目指す世界
カノンは勢いよく吹き飛ばされると、飛行魔法で姿勢を直して着地する。
(ソニックウェーブか……)
今度はレイナがルシファーに向かう。レイナの剣と、ルシファーの剣となった腕で鍔迫り合いを行う。
プリンは魔法で大剣を取り出し、ルシファーに飛ばす。
ルシファーはレイナに夢中で、落ちてくるように急降下する大剣で、背中を切られる。
(……そうか)
レイナは勘付く。
ルシファーは瞬間移動でレイナから離れる。
「やはり、これじゃダメか」
「……?」
カノンは剣を握りなおして身構える。
すると、ルシファーを白い光が包む。
その頃、オドラル地方では――
「みなさーん。こちらに避難してくださーい」
ミミが、避難する人たちを誘導していた。
(今は魔法団がルシファーに夢中。すなわち、今が人間の乱獲時)
そして、避難する人たちを一点に集める。
「みなさん。これから避難場所へ瞬間移動するので、手を繋ぐかしてください」
全員、手を握るか肩を掴むかしている。
「それじゃ、行きまーす」
ミミは避難者全員と瞬間移動した。だが、幸いなのか、ミミが来るのが遅かった影響からか、ほとんどの人たちは自宅に帰っていたため、人数は比較的少なかった。
*
ルシファーは白い光を纏ったまま、動かない。
それに好機を感じたレイナは魔弾を溜める。
「魔弾・蒼」
手に青い魔弾を保持する。
(いつでも出てこい)
そして、白い光からヒビが入る。
(卵みてーだな)
そして、ひな鳥が生まれるようにルシファーの翼が見えるが……
「…………」
その色は、シルクのように真っ白だった。
「なんだあれ。天使かよ」
そして、光が段々と消えていく。
(ここか!)
レイナは魔弾・蒼を投げるように放つ。
だが、次の瞬間。
魔弾・蒼はルシファーの手によって吸収された。
「…………は?」
レイナ、カノン、プリンは、そのルシファーの姿を見る。プリンは「キレイ」とまでつぶやいている。
その姿は真っ白な肌に、金色の髪の毛。隻眼だった目は宝石のような水色の光を纏っている。
「これが、私の本気だ」
ルシファーはポキポキと首を鳴らす。
「それがお前の正体か」
レイナは剣を向ける。
「さぁ、リベンジだな」
すると、ルシファーの背後から大剣が飛んでくる。彼は顔を向けて目から、水色の光のビームを出し、大剣をチリにする。
「…………⁉︎」
プリンは呆気に取られる。
すぐさまルシファーは瞬間移動をして、プリンに襲いかかる。
プリンは一歩後退する。だが、それよりルシファーは速い。
六枚の翼を針のように変化させ、プリンの腹を貫く。
「……っ」
「カノン!」
レイナが名前を呼ぶと、カノンはスカートのベルトに着いているポシェットから、包帯を取り出す。
だが、処置に向かうカノンにもルシファーは襲い掛かろうとするが、レイナが瞬間移動して、腹を蹴ってルシファーを吹き飛ばす。
「させるかよ!ルシファー!」
ルシファーは魔法で真っ白な剣を作り出す。
「私も、させるものか。ミミ様の目指す世界を」
「……は?ミミが目指す世界?なんだそれ」
カノンも、プリンを手当てしながら話を聞く。
「魔法使いだけが生きていける世界だ」
「は?」
レイナは呆気に取られる。
「お前、バランスって知ってるか?」
「…………」
「なにもかも、バランスが大事なんだよ。人間の食物連鎖を狂わせるんだぞ。決めた。そんなのはごめんだ。俺はそれを止めるためにミミを倒す」
「私を倒してから言え。ミミ様を止める邪魔者が」
「そっちこそだ。俺を止める邪魔者が」
*
王都の鎖も消え、ルナとシルレは安堵する。
「よかったですね。これで、安心ですね」
ルナがシルレに言う。
「えぇ。ですが、トヌーさんが……まだ戻ってこないんです」
「……トヌーが?確かに、そうですね。でも、きっと戻ってきますよ」




