物体が顔をへにゃりとさせた。
いやぁ~、今の私の顔は「ムンクの叫び」状態じゃなかろうか、絶対年頃の乙女じゃないはず!
エプロン組さんを私はきっと見すえ、お前ら自分の仕事せんかい!と目で訴えた。
いや、待て、まずこの腕の物体Aを何とかせねば!
私は、そんなにこの子が好きならば、自分で抱け、とばかりに李さんの元に帰すべく、動こうとした。
が、・・・・・動けなかった。
ちんまいのがいるせいで、だって足で踏みつけちゃいそうだもの。
「ぎゃあぎゃあ」と私に聞こえるそのあまりの泣き声に、大人がこれだけ揃っても誰も私達を助けようとはしないんだ、あ~そうなんだ、と私は何やら嫌味の応酬をはじめた男どもに冷たい視線をやって、私、なんで中国に来ようと思ったんだっけと、遠い目になりながら、その場にしゃがみこんだ。
ちみっこい泣いている子たちを広げた足の間に入れて、自分が選んだ着替えのワンピースの広がった生地の上に乗せて、ハンカチで涙と、鼻水も・・・・拭きながら、全然足らんじゃんハンカチ、と思いつつ、どうするよ、このハンカチ、って感じになってから、やっとエプロン組がやってきて、私にタオルを渡してくれた。
て、いうか、私が?やっぱ私に世話をしろって事らしい空気が、彼女達からバンバンしてくる。
私はやさぐれながら、唯一知ってるバカロンの子をひざに乗せ、他の子らも泣き止んだ順から同じように近くに、より引き寄せながら、無理、私には子供の扱いは無理、と思いながら、あのね、とか何とか声をかけた。
どうすりゃいいの、何か勝手に遊びはじめてくれたのはいいけど、ねえ、知ってる?私今のままなら、さっきと一緒で動けないんですけど。
おもちゃを取りにはいはいでいなくなる子に、やった!と思っても、すぐにこちらに戻ってくる。
うちの保護者ズ達を見ると、先ほどのにらみ合いはどこいったの?くらいの勢いで、李さんはじめ、エプロン族さん達と一緒に生暖かい目でこちらを見てる。
これって私怒っていいよね。
そう思い声をあげようとする私にかぶるように、私の声が聞こえてきた。
えっ?え?
天井からするするとスクリーンのようなものがいくつかおりてきて、そこの映像から、その声が聞こえてきた。
そこに映るのは、私だった。
私が優しく歌を歌っていた。
優しく語りかけていた。
「ママのかわいい宝物。」と。
私はさぞ間抜けな顔をしていたと思う。
ムンクの叫び顔の次に忘れてもらいたいひどい間抜け顔だったと思う。
何これ?どこをどう見ても、私で、私の声に聞こえる。
本人でさえそう思うんだ。
保護者ズも一瞬驚き、すぐにその眼に怒りを乗せた。
私もすっと感情が冷めていく。
その良くできた作り物の私に。
そこにちょうど、バカロンが部屋に入ってきた。
私と保護者ズの氷の視線を受けて、バカロンはすぐ部屋の映像を見て、ニヤリと笑った。
「仕方がないだろう。かわいい子供たちに母親を教えてあげないつもりか?」
「この子らは、我々の願いで生まれてくれた子達だ。与えるべきものはきっちりと与える、違うか?少なくても俺が面倒を見ている限りそうさせてもらう。」
こいつは!
バカロンはひょい、と私の元までくると、一人の赤ん坊を抱き上げ、それをガンちゃんに渡した。
そうして一人一人に同じことをした。
「写真やビデオでしか知らんかったろう、ほら父子の対面だ。感動的だな。」
と全然そう思ってないのが丸わかりの口調で言った。
けれどさすがにみんな自分の腕の中の子に、視線はくぎづけだ。
うそ、あの線の細そうな子がガンちゃんのなの?
あのふてぶてしそうな子がレイちゃんのだったの?
あとの子達は、うんそれぞれ納得だった。
しかしガンちゃんの子は・・・。
そして、レイちゃんとは視線を合わせないようにした私は悪くないと思う。




