最弱な農民 ノウ
腹が減った。
腹の奥が焼けるように痛い。
三日、まともに食べていない。
風が吹くたび、体がふらつく。
「……くそ」
俺は村の外れの畑で膝をついた。
土は乾いている。
今年は作物も育たない。
いや、そもそも俺には畑すらまともに与えられていない。
俺の名前はノウ。
この世界では、生まれた瞬間にすべてが決まる。
ステータス。
人にはそれぞれ数値があり、それがその人間の価値を決める。
強い者は騎士になる。
魔力が高い者は魔法使いになる。
運が良ければ、特殊なスキルを持って生まれる者もいる。
そして弱い者は──
俺のように、ただの農民になる。
いや。
農民ですらない。
最弱の農民。
俺は空を見上げ、小さくため息を吐いた。
「……見たくねえけど」
俺は手をかざす。
すると空中に淡い光の板が現れた。
この世界では誰でも自分のステータスを見ることができる。
だが、俺はそれを見るのが嫌いだった。
それでも確認する。
⸻
【ステータス】
名前:ノウ
年齢:17
職業:農民
Lv:1
HP:6
MP:0
攻撃:1
防御:1
素早さ:2
魔力:0
スキル
なし
称号
最弱の農民
⸻
「……終わってる」
HP6。
普通の農民でもHPは20くらいある。
村の子供ですら10はある。
なのに俺は
6。
攻撃1。
つまり、ほぼ殴ってもダメージが出ない。
スキルもない。
魔力も0。
完全なハズレ。
この世界では珍しい存在だった。
「おい最弱」
声が飛んできた。
振り向くと、村の男が三人立っていた。
俺より年上だ。
全員農民だが、俺よりははるかに強い。
「まだ生きてたのか」
「そろそろ魔物の餌になったかと思ったぜ」
笑い声が上がる。
そして石が飛んできた。
ゴンッ
肩に当たる。
「……」
俺は何も言わない。
言い返しても意味がない。
この世界では
弱い奴が悪い。
それがすべてだ。
「森でも行って食いもん拾ってこいよ」
「どうせ村の食料減らすだけだしな」
また笑い声。
俺は拳を握った。
だが、殴らない。
殴れば負ける。
いや。
殴る前に殺される。
俺はそのまま森の方へ歩き出した。
「……腹減った」
何か食べ物を探さないと。
このままでは本当に死ぬ。
森の奥に行けば、きのこくらいはある。
そう思って歩いていた。
だがその時だった。
ガサッ
草が揺れた。
俺は振り向いた。
そこにいたのは
ゴブリン。
緑色の肌。
赤い目。
小さな棍棒を持っている。
「……やば」
ゴブリンは弱い魔物だ。
だがそれは普通の人間にとっての話。
俺にとっては
天敵。
ゴブリンがニヤリと笑う。
そして走ってきた。
「うわああ!」
俺は全力で逃げた。
森の奥へ。
枝が顔に当たる。
石につまずく。
それでも走る。
後ろから
ギャッギャッ
という笑い声が聞こえる。
ゴブリンは追ってくる。
逃げろ。
逃げろ。
逃げろ。
その時だった。
足元の地面が崩れた。
「え?」
体が宙に浮く。
地面が消えた。
穴。
真っ暗な穴。
「うわあああああ!」
俺はそのまま
落ちていった。
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