12話
圭太の脳内で、声が響きました。
(謝れよ。謝ったら許してくれるって……)
絶望の暗闇の中で浮かび上がってきたのは、あの脂ぎった大司教バレルの顔でした。
「何を考えているんだ、俺は!」
圭太は自分の太ももを強く叩き、己を鼓舞するように声を張り上げました。
「復讐するんだろ!? 目にもの見せてやるんだろ!?」
(魔物がいるんだぞ。この世界には)
内なる声が、冷酷に語りかけてきます。
「だからなんだ!」
(喰われるぞ?)
「ふざ……」
(喰われないと思っているのか? まさか、心を込めて接すれば魔物と仲良くなれるとでも思っているんじゃないだろうな?)
「黙れ!」
(魔物は夜が一番活発に動く。対してお前はどうだ? もうすでに疲れ果てているじゃないか。それでどうやって魔物から逃げるんだ? 寝ている間に喰われるのが関の山だぞ)
「黙れって言ってんだよ!」
(頭を下げる――たったそれだけで、これからも生きていけるんだよ。あいつの目の前で地面に頭を擦り付けて、『どうか助けてください』って誠心誠意頼めよ)
「ふざけんな! 誰があんな奴に頭なんか下げるか! それはあいつの方だ!」
(馬鹿だな、ガキだな。現実を見ろよ。村人たちの反応を見て分かっただろ? この世界じゃ教会の力はデカいんだよ。正しさなんて何の価値もない。何も持たずにただ反発するのは、ただの馬鹿じゃないのか? 生きていくために何をするのが“正解”なのか考えろ。ガキ臭い考えなんか捨てろ)
「そんなことをしたって、あの豚が喜ぶだけだ!」
(いいや、そうはならないね。俺には分かる。あいつはきっとお前を許してくれるよ。なぜかって? 惨めなお前の顔を見たいからだ。みっともないお前を眺めながら、美味い酒を呑みたいだけだ)
圭太は、目の前がぐるぐると回る感覚に襲われました。自分の内なる声が、信じられないほど狡猾に思考をかき乱してきます。
(謝れ。出来るだけ、みっともなく謝るんだよ。お前が生きるためには、それしかないんだ。謝るんだよ……)
こらえきれなくなった圭太は、胃の中のものをすべて吐き出してしまいました。
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