11話
圭太は力なく立ち上がり、大きな石の上に置いた鞄に手をかけました。村長がくれた鞄です。
「くそっ……」
思わず舌打ちが漏れたのは、鞄を縛っている紐が驚くほど硬かったからです。
おまけに周囲はすっかり暗くなっており、結び目が見えづらくなっていました。指先の感覚だけを頼りに格闘し、ようやく開いた鞄の中身を確認していきます。
中からは、ビーフジャーキーのような乾燥した薄い肉が出てきました。他にも、干した果物、水の入った革袋、黒っぽいパン、短剣、乾燥した植物の束が入っています。
「……肉だ」
干し肉は、手のひらほどの塊が一つと、細長い短冊状のものが三つ。圭太はまず、食べやすそうな短冊状のものを一つ選び、口へと運びました。
その瞬間、猛烈な塩気が舌を刺しました。
「――っ! なんだこれ、辛すぎる……!」
それは「味付け」などという生温いものではなく、まるで塩をそのまま口に入れたような、暴力的な刺激でした。
それでもなんとか噛みしめようとしましたが、肉は石のように硬く、噛み砕くことができません。
諦めて強引に飲み込むと、ゴツゴツとした肉の塊が食道をゆっくりと落ちていく感覚が伝わってきます。圭太は「自分は今、肉を食べている」という、わずかな満足感を覚えました。
人差し指ほどの大きさのそれだけでは足りず、さらに手を伸ばします。しかし、それを口に入れた瞬間、先ほどとは違う異変に気づきました。
「………苦い」
腐った土を思わせる不快な苦味が、口いっぱいに広がります。たまらずそれを地面に吐き出し、目を凝らしてよく確認しました。
闇に紛れて分かりませんでしたが、赤黒い干し肉の表面には、明らかに周囲とは異なる不気味な黒い斑点がこびりついています。
「もしかして……カビか……?」
背筋に冷たいものが走りました。
カビの付いた食べ物を寄越すなんて――。
一瞬、自分を助けてくれたはずの村長に対して、怒りとも恨みともつかない言葉が喉まで出かかりました。しかし、圭太はそれを口にはしませんでした。
「……いや、俺が悪いんだ。口に入れる前に、ちゃんと確認すべきだった……」
そう自分に言い聞かせ、革袋の水を口に含みました。その瞬間、溢れ出した獣臭さが口内のカビの臭いと混ざり合い、強烈な不快感となって広がります。
「ぶうぇっ!」
水を吐き出した後、圭太は茫然とその場に座り込みました。
(……謝れよ……)
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