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君のままに美しく  作者: そら
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第2章  第14話  さらっと、って素敵

夕飯は、隠れ家的な洋館のレストランだった。


古い洋館のたたずまいはそのままの、個室のレストラン。


1日限定3組のみというそこは、落ち着いた時間とおいしい懐石料理が味わえる、とても素晴らしい店だった。


口コミのみの紹介制を取っているというその店で、バカロンとうちの保護者ズが、何やら物騒な大人の話しをしている中、私は一人もくもくと食事をとっている。


だって、食べ物には罪はないもの。


ケタの違う金額のお仕事の話しをしばらくした後、ちょうどデザートになる頃、お仕事の話しは終わった。


それからは・・・・考えたくもない。


公的な用事はすませたとばかりに、手始めにヨウちゃんが、バカロンを冷たく見すえ、ほらヨウちゃんてば、立ち位置的にみんなのお父さんな訳で、いつもは穏やかなその気配を、えっ別人?ってくらいにかえて、思わず食べてたアイスが口から零れるくらいに、怖いのなんののその雰囲気で話し出す。


お仕事モードのヨウちゃんって、さすが半端ないわ。


うん、ヨウちゃんには逆らわないことにしよう、そう自分に誓った。


バカロンとヨウちゃん兄弟は、それも中国語で2人やりとりしてるんだけど、あの流れるように聞こえるはずの中国語が、とても鋭いものとして私の耳には聞こえてくる。


おっそろしい!


それをガンちゃんとテイちゃんが腕を組んで見すえ、キョーちゃんはいつでもやんよ!って感バンバンだして腰を浅くかけ、ユキちゃんは私の口をいそいそ拭いてくれながらも、チラとみるバカロンへの眼差しは、とても人命救助のお医者さんには見えぬ冷えたもので、レイちゃんは・・・こわっ!笑ってるのに、礼儀正しい笑顔の怖さってあるんですね、初めて知りました!って感じ。


だけど、誰もその中国語の会話に口を出さないで見ているだけ。


珈琲と紅茶をサービスしてくれる為に控えている綺麗なお姉さん達、さっきまでうちの保護者ズに、何気にコナをかけていたくせに、全然相手にされてなかった従業員の皆さん。


その彼女達の持つトレーがカタカタ体と腕が震えるせいで音がする。


食後の飲み物が運ばれた所で、さすが我らのお父さん、大人なヨウちゃんは一度口を閉じて引き下がった。


けれど待っていたようにガンちゃんが組んだ腕をそのままに、ねめつけるようにバカロンを下から見上げながら、


「おめえ何考えてやがる。」


ただ一言だけど、すごい全てをこめたかのような迫力ある低い声で問いかけた。


しんとする室内の雰囲気は、慣れているはずの私さえ怖いくらいのものだった。


あの時以来、私がバカロンに拉致された時以上に剣呑な雰囲気に、お茶のおかわりに控えているお姉さんたちがトレーを落とす音がしたが誰も気にしない。


私は、めんどくさいので彼女たちに部屋を出るよううながした。


部屋には私達だけになり、はかったように皆でバカロンを見た。


バカロンはそれを、本当に気にしていないんだろう、視線の一振りでばっさり切り捨て私に声をかけてきた。


「透子、息子の次期黒幡の長の認証式を行う。本来は生まれてすぐすべきものを、ここまで伸ばした。これ以上は伸ばさない。」


「お前は次期の長の母親として出席しろ。お願いではない、命令だ。」


これが本来のバカロンなんだろう、その覇気もあらわなそれは、さすが世界の裏を支配すると言われている組織のトップだった。


うちの保護者ズが束になってもかなわない力の持ち主。


けれど、私は私、振り回されるのは嫌い、誰にもそれを2度と許すつもりはない。


私はバカロンを見て、この夕食の席で初めて声を出した。


「い・や・よ。」とはっきり。


バカロンはそんな私を本来の眼差しでじっと見つめ、皆の緊張が続く中、やがてあっけなく笑った。


本当におかしそうに笑うので、思わずムッとしたけど、そんなバカロンを見てヨウちゃんがスで驚いていた。


私はたとえ殺されようが、うちの保護者をどうこうすると脅かされようが、聞くつもりはなかった。


私は私以外に動かされるなんてまっぴら。


自分以外に自分が傷つけられるなんて2度と許したくないから。


バカロンはひとしきり笑ってから、私の元に歩み寄り、うちの保護者ズが気色ばり立ち上がろうとするのを手で制し、保護者ズもそのバカロンに何を感じたのか、また大人しく座った。


バカロンは皆の注視の中、おもむろに私の元にくると、私の足元に跪き私の足首にキスをした。


「おまっ!」


うちの保護者ズの何名かのその声をバックに、バカロンは私を見上げながら、


「お願いです。どうぞ遊びをかねていらっしゃって下さい。楽しいものをお見せいたしましょう。」


そう言って私を見た。


しばらく私達はそのまま見あっていた。


本当にバカロンが楽しそうな目をしていた、本当にそれはまぎれもない目をしていた。


ほんの少し、本当にすこ~しだけ、興味がわいた。


あのバカロンが本気で言ったのがわかったんだもん、楽しい事?まだまだ思春期真っ盛りな私は好奇心がまだまだ枯れてないの。


「考えとく。日にちはこちらに合わせて。」って答えていた。


後から帰りながら、一緒の車になったガンちゃんには嫌味を言われ、レイちゃんには、これみよがしに溜め息をつかれたけど、君たちと違って感受性があふれる?っていうの、仕方ないと思うのよね。


言わないけど、言うとめんどうだから。


「お~い!透子ぉ、何か言いたそうだなぁ?」


変なとこ突っ込んでくるバカ1名を無視して、私はうちの保護者ズが何で私があの時考えるって答えたかわかってるのを知ってる。


私はバカロンを知りたくなった。


本当に単純に。


私達にたちはだかる存在として初めて私がバカロンを見た瞬間だった。


それまで私には関係ない人だったから。


今度の長期休暇に中国にいく、そう決めた。







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