13話 ~希望の水~
胃の中はとっくに空だというのに、体はまだ内容物を吐き出そうとしています。
「………火よ………火よ起これ!」
胃液の苦味と嗚咽の合間に、擦り切れた声が響きました。
体勢こそ地面に這いつくばっていましたが、それは風による体温低下を避けるためであり、その精神は決して屈服していません。
煮えくり返るような怒りが、一度は折れかけた気力を強引に繋ぎ止めていたのです。
(復讐もしていないのに、死ねるか……! あの豚に必ず報いを受けさせてやる。人をゴミみたいに見やがって、絶対に許さない。何が出世だ! 何が大司教だ! 何が神だ!)
「ファイヤ! ファイア!」
圭太は、自分という人間の本質を理解しました。それは「怒り」です。怒りという燃料があれば、行動できます。
「ウォーター!」
もはや期待という感情も薄れています。何も起きないことを受け止めつつ、それでも止める気配はありません。
「サンダー!」
「木よ、生えろ!」
「土よ、盛り上がれ!」
焦点の定まらない目は血走り、闇に向かって虚しく腕を振りかざします。垂れ流される涎を拭うことすら忘れ、支離滅裂な呪文らしき咆哮を撒き散らしていました。
傍から見れば、それは救いようのない、純然たる狂気そのものです。
「――鑑定!」
その瞬間、あっさりと変わりました。
夕暮れの残滓が漂う闇の中、青白く光る『文字』。それが圭太の目の前に浮かび上がったのです。
「ギョエンチョ!!!」
絶叫とともに、大量の鼻水が噴き出しました。
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