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宝石が盗まれそうだったので、守ろうとしたら。

作者: 有梨束
掲載日:2026/07/28

なんでもあり。

う〜ん、あの宝石、何か気になるんですよねぇ。

なんででしょう?


兄に「たまには、こういう知見広げもいいんじゃないか?」と興味のない宝石展に連れてこられたまでは、まだよかったんですが…。


あの一番端っこの小さい宝石、展示ケースの中で浮いてません?

あれですかね、浮かせて飾るタイプの宝石なんですかね。

私に知識がないので、どうやって見るのが正しいかわかりません。

……認めたくはないですが、兄のお小言は尤もだったのかもしれません。

くう、悔しいですね。


でも、あの浮遊魔法、どうやっているんですかね?

わざわざ浮かすための魔法師をスタッフとして雇っているんでしょうか?

随分、手の込んだ展示なのですねぇ。


あれだけのことするまら、目玉であるメイン展示室に飾られている宝石こそ浮かせた方が盛り上がりそうですけどね。


ね、兄様…、ってあれ、いなくなってる。

もう〜、どうせ婚約者殿とのデートの下見に、私を連れてきただけなんでしょう!?

はあ、勝手なんですから。

兄様の方が魔法は得意だから、あの仕組みはどうなっているんですかと聞きたかったのに。

誰かスタッフの方にお声がけしたら、教えてくれるものでしょうか。

気になります、あの浮いている宝石。


って、なんかやっぱりあの展示ケースだけおかしくありません?

だって、ガラスケースまで浮いてきましたよ?

それじゃあ、宝石を守っている意味ないじゃないですか。


…え、っと。



もしかして、もしかしますけど、…窃盗中だったり、します?


ど、どうしましょう!

それらしい魔法師は見当たりませんけど、遠隔操作でしょうか!?

だとしたら、とんでもない手練れですよっ!?

兄様、どこいるんですか!

こんな時こそ、ドヤ顔で魔法を使ってくださいよ〜!

あああ、どうしたらいいんでしょうっ…!


私の他に気づいている方はいないのですか!?

ああ、あんな小さい宝石ではなく、メインの宝石の方が気になりますよねっ!?

すみませんねっ、大輪の薔薇より雑草の方が興味深くなってしまう私でね!

おかげで、ギラギラ大きい宝石よりも、あの小さい宝石の方が気になりますよ!


ああ、人の目がないから盗みやすかったりします?

なるほどなるほど、意図はわかりますけれどね。

それにしても、白昼堂々と展示中に盗もうとするなんて、大胆不敵な宝石泥棒ですね!


うっわ、空いた隙間から宝石が出ていっちゃいそうなんですけど!?

やっぱり、盗人ですか!?


し、仕方ありませんね。

こうなったら、私がなんとかしましょう。

急がないと…!

あああ、私、魔法はあんまり上手じゃないんですけど。


ガラスケースと宝石に細工しているのですから、私が対抗しても跳ね返されるだけですし…。

うーん、うーん…。


あっ、台座の方をガラスケースに近づけるというのは、どうでしょうか!?

どこまでもガラスケースを追いかければ、宝石が出ていく隙間は埋まりますし、向こうも諦めてくれるかもしれません!

それでいきましょう!


よし、台座を浮かせますよ…、いけぇ。

ゆっくり、ゆっくりですよ。


あ、れ…、なんか、台座との隙間、広がってません?

違うんです、逆です逆っ。

あああ、宝石が逃げていっちゃう…。

台座の動きは、そっちじゃなくて。

うわああん、待ってぇ!


ズゴゴゴ…!という地響きみたいな音がしてしまいました。


やってしまいました、力の入れ方間違いました…。

台座を床にめり込ませてしまいました。

立派な台座が、地中にぴったり埋まっています…。

ああ、お許しください…、私が魔法が不得意なばっかりに。


というか、宝石!

宝石はどこいきましたか!?


あれ…?

台座の上に戻っていますよ?

ガラスケースと共に。

埋まっているだけで、展示自体は元通りです。

いや、元通りではないんですけど…。


ど、どういうことでしょうか?


えっ、台座の下から呻き声が聞こえてくるんですけど!?

はっ、兄様!どこに行かれていたのですか!

今、この宝石が浮いていてっ。それで私っ!


……台座の下から、魔法師の気配がする、です、か?

はあ、やっぱり魔法師には魔法師ですねぇ、そんなことまでわかるのですか。


気を失っているようだけど、お前何をしたのかって…?

ええ〜っと、それはそれは大変なことをしてしまいまして。

説明すると、長いのですが。

ちょっと待て、魔法師を引き上げるですか。

地中から取り出せるのですか?

おおお、さすが魔法だけはできる兄様、すぐにそんなことまで。


…は?


宝石泥棒の指名手配犯の顔に、似ている…?

この気絶している人がですか?

あっ、もしかして、地下から操作して、宝石を盗んでいたってことですか!?

器用な泥棒さんですね〜、器用だから泥棒なんでしょうか?


え、では、もしかして、私が台座をめり込ませたおかげになってます?

お説教回避ですか?

あ、それとこれとは別でしたか…。

はい、そうですよね、申し訳ございません。


兄様、こちらの展示会のオーナーさんに謝罪しにいくので、…ついてきてもらえませんか?

ううっ、ありがとうございます兄様…!

持つべきものは、世間体を気にする優秀な兄ですね。


よし、では謝りに行きましょう。

ええ、ええ、こういうのは早い方がいいです。

せっかくの展示会を台無しにしてしまいました。

そちらの泥棒さんは、警備隊にお任せしましょう。


行きましょう、兄様。

お前は不出来なくせに勘はいいよなって、それ褒めてないですからね。

婚約者殿にそんな言い方したら、嫌われるから気をつけた方がいいですよ。


うわ、もうなんですか、髪が乱れるじゃないですかっ。

よくやった、って言いますけど、兄様が私から目を離さなければ、こんなことにはならなかったと思いますぅ。


はああ、魔法はもうちょっと勉強します…!





お読みくださりありがとうございました!!

毎日投稿208日目。

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