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ネカマバレしたくない俺、相棒にベタ惚れされて女装で会いに行ったら美少女でした【大幅改稿版】  作者: 谷三
エピキュクルス・オンライン ~伝説の女帝とネカマな俺~
4/30

ようこそ、「今夜も寝落ち団」へ

 

 その後、アストラと何度か遊んだ後のある日。そらぽんは、アストラからギルドに誘われた。

「ねえねえ、そらぽん。俺のギルドに入らない?」

ギルド──プレイヤー同士で結成するチーム。最大で五十人まで所属でき、専用のチャットルームやギルドホールが使える。

「俺のギルドは『今夜も寝落ち団』っていうんだけど、名前の通りまったり系のエンジョイ勢ばっかりだから気楽だよ! 」

「そらぽんみたいな優しい子、きっとみんな歓迎してくれるよ」


 そらぽんは少し迷った。

ギルドに入るということは、もっと多くの人と関わるということだ。女性キャラを演じ続けなければならない場面も増える。

 でも──

「アストラさんがいるなら……」

「おっ、いいの!? やった!」

「それと、俺のことはアストラって呼び捨てにして! 敬語もなしね!」

アストラの喜ぶ様子が、テキストからでも伝わってくる。そらぽんは、小さく笑った。

「うん、わかったよ。アストラ」

(この人と一緒なら、大丈夫かもしれない)

こうして、そらぽんは「今夜も寝落ち団」の一員となった。


 *****


 ギルドメンバーは、本当に気さくな人たちばかりだった。

ギルドマスターは「バーン」という豪快な戦士。副マスターの「不気味だいふく」は名前に似合わず優しい魔法使い。他にも、個性豊かなメンバーが二十人ほど在籍していた。

「そらぽんちゃん、よろしくね〜!」

「アストラの紹介なら安心だ! 歓迎するぜ!」

「かわいい〜! ヒーラーさんありがたい!」

(緊張したけど、思ったより優しそうな人ばかりで良かった……)


 それからというもの、そらぽんとアストラはペアで冒険することが多くなった。

森のダンジョン、古代遺跡、湖畔のフィールドボス──二人で駆け抜けた場所は数え切れない。

アストラの軽快な剣技と、そらぽんの的確なヒール。コンビネーションは日に日に磨かれていった。

そして、冒険の合間に──二人はよく、他愛のない話をした。


 ある日、湖のほとりで休憩していた時のこと。

「アストラって、リアルではどんなことしてるの?」

何気なく尋ねると、アストラは少し考えてから答えた。

「俺? えーっと、高校生だよ。最近はギターばっかり弾いてるかな」

「ギター! かっこいいね」

「兄貴が就職して家出る時に置いてったんだよね。最初は暇つぶしだったんだけど、弾いてるうちにハマっちゃってさ」

「ギターってさ、弦を抑えるから左手の指先が固くなるんだよ」

ギターをやったことのない空にはよくわからないけど、空手家の拳も突きの練習で固くなると聞く。

(そんな感じなのかな?)と納得する。


「中学の時はサッカー部だったんだけどね」

アストラの声──プリセットボイスの、明るい少年の声──が、どこか懐かしそうに響く。

「ギターにサッカー! 陽の者だ……」

「まあ、辞めちゃったんだけど」

 アストラの声が、少しトーンを落とした。

「背が伸びなくてさ。男子ってどんどん大きくなるじゃん? 俺、中学の途中で止まっちゃって」

「フィジカルで勝てなくなって……ああ、これが限界かなって」


 そらぽんは、何も言えなかった。

(背が伸びなかった……)

それは、空自身が抱えていたコンプレックスと重なる悩みだった。

小柄で華奢な自分。「男らしくない」と言われ続けた自分。


「でもさ、ギターは楽しいよ! 背の高さとか関係ないし、自分のペースで上達できるし」

アストラの声が、また明るさを取り戻した。

「そらぽんは? 趣味とかある?」

「わ、私は……その、読書とか……」

「へえ! どんな本読むの?」

「ファンタジーとか、SFとか……」

「いいね! 俺もたまに読むよ。今度おすすめ教えてよ」


 何気ない会話。でも、空にとっては──久しぶりの友との語らいが、嬉しかった。


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