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ネカマバレしたくない俺、相棒にベタ惚れされて女装で会いに行ったら美少女でした【大幅改稿版】  作者: 谷三
エピキュクルス・オンライン ~伝説の女帝とネカマな俺~
9/30

悲劇の美少女、ルナ

 

 チャットが一段落したころ。

空は、思い出したようにアストラに声をかけた。

「そうだ、アストラ」

「ん?」

「実は、私の友達がゲーム始めたんだ。一緒に遊んでくれない?」

「おお、いいよ! 初心者さん?」

「うん。まだキャラ作ったばかりで」

「じゃあ、初心者エリアに迎えに行こうか」


 二人は、初心者エリアに転送した。

蓮から聞いていたキャラクター名を検索する──「ヒゲモジャール」。

「……え?」

画面に映ったのは──

ヒゲモジャ、短身、短足。

ずんぐりむっくりとした体型の、ドワーフだった。


「ぶっ……!」

空は、思わず吹き出した。


「どうしたの?」

アストラが不思議そうに尋ねる。


「い、いや……! なんでもない!」

(蓮、こんなキャラ作ったんだ……!)


 リアルでは、中性的で美しく、誰もが振り返る容姿の蓮。

それが、ゲームの中では真逆のキャラクター。


「よう! ヒゲモジャール様参上だ!」

蓮の──ヒゲモジャールの声が響く。

プリセットボイスも選べるのだが、声だけは元の蓮そのままの設定だ。

声だけが美声。それが余計に可笑しさを誘う。


「よろしくな! 二人とも!」

「よ、よろしく……!」

空は、必死に笑いをこらえた。

「初めまして。アストラです。よろしく!」

アストラは、何が面白いのかよくわかっていない様子だった。


「ヒゲモジャールさんって、リアルではどんな人なんですか?」

「同じ大学に通っててるんだ。見た目は……本人と真逆だよ」

そらぽんが説明する。

「長身で、ハンサムで、モデルみたいな人」

「へえ! じゃあ敢えて全然違うキャラにしたんだ」

「そうそう」


 空は、画面の向こうの蓮を想像した。

(格好良い蓮でも……たまには、別の自分になりたい時もあるのかな)

 それは、空自身と同じだった。

現実では「男らしくない」と言われ続けた空が、ゲームでは女性キャラになった。

現実では完璧な美貌を持つ蓮が、ゲームではずんぐりしたドワーフになった。

(みんな、何かしら抱えてるんだな)

 そして、このゲームの中でなら──違う自分になれる。

「じゃ、レベル上げ手伝うよ!」

「頼んだ!」


 三人は、初心者エリアのモンスター討伐に向かった。

アストラの軽快な剣技、そらぽんの的確なヒール、そしてヒゲモジャールの──

「おりゃあああ!」

──予想以上に豪快な斧の一撃。

「うおっ、ヒゲモジャールさん強い!」

「ドワーフのパワー舐めんなよ!」

蓮が、楽しそうに笑う。

空も、アストラも、笑った。


 画面の向こうで──三人は、確かに繋がっていた。


 *****


 オフ会から数日後。

ギルドチャットが、いつになく騒がしかった。

「おい、見たか!? SNS!」

「何が?」

「そらぽんちゃんの写真がバズってる!」

「え!?」

空は、慌ててSNSを開いた。


 オフ会で撮った集合写真──その中の「そらぽん」が、大きくクローズアップされて拡散されていた。

「美人すぎるエピキュクルスプレイヤー」

「この美貌でゲーマーとか最高」

「誰これ! 情報求む!」

リツイート数は既に数万を超えている。


「そらぽんちゃん、ごめん……!」

写真を投稿したギルドメンバーが、慌てて謝罪してきた。

「そんなにフォロワーいないアカウントだから、まさかこんなにバズるなんて思わなくて……!」

「大丈夫だよ」

 空は、意外と冷静だった。

(どうせ、素顔じゃないし)

「そらぽん」は、蓮のメイク技術が作り出した存在だ。

素顔を晒したわけではないし、この「女性」は本来世界のどこにもいない。


「本当に大丈夫?」

「うん、気にしないで」

「そらぽん……。優しい……」


 一方、アストラは──

「でも、こういう拡散って危ないよ。変な奴に目をつけられたりしないか心配」

 いつになく真剣な声だった。

「アストラ、心配性だね」

「だって……」

 アストラの言葉が、途切れる。

(なんだか、すごく心配してくれてる……)

 空は、少し嬉しくなった。


 *****


 しかし、騒動は予想外の方向に転がり始めた。

「おい、とんでもない噂が広がってるぞ」

ひのきのぼうが、緊急でギルドチャットに書き込んできた。

「そらぽんが、『ルナ』の成長した姿じゃないかって」

「ルナ……?」

空は、首を傾げた。

「ああ、そらぽんちゃんは知らないか」

不気味だいふくが、説明を始めた。


「昔、『シルバームーン』っていう伝説のギルドがあってね」

「このゲームで、唯一全土統一を成し遂げたギルド」

「そのギルドマスターが、『ルナ』っていう絶世の美少女中学生だったんだ」

「オフ会でルナの素顔が判明して、ギルドメンバーの男たちが彼女に夢中になって──それが原動力で全土統一したんだって」

「すごい話ですね……」


「でも、その後がよくなかった」

ひのきのぼうの声が、重くなる。

「ルナを巡って、複数のギルドメンバーが争うようになって。リアルでストーカーまで現れた」

「ルナは耐えきれなくて、キャラを削除。ギルドは崩壊」

「今では『悲劇の姫』とか『傾国の美少女』とか呼ばれてる」

 空は、息を呑んだ。

(そんな……可哀想に)


「で、そのルナとそらぽんちゃんが似てるんじゃないかって噂になってる」

「実際にルナを見た人からは、『そらぽんも美人だけど、ルナはもっと美しかった』って声も出てるけど」

「でも、『成長して顔立ちが変わったんじゃ?』とか言う奴もいるし」

「そもそもルナの素顔を見たことない人が大多数だから、噂が勝手に広がってるんだ」

 空は、画面を見つめて呆然とした。

(そんな……俺、全然関係ないのに……)


 その時──


「みんな、無責任すぎる」

アストラの声が、ギルドチャットに響いた。

いつもの明るいトーンではない。少し、感情的な響きがあった。

「『ルナ』だって、もう放っといてほしいと思ってるだろうに。勝手に騒いで、勝手に憶測して──」


「……アストラ?」

「ごめん。ちょっと言い過ぎた」

アストラの声が、急に落ち着きを取り戻した。

「でも、そらぽんが変な噂に巻き込まれるのは嫌だから」

空は、胸が締め付けられるような気持ちになった。

(アストラ……)


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