終わり
「アヤ」
アヤも空を見る。
「そうだね。もう、夜が明ける」
空の色は段々と変わっていく。そして、太陽が登って嬉しく残酷に朝を告げる。
「トヌーさんが……」
アヤが言う。
「そうだね。報告しないと」
二人は来た道を引き返す。
「あ、そうだ。アヤ」
「……ん?どうしたの?」
「……お祭り、どうだった?」
アヤはしばらく黙り込む。
「色々あったけどね、楽しかったよ。美味しいものいっぱい食べれて」
「うーん。食べ物なのか」
しばらく行くと、トヌーが横たわっているのに気づく。
「あ、トヌーさん……!」
タクは手でアヤの目を隠す。
「アヤ、後ろを向いて」
「なんで……」
「言うよ。トヌーさん、死んでる」
「…………え」
トヌーの遺体は、特に大きな損傷はなかった。頭をのぞいて。
「アヤは、治安維持局を呼んで」
「……分かった」
アヤは、何も見ずに後ろを向いて走っていく。
*
ルナとシルレは、朝日を見る。
「トヌーさん。まだ戻ってきませんね」
「後始末で忙しいんですよ」
ルナが純粋に言う。
「そうですね。あの人は忙しいですよね」
シルレは寂しそうに言う。
「どうかなさいました?」
「いや、確かにあの人は忙しないです。深夜に帰ってきたこともあります。それでも、疲れを見せずに私の相手をしたり」
「そうですか。たくさん聞きますよ。トヌーが戻るまで」
*
「暇だよー」
プリンは病院のベッドに寝転んでいる。
「ねぇ、なんか持ってきてよカノンちゃん」
そばに座っているカノンに言う。
「それほど元気なら、手当てをする必要はなかったのかもしれませんね。骨折り損ですよ」
すると、プリンの病室を誰かが開ける。
「お前ら元気だな」
松葉杖を持ったレイナだった。虹色の髪の副作用で、歩行が難しいのだ。
「レイナ。大丈夫なの?怪我」
「頭蓋骨にヒビが入ったんだってよ。強い力で殴ってきやがった。おかげでよく寝れたけどな。あと、虹色の髪の状態の運動量が多過ぎて、九秒目くらいの状態だ」
レイナはプリンのベッドに座る。
「ま、カノンが無傷で良かったな。屋敷の留守がいなくなるからな」
「問題は」
「王都だね」
カノンが言ったことに、プリンが割り込む。
「アヤちゃん達が言ったのは王都でしょ?だから、なにかあったんじゃないの?まぁ、ここみたいなもんだけどね」
「…………」
レイナは病室にあるラジオを付ける。
『不思議なことが起きています。オドラル地方では魔物が。王都では、魔物ではなく、鎖が出現しました』
すぐにラジオを切る。
「なるほど。魔物の発生源は、おそらく花火か。花火に当たった空気中のチリを魔物にしたのか。そして、王都では誰かが花火を止めたと言うことか」
*
ミミは地下に降りる。
「まぁ、失敗とはいえこんなにも人が集まるとは」
そこには、狭い牢屋に五十人が閉じ込められていた。
「さぁ、みなさん。楽しいお時間ですよ」
パンパンと、手を叩くミミ。
「ふざけんな!」
「家に帰せ!」
そんな声が聞こえる。
「んー。うるさいねぇ。まぁ、それがいいか。『学習するもの』は、人間の悪知恵とかの悪の心を凝縮した魔物なんだから」
ミミは咳払いをする。
「さぁ、カモーン‼︎」
すると、紫色のスライムのようなものが動き、波のように牢屋を飲み込む。叫び声が聞こえ、牢屋が飲み込まれると同時に、その声は消えた。
「さぁ、これで『学習するもの』はだいぶ成長したはず」
ミミは、「学習するもの」に手を当てる。
「魔生成・陽」
その瞬間、白い光と共に風が起きてミミの髪が揺れる。
「うん、いい調子かな。ククク」




