10話
「メラ!」「ファイヤー!」「ファイアー!」「メラ!」「ファイヤー!」「ファイアー!」「メラ!」「ファイヤー!」「ファイアー!」
悲鳴にも似た圭太の声が、暮れてゆく河原に虚しく響き渡ります。
――パチャン。
魚が跳ねる小さな音がしました。
起きた変化はそれだけです。圭太がいくら叫んでも、構えた手に力を込めても、何の現象も起こりません。
「どうしてだよ………」
弱々しい声でつぶやきながらも、圭太はすでに答えに気づいていました。
『無能』。
幾度となく投げつけられた、あの残酷な言葉です。
「無能………」
掲げた両手は力なく垂れ下がり、圭太はそのまま河原に膝をつきました。
「――やっぱりかよ。クソッ……!」
川に投げつけた石は、十メートルも行かないうちに力なく水面に落ち、「ドボン」と鈍い音を立てました。
それは、どこまでも普通の人間の腕力でした。
「世界最強だろ!? 異世界に来たらチート能力で世界最強じゃなかったのかよ! 前の俺と何ひとつ変わってないじゃないか!」
納得いかないと越えの限りに叫ぶ圭太だが、本当は気づいていました。
村を追放されてからここまで、体感でおよそ二時間は歩きました。それだけで圭太は疲れ切っていました。流木を集めるだけで息が切れていたのです。
こんな自分が世界最強であるはずがないことは気が付いていました。
「炎よ! 炎よ巻き起これ!」
どれだけ必死に叫んでも現実は変わらず、突き出した両手には何の変化も起こりません。ただ闇は深くなり、声が枯れていくばかりです。
「駄目だ………」
また、あの声が再生されます。
『あと何日生きていられるかな?』
たとえ魔物がいなかったとしても、圭太にはこの環境で生きていくだけの術が何ひとつありません。スマホの使い方は知っていても火のつけ方は知らない。魚の捕り方は知らない。
今まで圭太が生きてきた経験は、この状況では何ひとつ役に立ちません。
「落ち着け……まだ、あれがある……」
それでも、圭太は完全には諦めていませんでした。
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