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ネカマバレしたくない俺、相棒にベタ惚れされて女装で会いに行ったら美少女でした【大幅改稿版】  作者: 谷三
エピキュクルス・オンライン:リターンズ ~伝説の女帝はアイドルに、ネカマな俺は彼氏になりました~
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ずっと、ふたりで

 

 大騒ぎのネットとは対照的に、

 その日の街は、やけに平和だった。


「……なんでこうなったんだっけ」

 空――いや、そらぽんは、ショーウィンドウに映る自分を見て、真顔で呟いた。


 長めのウィッグ。

 ナチュラルメイク。

 柔らかな色合いのワンピース。


 どう見ても、可愛い女の子だった。


「やっぱり美人。すっごく似合ってるよ」

 隣で、美月が心から楽しそうに笑う。ぎゅっと空の手を握り、腕はしっかりと絡めている。


「ありがとう……いや、そうじゃなくて!」

「配信大成功のお祝いデート、でしょ?」

「それはそうだけど……」


 そらぽんは、少しだけ視線を逸らした。

「見た目女同士で、こんなにくっついてるの、ちょっと恥ずかしいなぁ……」


 美月は一瞬だけ瞬きをして、それから指を一本立てる。


「だってね」

「今の私は、表向き“彼氏いません”のアイドルだから」

「うん」

「でも、そらぽんは“彼女”だから」

「論理がおかしい!」


 くすくすと笑いながら、美月はそらぽんの腕に絡んだ。

「久しぶりだね。こうやって二人で出かけるの」

「俺は美月の……彼女。……彼女かぁ……」


 通りすがりの人たちが、二人を見て微笑む。

 仲の良い女の子同士──。いや、仲が良すぎるように見えるかも知れない。そんな距離感。


「ねえ、空くん」

「今はそらぽん!」

「じゃあ、そらぽん」


 美月は少しだけ声を落とした。


「ちゃんと、言ってほしいな」

 今までとは打って変わって、真面目な顔で、足を止める。


 真剣な空気。

 それを察し、空は深呼吸して、そらぽんの姿のまま、まっすぐ美月を見た。


「美月」

「うん」


「俺と……正式に、恋人として付き合ってください」


 大きな瞳をちょっと瞬いたあと、美月は、迷いのない笑顔で言った。


「喜んで」

「即答!?」

「だって、断る理由ある?」

「……いえ、嬉しいです」


 二人で、思わず笑ってしまう。


 少し歩いてから、空が気まずそうに切り出した。

「でもさ……アイドルって、彼氏厳禁なんだろ?」

「うん」

「嘘つかせることになるよな……ごめん」


 美月は首をかしげ、少し考えてから、にやっと笑った。

「空くん」

「なに」

「“彼氏いますか?”って聞かれたらね」

「うん……?」


 胸を張って、堂々と。

「ゲーム内で結婚した、大好きな彼女がいます! そう宣言するから」


「それ、嘘じゃないけど誤解を生む!」


「でしょ?」


 二人で声を出して笑う。

 ひとしきり笑ったあと、空はぽつりと、こぼした。

「……俺、こうやって一生そらぽんやってるのかなぁ……」


 美月は立ち止まり、そらぽんを見上げる。


「ねえ、そらぽん」

「……なに?」

「それって、一生、私と付き合ってくれるってこと?」


 一瞬、思考が止まる。


 顔が熱くなるのが、自分でも分かった。


「……そ、それは……」


 美月は、当たり前みたいな口調で言った。


「大丈夫だよ」

「アイドルは、いつか卒業するから」


 少しだけ距離を詰めて、柔らかく笑う。


「アイドル辞めても――一生、付き合ってね!」

「……ずるいだろ、それ」

「えへへ」


 そらぽんは小さく息を吐いて、笑った。

「……じゃあ、よろしくお願いします。一生分」


 夕暮れの街。


 女装した彼氏と、アイドルの彼女。

 人には言えないことだらけだけど、

 気持ちだけは、最初から最後まで本物だ。


「ねえ、そらぽん」

「なに?」

「次はどこ行く?」

「……普通のデートコースでお願いします」

「じゃあ、春物のスカート見にいこ! 双子コーデで」

「女子か!」


 笑い声が、街に溶けていく。


 こうして――

 伝説のギルドマスター改め現在美少女アイドルの少女と、

 美女だけど陰キャ男子な二人の恋は、


 少し変だけど、幸せなかたちで、

 これからも、続いていくのだった。

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