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ネカマバレしたくない俺、相棒にベタ惚れされて女装で会いに行ったら美少女でした【大幅改稿版】  作者: 谷三
エピキュクルス・オンライン ~伝説の女帝とネカマな俺~
7/30

俺を、女の子にしてください!!

 

 翌日、空は大学の中庭を必死に探し回っていた。


(いない……どこにいるんだ……!)


 探しているのは、萩原蓮。あの有名なユニセックスモデル。

普段なら絶対に話しかけようとも思わない相手だが──今は、そんなことを言っている場合ではなかった。


(他に頼れる人がいない……!)


 女装。それしか方法がない。

でも、空には女装のノウハウなんて全くない。メイクも、服も、何もわからない。

だから──この道のプロに頼るしかない。

性別を超えた美しさを持ち、自らメイクも行い、男性の服も女性の服も自在に着こなす、萩原蓮に。


「……いた!」

 中庭の端、木陰のベンチに座って本を読んでいる蓮の姿を見つけた。

空は、勇気を振り絞って駆け寄った。

「あ、萩原さん!」

蓮が顔を上げる。長い睫毛、整った顔立ち。今日は少し女性寄りのファッションをしている。


「……えっと、君は?」

「朝野空です! 同じ大学の……」

「ああ、うん。それは知ってるけど……何か用?」

蓮は不思議そうに首を傾げた。当然だ。

今まで一度も話したことのない人間が、突然話しかけてきたのだから。


 空は、深呼吸をした。

「お願いがあります!」

「お願い?」

「俺を──」

「俺を?」

 空は、頭を深く下げた。

「俺を、女の子にしてください!!」


 周囲の視線が一斉に集まった。


 蓮は、目を丸くして──それから、噴き出した。

「ぶっ……あはは! 何それ、告白みたいなセリフ!」

「笑い事じゃないんです! 本気なんです!」

 空の真剣な表情を見て、蓮の笑いが止まった。


「……マジ?」


「マジです。大マジです」


 蓮は、しばらく空を見つめてから──ふっと笑った。

「面白そうじゃん。詳しく聞かせて?」


 *****


 蓮のアパート──というより、もはやモデルルームのような部屋に、空は緊張しながら座っていた。

事情を説明すると、蓮は「なるほどね」と頷いた。

「オンラインゲームで女性キャラ使ってて、オフ会で会うことになったから女装したい、と」

「は、はい……」

「いいよ、やってあげる」


 あっさりと了承されて、空は思わず顔を上げた。

「ほ、本当ですか!?」

「うん。朝野くんの身体、女装するキャンバスとしては最適だしね」

 蓮は、空の顔を観察するように見つめた。

「華奢で小柄。顔も特徴がなくて整ってる。男らしくないって言われたことあるでしょ?」

 空は、ぎくりとした。

「で、でも……それって……」

「男としては不利かもしれないけど、女装には最高の素材だよ。君、絶対可愛くなる」

蓮は自信満々にそう言って、立ち上がった。


「じゃ、始めよっか。まずはウィッグから」

クローゼットから、いくつものウィッグが入った箱を取り出す蓮。

その手際の良さに、空は圧倒された。

「オフ会に女の子がいたら、ウィッグってバレちゃうかもしれないよね」

「あ……」

 確かに。大体の女性は、地毛のはずだ。

「だから、あえてこういうのにしよう」

蓮が取り出したのは、インナーカラーの入ったウィッグだった。

表面は自然な茶髪だが、内側に鮮やかなピンクが僅かに入っている。

「これなら、バレても『ファッションでつけてます』って言えるから」

「な、なるほど……!」

「じゃ、被ってみて」

 蓮が、慣れた手つきでウィッグを空の頭に載せる。

鏡を見ると──既に、少し印象が変わっていた。


「次はメイク。座って」

椅子に座らされ、蓮が空の顔に触れる。

至近距離で見る蓮の顔は、男性とも女性ともつかない、不思議な美しさを持っていた。長い睫毛、滑らかな肌、整った唇──

「緊張してる? 顔赤いよ」

「す、すみません……!」

 男性とはわかっているけど、それでも蓮は綺麗な女の人のようにも見える。

おまけに、なんだかいい匂いまでする──

「別にいいけど。じゃ、目を閉じて」

 蓮の指が、空の瞼に触れる。アイシャドウを塗っているらしい。

「君の顔、特徴がないから、目元を大きく印象付ければガラッと変わるんだ」

「は、はあ……」

「アイライン引くね。動かないで」

 慣れた手つきで、次々とメイクが施されていく。

ファンデーション、チーク、リップ──

空には何が何だかわからないが、蓮は的確に作業を進めていた。


「はい、できた。見てみて」

鏡を渡される。

 

 空は、自分の顔を見て──息を呑んだ。

「……えっ?」

そこに映っているのは、見知らぬ女性だった。

大きく印象的な目元、血色の良い頬、艶やかな唇。ウィッグの茶髪が、顔を柔らかく縁取っている。

「すごい……」

「でしょ? まだ途中だけどね。次は身体のライン」

 蓮は、クローゼットから補正パッドを取り出した。

「胸と尻に入れるから」

手際よく補正パッドを装着され、最後にゆったりとしたワンピースを着せられる。

「体型が目立たない服にすれば、完璧」


 再び鏡の前に立たされて──


 空は、言葉を失った。

そこに立っているのは、どこから見ても美女だった。

男としては低かった背は、女性としては高身長。

男として印象の薄かった顔は、女性としてははっきりとした美人顔に見える。

まるで、男としての短所が逆転したようだった。


「完璧。これなら絶対バレない」

蓮が、満足そうに頷いた。


「あ、ありがとうございます……!」

空は、深々と頭を下げた。

「でも、どうして……ここまでしてくれるんですか?」

 蓮は、少し寂しそうに笑った。

「僕さ、昔から男女両方の服を着るじゃん? 男からは気味悪がられて、女からは面白がられるんだよね」

「……」

「男友達、いなかったんだ」

蓮の声が、少し影を帯びた。

「でもさ、ファッションって性別にとらわれる必要ないと思うんだ。好きな服を着て、好きな自分でいればいい」

「みんなにもそう伝えたくて──だから、こうやって活動してる」

 空は、蓮の横顔を見つめた。

華やかに見えるモデルの裏側に、こんな孤独と葛藤があったなんて。

(俺と、同じだ……)


「あの……!」

空は、思わず声を上げていた。

「もしよかったら──俺が今やってるゲーム、一緒に遊びませんか!」

蓮が、驚いたように目を見開いた。

空は、しまったと思った。

(人気モデルに、俺なんかが恐れ多かったかも……)


 だけど──

「……いいよ」

 蓮は、柔らかく笑った。

「一緒に遊ぼう。連絡先教えて」

 空は、目を丸くした。

「ほ、本当ですか!?」

「うん。友達、欲しかったし」

 蓮の笑顔は、どこか寂しげで──でも、本当に嬉しそうでもあった。

この笑顔は、決して社交辞令なんかじゃない。

(俺、初めて……大学で友達ができた)

 胸が、自然と熱くなる。

現実世界で。ゲームの外で。

それは、空がずっと求めていたものだった。

「ありがとうございます、萩原さん!」

「蓮でいいよ。これから友達なんだし」

「じゃあ、蓮さん……!」

「さん付けもいらないけど、まあいっか」

 蓮は、くすくすと笑った。


 こうして、空と蓮の友情が──そして、新たな物語が動き始めた。


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