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ネカマバレしたくない俺、相棒にベタ惚れされて女装で会いに行ったら美少女でした【大幅改稿版】  作者: 谷三
エピキュクルス・オンライン ~伝説の女帝とネカマな俺~
5/30

(ヤバっ、惚れそう……)

 

「アストラ、ちょっと元気ないね?」


 ゲーム内の集合場所であるギルドの休憩スペース。

いつもの明るい笑顔が控えめなアストラに、ヒーラーのそらぽんが声をかけた。

そらぽんは、手持ちのメイスをテーブルに置いて、向かいに座るアストラを覗き込む。


「ん?……いや、そんなことないけど」


 アストラは少し目を逸らしたが、その表情には微かな陰りがある。

アストラは普段、どんな敵にも真っ向から立ち向かう、元気印のアタッカーだ。

そのアストラが、ずいぶんと覇気がない。


 そらぽんは、そんなアストラをじっと見つめると、優しく微笑んで言った。

「あのね、この前アストラと一緒に手に入れた素材、あれのおかげで、新しいローブを作れたんだ! ありがとうね」


 アストラの強張っていた表情が、ふっと柔らかく緩んだ。

「……そっか。よかった」


「うん。でも、もし元気がないなら、今日のダンジョン攻略はやめとく? 無理しなくていいんだよ」

そらぽんの言葉に、アストラは思わずクスッと笑ってしまった。

「……よく見てくれてるんだな、そらぽんは。大丈夫、ちょっとだけ、気分が沈んでただけ。行こう、約束したからな」

アストラがそう言うと、そらぽんは「よしっ!」と明るく頷いた。


 二人はパーティを組み、中級者向けのダンジョンへと足を踏み入れた。

アストラは最前線で敵の注意を引きつけ、そらぽんは少し後ろから回復や支援魔法をかける。

順調に進んでいたその時、アストラが意識をそらした一瞬、

背後の茂みから小型のゴブリンが飛び出し、そらぽんに襲いかかろうとした。


「あっ……!」

咄嗟に防御態勢をとろうとするそらぽんだったが、次の瞬間にはアストラの素早い剣技が炸裂し、

ゴブリンは一撃で地面に伏した。


「そらぽん、大丈夫か!?」

「うん、全然。ありがとう、アストラ」


 アストラは剣を鞘に戻すと、少し心配そうな顔で振り返った。

そらぽんはその様子を見て、改めて感心したようにアストラを見つめる。


「ねえ、アストラってさ、本当にすごいよね」

「何がだよ。当然のことだろ?」

「違うの。アタッカーの人って、ヒーラー放っといてがんがん進んじゃう血気盛んな人が多いじゃん?」

「とにかく火力! 攻撃! みたいな」

 そらぽんは身振り手振りで説明する。


「でも、アストラは違う。常に私の位置を把握して、ちゃんと後ろを見ていつも守ってくれる」

「今のだって、一瞬で気づいてくれたし。私、安心して回復に専念できるんだ」


 褒められたアストラは、普段のクールな表情を崩し、少し照れたように頬を掻いた。

「そ、そうか……。まあ、ヒーラーが倒れたら元も子もないしな」

「ヒーラーって一人じゃ何もできないじゃない? だから、こういうパートナーは本当に神だよ!」

 そらぽんは満面の笑みで、ふざけてエモートでアストラを拝み始めた。

「ちょっ、やめろって」

大げさなアクションにアストラも笑い出す。アストラの表情が、冒険前より晴れ晴れとしていた。


 笑い終わったアストラは、一瞬躊躇したあと、そらぽんに打ち明けた。

「……あのさ、実は、今日ちょっと嫌なことがあったんだ」

「え、そうなの? 聞くよ」

「学校で、同級生に……『あいつって人気あるけど、所詮見た目だけでしょ』って陰口を叩かれているのを、こっそり目撃しちゃって」

 アストラは少し俯いた。ゲーム内では元気なアタッカー少年でも、現実での些細な陰口は、やはり心に響くものだ。


 そらぽんはそれを聞くと、途端に顔を真っ赤にして、本気で怒り出した。

「な、何それ! そいつら見る目ないね! っていうか、何様のつもり!?」

「いや、まあ、別に俺自身はあんまり気にしてないけど、こう悪意を向けられると、一気に疲れちゃってさ……」

「気にしてないわけないでしょ! もう! アストラの長所、私が全部言ってやる!」

 そらぽんは指を折りながら、熱弁を始めた。

「まず、運動神経が凄い! VRでこんなに動ける人いない! それ以上に人格が最高でしょ! 常にパーティ全体を見て動いてくれる配慮!」

「誰に対しても平等で優しいところ。そして、今日だって、私が危ないところをさり気なく助けてくれる、そういう繊細さ!」

「そんなこと言う人のことなんか、気にしなくていいよ!」


 そらぽんの勢いに圧倒され、アストラはただ呆然と聞いていた。

こんなにも自分のために本気で怒ってくれる人がいたんだ──。


「だいたいね、アストラは、誰よりも私を大事にしてくれる。だから、そんな陰口、気にしなくていい! ね?」

「もしまた嫌なことがあったら、いつでも相談してね。私が相手になって、一緒にぶっ飛ばしてやるから!」


 そらぽんはメイスを軽く握りしめ、まるで自分たちがラスボスに挑むかのように力強く言った。

その様子は誰が見ても疑う余地のない、お世辞や慰めなんかじゃない、本当の気持ち。

曇りのないまっすぐな瞳に、アストラは思わず、心の中でポツリとつぶやいた。


(……ヤバっ、惚れそう……)


 そのつぶやきがわずかに口から漏れ出たことに気づき、アストラはハッとして、慌てて言葉を濁した。

「あ、いや、えっと……ありがとう、そらぽん。なんか、スッキリしたよ」


 アストラの様子を見て、そらぽんは「えへへ」と笑う。その笑顔は、太陽のように明るい。

アストラは、そらぽんの笑顔から目を逸らした。そらぽんには知る由もないが、画面の向こうのアストラの顔は、真っ赤だった。


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