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動物と話せる少女は竜王に見初められる  作者: 早乙女姫織


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2/16

動物と話す少女

少女の名はリリア。


彼女は村の外れ、小さな森の入口にある古びた家で暮らしていた。


背丈は同年代の子供よりもずっと小さく、腕も細く、風が吹けば倒れてしまいそうなほどか弱い。


村人たちは彼女を「小さなリリア」と呼び、時に憐れみ、時に距離を置いた。


だがリリアには、誰にも真似できない不思議な力があった。


それは「どんな生き物とも心を通わせる力」。


彼女が森に入れば、鳥は肩に舞い降り、兎は足元に寄り添い、鹿は警戒心を解いて彼女の手から草を食む。


虫ですら彼女を避けず、花の蜜を吸う蜂は彼女の髪に止まっても刺すことはない。


まるで森そのものが彼女を受け入れているようだった。


幼い頃、リリアはその力を無意識に使っていた。


泣いていると、子犬が駆け寄り、頬を舐めて慰めてくれた。


病に伏せると、鳥が窓辺で歌い、彼女を励ました。


村人たちは最初こそ「奇跡だ」と驚いたが、次第にその力を恐れるようになった。


人間が持つべきでない力だと考えたのだ。


「リリアは森の魔女だ」


そんな噂が広がり、彼女は村の中心から遠ざけられた。


だがリリア自身は悲しんではいなかった。


彼女にとって森は友であり、動物たちは家族だった。


人間に拒まれても、彼女は孤独ではなかった。


リリアは毎朝、森に入り、動物たちに挨拶をする。


鳥たちが歌い、兎が跳ね、鹿が静かに見守る。


彼女は彼らに話しかける。


昨日の夢のこと、村で見た出来事、心の中の小さな悩み。


動物たちは言葉を持たないが、瞳と仕草で応える。


リリアはそれを理解できた。


「あなたたちは、私を恐れないのね」


リリアは微笑む。


彼女の笑顔は小さく、儚げだが、森を照らす光のように温かかった。


村人たちは彼女を避けるが、時折、困ったときには頼ってきた。


畑を荒らす獣を追い払ってほしい、病気の家畜を癒してほしい。


リリアは断らなかった。


彼女は優しく獣に語りかけ、病んだ家畜の傍に寄り添った。


すると不思議なことに、獣は荒れ狂うことなく去り、家畜は次第に元気を取り戻す。


それでも村人たちは感謝よりも恐れを抱いた。


「やはり魔女だ」


「人間ではない」


そんな言葉が彼女の背に突き刺さる。


だがリリアは泣かなかった。


彼女は知っていた。


人間は恐れるものを遠ざける。


けれど動物たちは違う。


彼らは恐れず、ただ心を寄せる。


リリアの力は、彼女の優しさそのものだった。


彼女は決して命を傷つけない。


小さな虫であっても、踏みつけることはしない。


彼女にとって命はすべて平等であり、尊いものだった。


リリアの力は、村の外にまで広がっていた。


ある日、森の奥で罠にかかった狐を見つけた。


鋭い牙を剥き、必死に逃れようとする狐に近づけば、普通なら噛まれてしまうだろう。


だがリリアは静かに膝をつき、囁いた。


「大丈夫。怖くないわ。助けてあげる」


狐は彼女の瞳を見つめ、次第に力を抜いた。


リリアは罠を外し、傷を布で包んだ。


狐はしばらく彼女の傍に留まり、やがて森へと走り去った。


その背中を見送りながら、リリアは胸に温かさを覚えた。


彼女は人間から拒まれても、動物たちからは愛されていた。


だがその愛は、彼女にとって救いであると同時に、孤独の証でもあった。


人間と心を通わせることはできないのか――そんな疑問が、夜ごと彼女の胸を締め付けた。


リリアは星を見上げる。


星は遠く、手が届かない。


だが彼女は願う。


「いつか、私を恐れない人に出会えますように」


その願いは、竜王の願いと同じだった。


互いに知らぬまま、二人は同じ孤独を抱えていた。


村では、彼女を恐れる声が強まっていた。


ある者は「生贄に差し出せば村が救われる」と囁き、ある者は「彼女を追い出せ」と叫んだ。


リリアは耳にしていたが、怒りは覚えなかった。


人間は自分と違う者を排除する。


それは自然なことだと理解していた。


だが心の奥では、やはり寂しさが募った。


そんな彼女を慰めるのは、森の仲間たちだった。


夜、窓辺に鳥が集まり、歌を奏でる。


兎が家の前に座り、眠るまで見守る。


鹿が森の影から静かに見つめる。


彼らは言葉を持たないが、確かな絆を示していた。


リリアはその絆を大切にした。


だが同時に、人間としての絆を求めていた。


彼女は人間であり、村の一員でありたいと願っていた。


だがその願いは叶わず、彼女は孤独の中で微笑みを保ち続けた。


「私は弱い。でも、弱いからこそ、誰かを傷つけたくない」


リリアはそう心に誓った。


彼女の力は優しさから生まれ、優しさによって育まれていた。


夜の森に、風が流れる。


リリアはその風に髪を揺らし、静かに目を閉じた。


彼女の願いは星に届き、やがて竜王の心に響く。

⭐️、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
 不可思議な力の持ち主の一部分だけを見て恐れ、遠ざけはするが、困った時やら都合のいい時だけ弱者を装い助けを求め、感謝をせず内面も見ない。人間臭いですし、頻繁に暴力暴言をぶつけないだけ温情ともとれますが…
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