光を消す
レイナとルシファーは激しい鍔迫り合いを繰り広げる。鋭い金属音が響く中、カノンはプリンを手当する。
「プリンさん。大丈夫ですか」
「大丈夫大丈夫。散々食べてお腹が膨らんでるから」
「……こんな時に、冗談言わないでください」
「嘘です。すんごい痛いです。泣きそうです」
「治療が終わったら、私もレイナの戦いに参加しますけど。いいですか?」
「あぁ、いいよ。終わったら病院にでもいくよ」
「そうしてください……」
*
ルシファーとの鍔迫り合いが続く。
(ダメだ。もう限界かもしれない)
横目でカノンを見る。
(いや、加勢するように急いでいるはずだ。五秒だ)
レイナはスキをみて、髪を虹色に変化させる。
ルシファーは一瞬止まる。
(これが、噂に聞く虹色の髪か)
レイナの攻撃が激しくなる。
そして、浅いが腹部や肩に切り傷がつく。だが、彼の脅威的な再生能力ですぐさま再生される。
――二秒――
続け様に右胸を刺そうとするが、それはルシファーの剣により阻止される。
(そりゃ、弱点は守るよな)
ルシファーは飛び上がり、光弾を放つ。
レイナは剣に魔力を込めて弾こうとするが……
光弾に当たった瞬間――
静かな音を立てて、剣が折れてしまった。
「…………!」
すぐさま、剣を捨てて魔法で、レイピアのように長くて細い剣を取り出すと、その刀身は青色になる。
――四秒――
(もう三秒延長だ)
ルシファーはレイナの剣を見る。
(あれが、三大武。蒼炎の剣)
蒼炎の剣――レイナの家系に伝わる伝説の剣で、魔歴上伝説の英雄「キー」が所持していた剣。一見、普通の剣だが、適合者が触れることで刀身は美しい水色になり、本来の力を発揮する。
レイナは瞬間移動して、飛び上がったルシファーの目の前に現れる。
ルシファーは冷静で、剣を向けるが、蒼炎の剣により、自身が持っている剣を折られる。
(折り返しか)
そして、レイナの猛攻は先ほどより速く、虹色の髪の効果により一瞬で生成して魔弾・超で吹き飛ばして、ルシファーを地面に叩きつけるが、ルシファーは起き上がる。
「その程度で、私を倒せるか」
ルシファーは、光と闇の光弾をレイナに向けて放つ。
(闇も使えるのか)
レイナは避けるが、それは追尾型だった。
そうこうしていると、とうとう七秒が過ぎてしまった。
レイナは反射的に、虹色の髪を解除してしまう。
「しまった……」
時すでに遅し。二つの光弾がレイナに命中して、爆発した。
「………………レイナ?」
カノンは上空を見る。
煙が晴れると、レイナは意識があった。
(魔力を使い果たすが……)
「魔弾融合」
ルシファーを倒した時に使った技だ。
だが、すぐさまルシファーが現れる。
「はや……」
ルシファーは魔力で生成した棒で、レイナの頭を殴りつける。
「…………つ」
レイナの視界がふらつき、真っ暗になって墜落する。
「キャッチ!」
カノンは手を広げて、レイナを引き寄せる。
「レイナ……!レイナ!」
だが、レイナは起き上がらない。
「カノンちゃん……」
プリンが言う。
「大丈夫だよ。コイツは生きてる。魔法大戦争の時も……」
「プリンさん!黙っててください‼︎」
珍しく、カノンが声を荒げる。プリンは驚いたような顔をする。
(こんなに取り乱すなんて……)
「騒がしいぞ」
カノンは後ろを振り返る。
背後にはルシファーがいた。
「どうせ死んでる。ありったけで殴った」
「…………は?」
ルシファーの告白に、カノンは固まるしかない。
だが、カノンの瞳は、赤に変わるが、すぐに紫色に変わる。
「…………ん?」
ルシファーはカノンの瞳を見る。
(なんだこれは。おそらく、無意識。一体、なにを)
そして、瞳の色が真っ黒になる。全てを覆い尽くすような。
ルシファーは後ずさるが、すぐにカノンが襲いかかる。
(バリアを……!)
ルシファーがバリアを張った瞬間、そのバリアは破られる。
「……なぜ」
(私のバリアは破られないはずだ。どうして)
カノンの剣が一瞬のうちに、ルシファーの両腕を切断し、腹部を四度も切り刻む。
アイカラーチェンジ闇を覆う暗闇――瞳の色が紫の時のみ発言する瞳の色。完全に我を忘れた状態で、対象を殺し尽くすまで続く。その際、攻撃力は通常時の数倍。
(どうなっている)
ルシファーは後退するが、カノンが距離を詰める。
(速い。攻撃する隙さえない)
ルシファーは再度、腕を再生して武器を作ろうとするが、すぐにカノンは剣を降り、彼の腕が吹き飛ばされる。
(どう足掻いてもできない……)
そして、カノンの剣がルシファーの首に届く。
ルシファーはすぐに察知して、瞬間移動をする。
見回すと、カノンはいない。
「助かった……」
だが、ルシファーは実感することになる。
すぐにルシファーは膝をつく。
「……?」
下を見ると、剣が自分の右胸を貫いていた。つまり、「魔王の駒」においての、一番の弱点。これさえ突けば即死の心臓だった。
すると、前にカノンが現れる。
「………貴様」
カノンは魔法で取り出したブロンズの剣で、ルシファーの全身を切り刻む。
*
カノンの目の色は、青色に戻っていた。
「……あれ」
気づくと、自分の剣と、レイナのもらったブロンズの剣を握っていた。
(まさか……黒色を発動させた……プリンさん。大丈夫かな。あの瞳は、他の人にも危害が……)
向こうを見ると、プリンは無傷だった。安堵するが、そうはいかない。
「…………レイナ」
(病院に連れて行かないと)




