帰る場所
ミミが自害し、一週間が経とうとしている。世間は、恐ろしいほどの平和になった。魔物の依頼の電話はなくなった。
(やはり、ミミが死んだから魔物も消滅したのか?このまま平和だと、解散も考えなければならない。いや、解散する必要はないか。行き場のないやつもいる)
レイナは椅子から立ち上がる。
二階の書庫に行くと、そこには魔歴書を読んでいるタクとアヤがいた。
レイナは笑顔を作り、二人に向かう。
「あ、レイナさん」
「二人とも。しばらくは平和だろうから、ネペロ地方に行けばどうだ?」
「え、どういう」
「神父様に顔を見せに来いってことだよ」
そう言ってレイナは、奥へと消えていく。
「どういう風の吹き回しだろう」
アヤが怪しむ。
「まぁ、平和だろうから行ってみようよ」
*
アヤが魔法団に入ってから半年。その期間中で、色々あったらしい。ネペロ地方行きの汽車は本数を増やし、魔法大戦争前からの活気が戻りつつある。
そして、二人が汽車を降りると北国特有の寒さが襲いかかってきた。
「さむ……」
二人してつぶやく。
「あれ、アヤってあんな薄いの着てたのに寒いとかあるの?」
「いつの話?」
「初めて会った時」
「知らないよ」
瓦礫街だった街は、魔法団の瓦礫整理により、復興はかなり進んでいた。とこどころ、家が立っていて人が戻っているのを感じさせる。
すると、アヤは小走りになる。
「……ん?」
教会を素通りする。
「え、アヤ?」
タクも向かう。
すると、アヤはある家のところで立ち止まった。
「アヤ、ここは?」
「わたしの、家があった場所」
そこには、新しい家が建っていた。立て札には、「空き家」と書いてあった。
*
二人は、教会に入る。
「おや……アヤと……タクさん」
礼拝堂には、神父がいた。
「今、お祈りが終わったところです」
三人は、礼拝堂の隅にあるドアを開ける。
「アヤ。手紙の一枚くらいはくださいよ」
神父は、温かいココアを出す。
「神父様。大丈夫でしたか?アヤがいなくなってから……」
タクが言うと、神父はキョトンとした。
「大丈夫でしたよ。病気はしませんでしたし」
「いや、そっちじゃなくて」
タクは、ミミの被害について心配したが、その話を連想しないと言うことは、ネペロ地方は平和ということだ。
「でも、最近は腰をやってしまいましてね。書庫を整理しようとしたら、グキッと」
「タク、一緒に手伝おうよ」
アヤがそう言って立ち上がる。
「いえいえ。アヤ、悪いですよ。せっかく来てもらったのに」
「いいから。私は恩返しがしたいの」
そう言ってアヤは、出て行った。
「僕は恩返しするところないよねー?」
タクはアヤを追うように部屋を出た。
*
二人は書庫に入る。
「よし、タクは右側。私は左側」
「はいはい」
タクは片付けそっちのけで、積まれていた本の魔歴書を広げる。
「…………ん?」
それには、こう書いてあった。
『研究者・ムーズ』
アヤが本を片付けていると、バシンと音がした。
「どうしたの?タク」
アヤが首を覗かせると、タクは閉じた魔歴書を持っていた。
「……それって」
アヤが聞くと、タクはうなずく。
「うん。ムーズだった」
「ムーズ……」
「これは、人間じゃないと思う」
「……そうだよ。ムーズは歴史上類を見ないほどの研究者だよ。でも、彼がいなければ魔法はなかった」
「…………」
アヤは手を叩く。
「さ、忘れて整理するよ」




