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ネカマバレしたくない俺、相棒にベタ惚れされて女装で会いに行ったら美少女でした【大幅改稿版】  作者: 谷三
エピキュクルス・オンライン ~伝説の女帝とネカマな俺~
15/30

サーバー負荷上昇──壊れはじめた日常


 いまや三人の憩いの場となったエピキュクルスの世界。

しかし──サーバーの異変は、確実に進行していた。


 ある日の冒険の前。そらぽん、アストラ、ヒゲモジャールは、ダンジョン攻略の前に「パン屋」に寄った。


 エピキュクルス・オンラインでは、食べ物によって色々なステータス強化などの効果がある。

スキルを取れば自分たちでも作れるが、あいにく三人は料理スキルを取っていないので、

食べ物はもっぱらプレイヤーから仕入れるか、確実に売っているこういったNPCのショップを利用している。


「サンドイッチ、一人10個くらいあれば足りるかな?」

「うん、足りると思う」

そらぽんは、プレイヤーからも可愛いと密かに人気のパン屋の看板娘のNPC、「アンナ」に話しかけた。

「サンドイッチ、10個くださ──」


 話しかけた声が、途中で止まる。


「アンナ」は、虚空を見つめたまま、意味のない言葉をずっと呟いていた。


「縺?i縺」縺励c縺?∪縺……縺?i縺」縺励c縺?∪縺……」


 愛らしくリアルなキャラクターであるからこそ、

虚ろな目でわけのわからないことを呟き続けるその姿は、異様だった。


「えっ、なにこれ……」

「……バグってるってやつ?」


 アストラが、呟く。

「最近、ちょっとゲームの挙動変だよね」

「うん……」


 そらぽん──空にとっては、ここは第二の現実だった。

だからこそ、この世界も、キャラクターたちも、所詮作り物であると見せつけられるのは、思いのほかショックが強かった。


 *****


 そして──三人でいつものように遊んでいる時、それは予兆もなく起こった。


「──[サーバー負荷上昇]――」


 その無機質なシステムメッセージは、まるで不吉な予言のようにゲーム内を流れ続けていた。


「え、なにこれ?サーバーが重いってこと?」


 ドワーフのヒゲモジャールこと蓮は、初めてのことに戸惑いを隠せない様子だ。


「うーん、最近ずっとこんなメッセージが出てるんだ。ちょっと前まではすぐ消えてたんだけど……」


 空がそう答える一方で、美月はどこか不安げな表情を浮かべていた。


 その不安は、すぐに現実のものとなる。

三人が初心者向けのダンジョンを抜け、次のエリアへと足を踏み入れた瞬間、異変は起きた。


 本来は一定時間で消滅するはずのモンスターの残骸が、フィールドに積み上がっている。

それらは光の粒子となって消えることもなく、禍々しいオーラを放ち続けていた。


「な、なんだこれ……!?」


 空は思わず声を上げた。そして、次の瞬間、その残骸からおぞましい唸り声とともに、

アリ型のモンスターが次々と起き上がってきたのだ。


「まさか、モンスターがリスポーンし続けてるの!?」美月が叫ぶ。


「しかも、普段ならこのエリアには絶対に出てこないレベルのやつだよ!」


 空の体力ゲージがみるみるうちに赤く染まっていく。

慌てて蓮が空を庇い、美月がそれを援護する。

ゲーム経験はほとんどないらしいが、蓮はゲームの勘どころを掴むのが非常に上手い。

三人は必死に応戦し、どうにかその場を切り抜けた。


「早く脱出しよう!」

美月がそう叫ぶ。


 事態は深刻だった。

ギルドチャットも、騒然としている。


「ギルドのみんなは大丈夫だった!?」


「初心者のギルメンは、今初心者エリアに近寄らないほうがいいよ!」

ギルメンが注意喚起をする。


「初心者エリアの隣に、『アントクイーン』っていうエリアボスがいるじゃん! あいつが、なぜかいつまで経っても消滅しないんだよ!」

「本当なら時間経過で消えるのに……。そのせいで、アントクイーンが下級アリ系雑魚を生み続けてるんだ!」


「モンスターだらけなのも、そのせい?」

「うん。 モンスターが消えないからサーバーの負荷もめちゃくちゃだよ」


「さっきまで私たちがいた初心者エリアにまで、いるはずのない高レベルモンスターがいたのも、そのせい?」

「うん……! アントクイーンが生み続けるモンスターが行き場をなくして、隣の初心者エリアになだれ込んでるんだよ!」


 *****


 SNSでは、初心者プレイヤーたちの悲鳴のような声が拡散されていた。


「こんなの、まともに遊べないよ!」

「怖すぎてログアウトしたわ……」


 本来、新規プレイヤーが安全にゲームを始められるはずのエリアが、今や強力なモンスターの巣窟と化してしまったのだ。


「これじゃ、新しいプレイヤーがこのゲームを始める手段を完全に失っちゃうじゃないか!」


 空の表情が曇る。

ゲームは新規参入があってこそ活性化する。

その道が閉ざされたということは、ゲームの衰退が不可避であることを意味していた。


「ねぇ、運営は何か対策してるの?」美月が訊ねる。


「公式サイトを見てみようか」

空が答える。


 しかし、日本の運営の答えは絶望的なものだった。


『エピキュクルス・オンライン』の開発は海外で行われており、

日本サーバーの運営にはゲームの根幹プログラムを直接操作し、このバグを修正する能力がないのだという。


「つまり、サーバーエラーを直すことは、今の日本の運営にはできないってことか……」

蓮の声に、苛立ちが滲んでいた。


 その頃。モンスターの氾濫は、ついに中級者エリアにまで及び始めていた。


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