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高校デビューした俺。学校一の美少女を狙うはずが、クラスでは犬猿なのに家では甘々な義妹が邪魔してきて気持ちが揺れてます  作者: 久遠遼


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15/18

15学校だとやっぱりツンツンな義妹

柳瀬さんとのデートと美羽の胸の内を知ることができた、慌ただしくも充実した休日から数日が過ぎた。


 昼下がりの教室。外は柔らかな陽射しがカーテン越しに差し込み、黒板の縁をぼんやりと照らしている。

 そんな穏やかな空気の中で、美羽の声がぴしゃりと響いた。


「ねぇ、若松くん。あまりチラチラとこっち見ないでくれる?」


「いや、そんなに見てないだろ」


「もう、美羽。そうやってすぐきつい言い方するんだから」


 柳瀬さんが苦笑しながら、美羽を嗜める。

 美羽は「べ、別にそんなつもりじゃ……」と小声で言いながらも、ぷいと顔を背けた。


 学校では相変わらずツンツンしているけれど、以前のように柳瀬さんをわざわざ別のクラスに連れ出すようなことはなくなった。

 今では、俺の席の近くで三人並んで話すのが、いつのまにか当たり前になっている。


 あの日、俺が家族として側にいると、美羽に誓った夜。

 そのおかげで、美羽の心にも少しだけ余裕ができたのかもしれない。


 いずれ、このツンとした態度もやわらぐだろう。

 そんな淡い期待を胸に、俺はふっと笑みをこぼした。


「な、なに笑ってるの? 嫌らしいことでも考えてたんでしょ」


 ほらきた。すぐ噛みついてくる。

 家ではあんなに甘えてくるのに、学校では別人格みたいだ。

 ……まあ、今日も帰ったら“お仕置き”で膝枕の時間を少し減らしてやろう。


「ねぇ、成宮くんは今日もこんな感じなのかな?」


 柳瀬さんが少し困ったように、窓際の弘毅をちらりと見る。

 彼は頬杖をついて、窓の外をじっと眺めていた。光が黒髪を照らし、無駄に整った横顔がどこか哀愁を帯びている。


「俺のことは気にしなくていいよ。こうして風を感じながら外を眺めているのが好きなんだ」


 視線を合わせず、淡々と呟く弘毅。

 いや、どこの文豪だよ。女の子と話せないからって、演出が過ぎるだろ。


「前にも言ったけど、弘毅は女の子と話すのが苦手なんだ。男なら全然平気なんだけどな」


 そう補足すると、美羽は半ば呆れたように首をかしげた。


「成宮くんって、てっきりクールなイケメンかと思ってたけど……本当に話せないんだね」


「そうみたいだね。成宮くんもアニメ見るって聞いてたから、話してみたいんだけどな」


 柳瀬さんのその言葉に、弘毅の肩がピクッと動いた。


「……柳瀬さんも、アニメを見るのかい?」


「うん。私も美羽も見るよ。成宮くんほど詳しくはないと思うけど」


「最初は興味なかったけど、お兄ちゃんの影響で見るようになったの」


 二人の返答に、弘毅はようやく窓から顔を戻した。

 眼鏡の奥の瞳が一瞬できらりと光る。


「ちなみに、どんなアニメを?」


「私はミステリー系かな。最近だと“天宮鷹翔の推理カルテ”を見たよ」


「私は感動するのが多いかも。“あの日見た花の名前を私はもう知っている”は、本当に泣いちゃった」


「……ふたりとも、いいチョイスだね!」


 さっきまで物静かだった弘毅の声が、一転して弾んだ。

 その変わりように二人とも目を丸くする。


「ミステリーに感動系! よし、任せて! ぜひおすすめを紹介させてくれよ!」


 急に熱を帯びた声で語り始め、手振りまで交えてアニメの魅力を語る弘毅。

 彼の言葉は止まらない。キャラの心理構成から音楽演出の話まで、まるで評論家のように語り出す。


 その熱に当てられたのか、美羽も柳瀬さんも目を輝かせ、次々と質問を返していた。

 気づけば三人の周りだけが小さな談笑の輪になっている。


 少し離れたところからクラスメイトたちの声が微かに聞こえてくる。


「成宮が女子と話しているのはじめてみたぜ」

「さすが怜奈と美羽ちゃんだよ」

「やっぱり、成宮も美少女二人の前だと違うか」

「イケメンと美少女二人は絵になるね~」


 皆普段は弘毅があまりにも女の子と話さないから、驚いている様子だった。

 そして、弘毅をそうさせた柳瀬さんと美羽に対する称賛の色も混じっていた。

 まあ、実際は弘毅のオタク魂に火が着いて、半分暴走しだしているだけなんだけなんだが。


 ふと、アニメ談義に花を咲かせている三人から少し引いた位置から、美羽の様子を見る。

 窓から差す午後の光が、美羽の頬をやさしく照らし、笑顔を浮かべる。

 そういえば、学校であんなふうに笑っている美羽を見るのは、初めてかもしれない。

 まあ、そもそも学校だと俺に噛みつくか、柳瀬さんと話すのを邪魔するために、彼女共々俺から離れていってたから、ほとんどまともに顔を見てなかったってのもあるけど。


 弘毅のおかげで、美羽の中に閉じこもっていた何かが、少しだけほどけたような気がした。

 兄としては、ちょっとだけ悔しい。

 けれど、それ以上に安心している自分がいた。


「……若松くん、なに笑ってるの? やっぱり変なこと考えてるでしょ?」


「いやいや、人の心の成長を感じてただけだよ」


「ふーん、どうだか」


 美羽はぷいと顔を背けたが、その耳の先がほんのり赤く染まっていた。


 やっぱり、学校ではツンな義妹は健在だ。

 


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