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初めてのレベルアップ

ベチャッ


スライムの体が潰れ、ゼリー状の液体が石の床に広がった。


静寂。


ダンジョンの奥から吹く冷たい風だけが、通路を通り抜けていく。


「……」


俺は石を握ったまま、その場に立ち尽くしていた。


心臓が激しく鳴っている。


手が震えている。


自分でも信じられなかった。


「……倒した?」


恐る恐る足元を見る。


そこには、さっきまで動いていたスライムの残骸が広がっている。


間違いない。


俺は──


魔物を倒した。


その瞬間だった。


体がふわりと光に包まれる。


「え?」


柔らかい光が体の奥へ染み込んでくる。


痛みが少し消えた。


さっきまで落下の衝撃で軋んでいた体が、わずかに軽くなる。


そして頭の中に文字が浮かんだ。



Lvが上がりました



「レベル……アップ?」


俺は思わず呟いた。


そうだ。


この世界では、魔物を倒すことで経験値を得る。


そして一定量が溜まるとレベルが上がる。


だが俺は今まで一度も魔物を倒したことがなかった。


だから当然、レベルアップも初めてだ。


俺はゆっくりと手をかざした。


空中に光の板が現れる。


自分のステータス画面だ。


恐る恐る確認する。



【ステータス】


名前:ノウ

年齢:17

職業:農民


Lv:2


HP:7

MP:0

攻撃:2

防御:1

素早さ:2

魔力:0


スキル

なし


称号

最弱の農民



「……上がってる」


確かに変わっている。


攻撃が1から2になっている。


HPも6から7に増えていた。


ほんの少しだ。


本当にわずかだ。


それでも──


「強くなった……」


生まれて初めてだった。


自分が強くなったと感じたのは。


村ではずっと最弱だった。


子供より弱い。


老人より弱い。


殴られても反撃できない。


そんな俺が


魔物を倒した。


それだけで胸の奥が熱くなる。


だが、その時だった。


ギャッ


通路の奥から声が聞こえた。


俺は凍りつく。


聞き覚えのある声だ。


ゆっくり振り向く。


暗闇の中から、緑色の影が現れる。


小さな体。


尖った耳。


汚れた棍棒。


ゴブリン。


しかも一体じゃない。


ギャッ

ギャッ


さらに二体、後ろから現れた。


「……三体」


喉が乾く。


さっき倒したスライムは、ダンジョンで最弱の魔物だ。


だがゴブリンは違う。


普通の人間でも油断すれば殺される。


そして俺のステータスは──


攻撃2。


勝てるわけがない。


ゴブリンたちは俺を見るとニヤリと笑った。


まるで獲物を見つけた獣のように。


「くそ……」


逃げるしかない。


俺は石を捨て、走り出した。


ギャッ!!


ゴブリンが追ってくる。


足音が近い。


通路を必死に走る。


息が切れる。


だが止まれば終わりだ。


前方に階段が見えた。


俺は迷わず飛び込む。


石の階段を駆け下りる。


後ろから


ギャッギャッ!!


という叫び声が響く。


ゴブリンは諦めない。


「くそっ……!」


俺は必死に足を動かした。


階段は長い。


かなり深い。


やがて下に着いた。


そこはさっきの場所より広い通路だった。


空気も少し違う。


冷たい。


重い。


「ここ……」


俺は息を整えながら周囲を見る。


そして気づいた。


壁に刻まれた古い文字。


そこに書かれていたのは



地下二階



「……」


つまり俺は今


ダンジョンの二階層にいる。


その時だった。


ギャッ


後ろから声。


ゴブリンたちも階段を降りてきている。


「まだ来るのかよ!」


俺は再び走り出した。


だがその瞬間


通路の奥から


重い足音が聞こえた。


ドン


ドン


ドン


ゴブリンとは違う。


もっと重い。


もっと大きい。


そして暗闇の中から現れたのは


巨大な影。


太い腕。


牙。


豚のような顔。


オーク。


ダンジョン中層に出る魔物だ。


「……終わった」


俺の頭にその言葉が浮かんだ。


前にはオーク。


後ろにはゴブリン三体。


逃げ場はない。


だが、その時。


オークがゴブリンに気づいた。


そして


ブオオオ!!


怒鳴り声を上げた。


ゴブリンたちは一瞬止まる。


次の瞬間


オークが突進した。


ゴブリンを狙って。


「今だ!」


俺は横の通路に飛び込んだ。


そのまま全力で走る。


後ろでは


ゴブリンの悲鳴と


オークの咆哮が響いていた。


俺は走りながら思った。


(生きる……)


(絶対に生きて帰る)


そして


(強くなる)


もう二度と


誰にも見下されないくらい。


そのためには──


このダンジョンを生き残るしかない。

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