8話
「はぁ……」
黒部圭太はため息をつきました。
異世界の河原に、たったひとりで座り込み、ゆったりと流れる大きな川を眺めています。
村を追放されてから二、三時間ほど歩いたところで、日が暮れてきました。
圭太にサバイバルの経験はありませんが、夜に動くのが危険だということは知っていました。なので、今日はここをキャンプ地とするつもりでした。
(最初の目標は、まず街に行くこと。そこで魔法と剣術を習得する。そして装備を整えながらレベルアップを繰り返して最強になる)
自分でもあまりに漠然とした考えだという自覚はありましたが、圭太はこの世界を知りません。だから、考えようがないのです。
「焦るな、落ち着け……。俺は異世界転移したんだ。きっと、きっと特別な才能があるはずだ」
無能だとしても、それは今の段階の話。レベルを上げれば、きっとスキルを習得することが出来る。最初は弱いが、途中から一気に強くなるパターンに違いない――そう信じていました。
「魔物……本当にいるのかな」
暮れていく闇の中に、何かが潜んでいるような気がして、背中がざわつきます。
村長の話によれば、魔物はいます。しかし、この世界に来てからその姿を見たことはありません。
どんな姿をしているのか。
どれくらいの大きさなのか。
どれほど凶暴なのか。
「いざとなったら、こいつで……」
圭太が手に持っているのは、そこら中に落ちている石ころでした。
最初は落ちている木の枝を武器にしようと探していましたが、細すぎたり重すぎたり、あるいは腐っていたりして、武器として使えそうなものを見つけることができませんでした。
「『ひのきのぼう』すらないって、なんだよ……」
自嘲気味に笑う圭太の耳に、大司教バレルの声が蘇ります。
『あと何日生きていられるかな?』
あの時の言葉が、脅しではないということが、ここにきてはっきりと分かりました。
だからこそ、バレル自身も屈強そうな護衛を何人も引き連れていたのです。この世界が安全であれば、そんなことをする必要はないのですから。
暮れてゆく河原が不気味に見え始めました。
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