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君のままに美しく  作者: そら
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プロローグ

現代版です。

読んでくれたら、とても励みになります。

 どこまでも綺麗な雲一つない青空に、大きく両手を広げ大きく息を吸って、なんて自分を取り巻く世界は素敵なんだろうと、目に見える全てに、その存在の一つ一つに大きく感動した自分がいた。


 ちょっと照れくさいけど、本当に見るもの全てが美しく感じたその日、そばを通り過ぎる友人たちにからかわれながらも、私は急に学校側の都合で、年にお盆と正月、それも二日ずつしかない休み以外はバスケの部活三昧の日々に訪れた突然のサプライズといえる今日の部活中止に、部活仲間の誘いを断り、自慢の脚力を思い切り披露して自宅までの十五分の距離を、制服のスカートを翻しながら一気に駆け抜けた。


 私、斉木透子14歳の初夏は、小さいころから後をついて回った、大好きで憧れていた隣の家の3歳年上のお兄ちゃんで私の小、中を通してミニバスの、そしてバスケ部の尊敬する先輩である人との新しい関係がはじまった嬉しい季節になった。


 いつまでたっても離れてさえも思いがつのるばかりで苦しくなって、お兄ちゃんに決死の覚悟で告白し、なんとお兄ちゃんからも「好きだよ」と言われ、初々しく付き合い始めた初めての夏になった。


 そして、昨夜はじめてのファーストキスを、いつも部活の帰りに待ち合わせる近所の象さん公園で、お兄ちゃんがそっとしてくれた。


 私も震えていたけれど、お兄ちゃんの私を抱く手も震えていた。


 お兄ちゃんは中学でも、今通う高校でも生徒会長をしていて、とても人気のある人だからちょっと不安だけど、お兄ちゃんを物心ついた時から追いかけていた私には、自分がまだ14だから、というブレーキはなかったしこの大好きな気持ちに年なんて関係なかった。


 急いで家に帰り、今年のお兄ちゃんの誕生日までにイニシャル入りの刺繍のカード入れを作るため、頑張るぞ!と鞄に入っている親友の良子からガメた手作りキットを持って本当に風のように走った。


 今なら記録会でいい数値でるんじゃん、そう思いながらくすくす笑って家のドアをあけた。


 そのまま二階の自分の部屋にかけあがった。


 その途中お姉ちゃんの部屋の前を通った。


 あれ、お姉ちゃん帰ってるの?お姉ちゃんのドアの前のプレートが綺麗な青いお花がかかっていた。


 お姉ちゃんの部屋はプレートで、いろいろ主張するのだ。


 いないよ~という赤い花のかかれたプレート、黄色い花の場合、超絶機嫌悪し!そして、青い花は機嫌も良く部屋にいるよ~、という合図。


 今日お姉ちゃん、早いっていってたかなあ?


 私は何も考えもしないでお姉ちゃんの部屋のドアを開けた。


 そこでみたのは、私のお姉ちゃん斎賀碧と、私の大好きな隣のお兄ちゃん平塚洋介が、全裸で愛し合っている姿だった。


 私が茫然としていると、二人もこちらに気づき私を見た。


 私は何かわめいている、何をわめいているのかわからないけど喉が痛い。


 耳にその声もはいってきてないから、二人の声も姿も聞こえない、見えない。


 ただ自分がいろいろな物を投げつけ、あばれたらしいのは、仕事から帰った母に取り押さえられるまで気が付かなかった。


 そして今、リビングで父と母、姉、私がいた。


 遠い世界の出来事のように糸の切れたあやつり人形のように、暴れるだけ暴れた私は力ない瞳を目の前にむけている。


 あれから時間がたっているようだ、父がいるし、あの人は・・・いないようだ。


 何の話をしているんだろう?やっと人の声が、優しい父と母の声が聞こえてきた。


 姉の碧ちゃんはみれない。


 父は黙っている。


 母は私に、


「今回の事は私からも碧には言っておくわ。透子ちゃんは本当に驚いて悲しかったでしょう。まさか碧ちゃんと洋介君が・・・。」


「でもね、大丈夫よ、透子ちゃんはまだ中学生でしょ。透子ちゃんなら、わかってくれる、そう信じているわ。」


 何をわかれって言うの?私は母の顔を凝視してしまった。


 はじめてしゃんと意識がその言葉で覚醒する。


 お兄ちゃんに告白したいけど、どうしよう、そう家族の前で恥ずかしいけど相談したのは、つい何か月かの前だ。


 あの時お母さんは、はじめての告白を頑張れ!って応援してくれたじゃない!


 碧ちゃんは、当たって砕けろ!ふられたら慰めてくれるって言ったじゃない!


 お父さんは、うちの透子を振る奴なんて許さない!そう笑って肩を撫でてくれたわ。


 お父さん、何とか言って、もっともっとひどい事だわ!


 けれど・・・・皆何も言ってくれなかった。


 碧ちゃんは、反対に私をにらみつける、その肩をお母さんが撫でて何か言っていた。


 私は無言で席を立ち、自分の部屋に閉じこもり、じっと天井を見つめ続けていた。


 自分の心がパラパラと砕け散る音を聞きながら。


 斎賀透子14の初夏は、それまでの斎賀透子を形作った全てが壊れた、そういう夏の始まりだった。

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