なんで、俺が花嫁に!?
──どうして、こんなことになったんだろう。
「それでは、アストラさん、そらぽんさん、永遠の愛を誓いますか?」
青空を映す大聖堂のステンドグラスが、虹色の光を二人の上に注いでいる。
NPC司祭の声が荘厳に響き渡り、ギルドメンバーたちが通路の両脇にずらりと並んで、期待に満ちた表情でこちらを見つめていた。
「誓います!」
金髪エルフの少年剣士──アストラが、迷いなく即答した。
エメラルドグリーンの瞳が輝いて、純白のタキシード姿がよく似合っている。
その隣で、純白のウェディングドレスに身を包んだ、栗色の髪の女性ヒーラー、そらぽんは──。
「あ、その……。ち、誓い、ます……」
か細い声で、なんとか返事を絞り出した。
「おめでとう!!」
「アストラ〜そらぽん〜!!」
「もう付き合ってるも同然だったもんな」
「うぅ……。そらぽんを、嫁に出す気分だ……」
「あんたお父さんでもなんでもないでしょ!」
「いやー、めでたいめでたい!」
「末永く爆発しろ!」
チャットログが祝福のメッセージで埋め尽くされる。
ギルド「今夜も寝落ち団」の面々が一斉に拍手エモートを発動し、キラキラと輝くエフェクトが聖堂内を舞った。
「そらぽん、大好き!」
アストラが無邪気に喜んで、そらぽんの手を取った。
その笑顔があまりにも純粋で、眩しくて──空は、現実世界で小さく息を吐いた。
(ごめん……、アストラ……)
アストラは知らない。この「そらぽん」というキャラクターの中身が、女性ではなく男であることを。
プリセットボイスで女性声優の声に変換しているだけで、本当の声は覇気のない、か細い男の声だということを。
──俺は、ネカマなんだ。
結婚式のシステムメッセージが表示され、二人のステータスに「配偶者」の項目が追加される。
「二次会やるぞー!」
「ギルドホールに集合な!」
「そらぽん、幸せにしてやれよアストラ!」
「任せろって!」
賑やかな声に押されるように、二人はギルドホールへと転送された。
用意された料理やドリンクのアイテムが並ぶテーブル、天井から吊るされた祝福の装飾。
みんなが心から祝ってくれている。
そのなかでも一際目立つのは、弾けるようなアストラの笑顔。
(アストラの「幸せ」は、俺の嘘の上に成り立っている……。この秘密は、絶対に守らなきゃ……)
「そらぽん」こと朝野空は、固くそう誓った。
この物語はすでに最後まで書き終わっており完結済みです。毎日更新で最後までお届けしますので、ご安心ください。




