影の雫
治安維持局が集まり、トヌーの遺体がシートに包まれて運ばれる。
「魔法ですね」
現場に来た局長、ホームズが言う。
「また魔法団か。まぁ、この騒動だから我々が出動するのも時間の問題だったとはいえ、魔警官の最高責任者は誰になるんだか」
ホームズはため息をつく。
「さて、魔創家に報告をしなければ」
ホームズは城に続く一本道を歩く。
「……ん」
ふと目を向けたカフェに、シルレがいた。
「探す手間が省けた」
ホームズはカフェに入ってシルレに近づく。
「失礼……」
ホームズはすぐに姿勢を正す。
「あ、ホームズ……」
そこには、パンケーキを食べるルナがいた。ホームズはピンとしてお辞儀をする。
「お疲れ様です。局長」
「いいよ。そういうの」
ルナは顔をしかめて言う。
「私はもう局長じゃないし、その肩書きを使うわけでもない。ただの一般人として扱って」
「…………はい」
「で、用があってきたんでしょ?」
ルナは自分の隣を軽く叩く。
「失礼します」
「いいって。そういうの」
ホームズはルナの隣に座る。
「……大変申し上げにくいのですが」
「…………」
場の空気が静まる。
「トヌーさんが、亡くなりました…………」
その言葉に、ルナとシルレは目を見開く。
「それって……」
ルナが小さく言う。
「断定はできませんが、オドラル地方での突然の魔物の出現。そして、花火が終わった後でのことでした。そして、魔物と聞けば」
「ミミ……!」
「そうなります」
シルレは手で顔を覆う。
「なので、お父様にもそうお伝えください。失礼します」
ホームズは立ち上がる。
「…………トヌーさんは」
シルレがつぶやき、ホームズは立ち止まって振り向く。
「ちゃんと、お仕事はしたのでしょうか」
「……魔法団の人たちがおっしゃってました。魔物を倒せたのは、彼のおかげだと」
ホームズはそう言うと、カフェを出ていった。
*
レイナはトヌーの死が書かれている新聞を破る。
「レイナ…………?」
カノンが言う。
「新聞にはこう書いてあった。『市民やホームズたちには、受け止めきれない現実』だと」
「……まぁ、そうだよね」
「俺もだよ。カノン」
「…………」
「今度こそだ。ミミを、地獄に落としてやる」
*
ミミは椅子をクルクルと回す。
「えー、魔物や鎖が消え去り平和が戻った世の中。でも、影を落としたのは誰であろう。このわたしです」
「一人で何言ってんの。ミミ」
ミミは椅子を回すのを見る。
「お、リボン。よ!」
「うっさい」
「ごめんなさーい。まぁ、これからこれから。わたし達はこれからでしょ?ね、リボン」
ミミは歯を見せて笑う。
「あ、ねぇ、ミント呼んできてよリボン」
「は?」
「女子会しようよ」
「あんたの言う女子会は、作戦会議なんだから」
「そうでした。じゃ、アサギ」
「はいはい」
リボンは部屋を出る。




